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労働実務事例

提供:労働新聞社

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団交と比較し熱心さ欠く、安衛運動を活性化したいが?

「労働新聞」「安全スタッフ」(2010年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 会社でも労働組合でも、賃上げや、人員整理になると夢中になりますが、命と健康という最も大事なものを守る安全衛生の運動になりますと、賃上げや労働条件闘争に関するほどには熱心になりません。特に労働組合がそうで、私のように組合で安全衛生を担当していると歯がゆく感ずることがあります。一体どのように考えたらよいでしょうか。

富山・L労組

[ お答え ]

 どうも気勢が上がらないのは、安全衛生運動だけに限らないようです。労働組合の運動は全般的に弱くなり、おかげで組織率も下がる一方で、一時は半分をはるかに超えていたのに、いまでは20%にも達しないようです。それも労働者数で数えた比率で、組織労働者は大企業に多いですから、最も労働条件の低い中小企業も含めて考えると、労働組合のない企業の比率は非常に高いようです。
 一昔前だったのか二昔前だったか記憶していませんが、「万国の労働者よ団結せよ」というスローガンがよく叫ばれたものです。しかし、今ではそんな勇ましいことばは聞くことはなくなりました。それはなぜでしょうか。それは利害を同じくした労働者「階級」はもういなくなったからでしょう。利害を等しくしない以上団結のしようなどはありません。同じ企業で働いていながら、正規労働者と非正規労働者の利害の相反していることはどうでしょうか。
 正規労働者の高い賃金やボーナスは、いや安定したその身分さえも、非正規労働者の犠牲のうえに成り立っていることが多いのではないでしょうか。そのような状況があれば、労働者が利害を一緒にした同志として団結することは難しくなることが当然です。
 では、労働者は、それぞれの会社の内部における身分により利害が一緒にならないどころか、かえって相反する場合が多いので、絶対に統一した行動はとり得ないというべきでしょうか。実は、私はそのように固くは考えてはいないのです。というのは、労働者にとっては大事な労働条件には、雇用や、月給や、ボーナスのようなものもありますが、それ以外にも労働時間や休日や、職場の働く環境というものもあります。そのような労働条件の全体を見渡した場合には、その全部について正規労働者と非正規労働者とは利害が相反しているでしょうか。もし、点検してみて、相反していない部分があったら、そこから問題を掘り起こしていって、利害が一致する環境をつくるように努力していったらどうでしょうか。正規労働者と非正規労働者の利害が一致しないことは、何も努力しなければ解消することはありません。利害を一致させない向きの力が働いている場合さえあるのですから。
 ある講習会で講師を務めたことがあります。それは、ある安全衛生団体が主催した安全衛生に関するものでした。そこにはお医者さんの受講者が1人みえましたが、よくある病院の長時間勤務で心身ともに疲れ果てたということでした。しかも、その勤務されている病院は、日本でも有数な進歩的団体の経営している病院で、それは全国各地にありました。しかし、そのような非常に進歩的な病院でも、そのような問題が起きるということは、これは基本的には日本の医療制度の根本に何か大きな問題があるのでしょう。
 その後しばらくして、今度は看護師の実態をみる機会があったのです。そして、そこにも労働時間等についての問題があるのではと感じることがありました。
 医師と看護師、この職種も賃金も違う人たちにとって、同じように労働時間等の問題があったのです。労働時間等については、休憩や休日、それに深夜業も含めて、大事な健康問題です。つまり、医師と看護師というように職務等に相違があっても、命と健康の問題については一致する部分があったのです。つまり、労働条件のうちで、命と健康を守る安全衛生については、身分は違っても利害は一致している部分があったのです。したがって、ここから考えていって医療問題まで視野に入れていけば、きっと利害は一致してくるのではないでしょうか。
 安全衛生の問題は地味ですが、こうして労使関係に利害一致の新しい面がみえてくるきっかけになるものではないかと、ひそかに期待している次第です。



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