労働実務事例
[ 質問 ]
従業員から10日の年休申請がありましたが、所属部署が繁忙を極めていたので、一部時季を変更したい旨、伝えました。しかし、本人は「時効消滅するので、使い切りたい」と主張しています。
消滅時期が迫っている場合は、時季変更権を行使するのはムリなのでしょうか。
【青森・H社】
[ お答え ]
年次有給休暇は、「6カ月継続勤務した労働者に対して与え」られます(労基法第39条)。ただし、「斉一的取扱い」のため、前倒しで年休を付与することも認められています(平6・1・4基発第1号)。
年休に時効規定(労基法第115条)の適用があるか否か諸説がありますが、行政解釈は「2年の消滅時効が認められる」(昭22・12・15基発第501号)という立場を取っています。時効は「権利を行使できるときから進行する」ので、付与日から起算します。
つまり、年休の権利は翌年度に繰り越されますが、この場合、繰越し分と新規発生分のどちらを先に消化するかは当事者の合意によります(労基法コンメンタール)。合意のないときは、「繰越し分から充当されると推定すべき」とする説(菅野和夫「労働法」)が有力です。
付与日から2年が経過する都度、年休の権利は時効消滅していきます。
お尋ねにあるように、従業員が時効消滅ギリギリのタイミングで請求してきた場合、会社はどのように対応すべきでしょうか。
労働者の解雇時に関しては、「予定日を超えての時季変更は行えない」という解釈例規が存在します(昭49・1・11基収第5554号)。
しかし、在職者については「労働者の意に反する場合においても、また年度を超えて変更することもできる」(昭23・7・27基収第2622号)と解されています。
長期の連続休暇請求に際しては「他の労働者との調整等の必要性が生じるため、使用者にある程度裁量的判断の余地を認めざるを得ない」とした判例も存在します(時事通信社事件=最判平4・6・23)。時効回避のため、まとめて休暇申請があれば、その一部を時季変更する合理性はより高まります。
しかし、そうしたケースでも、一律時効消滅させるのではなく、年度をまたぐ使用も認める等の柔軟な対応がベターでしょう。
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