労働実務事例
[ 質問 ]
当社は建設業を営んでいますが、「工作物の建設等の事業」には時間外限度基準の適用がないと理解しています。この場合も、時間外が月60時間を超えれば、割増賃金率5割の適用があるのでしょうか。限度基準の適用除外事業には、改正法が一部適用されないという話も耳にします。
【島根・U社】
[ お答え ]
改正後の割増賃金の規定(労基法第37条第1項)を分かりやすく書き変えると「第33条(災害時等の時間外)、第36条(協定による時間外)の規定により延長した労働時間が1カ月について60時間を超えた場合、5割以上の割増賃金を支払わなければならない」となります。
「時間外限度基準(平10・労働省告示第154号)」では、適用除外事業・業務として次の4種類を定めています(第5条)。
・工作物の建設等の事業
・自動車の運転の業務
・新技術、新商品等の研究開発
・厚生労働省労働基準局長が指定するもの
「適用除外」とは、1カ月45時間、年360時間等の限度時間数(時間外協定の上限)を適用しないという意味です。
「工作物の建設等の事業」の範囲については、「原則として法別表第1号第3号(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業)をいうが、建設業に属する本店、支店等であって同号に該当しないものも含む」(平11・1・29基発第45号)と解されています。
「事業」全体が対象となるので、「建設、改造、保存等の業務」に従事しない従業員にも限度基準は適用されません。
改正法では、特別条項付の時間外・休日労働(36)協定を結ぶ際には、割増率を2割5分以上とする努力義務を課しています。厚生労働省作成のQ&Aでは、「限度時間が適用されない事業・業務については、今回の(特別条項に関する)改正は適用されません」と解説しています。
しかし、適用除外事業・業務であっても、36協定を結んで初めて法定労働時間を超えて労働させることができる点は、一般の事業・業務と同じです。「第36条の規定に基づき延長させた時間が60時間を超えれば」、当然、割増賃金率5割の適用があります。
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