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労働実務事例

提供:労働新聞社

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休業日数のカウント方法は夜勤で負傷した場合、2日給付か

「労働新聞」「安全スタッフ」(2011年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 労災保険で休業補償給付という給付がありますが、その場合の休業というのはどのようなものをいうのでしょうか。休業には一部休業もあれば、丸1日の休業もあります。また、午前0時をまたいだ夜勤者の休業もありますが、その場合には暦日では2日になりますが、休業補償給付はまさか2日間の計算でもらえるのではないと思います。そこで休業について労災保険の扱いを説明してください。

【神奈川・U社】

[ お答え ]

 一部休業日
 休業というのは作業を休むことですから、労働時間の一部を休んでも、その休んだ時間は休業したということになります。厚生労働省の労働基準局長通達では「労働者が業務上の事由または通勤による負傷または疾病による療養のため1日のうち一部分について休業し、一部分について就労した日」(昭62・3・30発労徴第23号、基発第174号)を「一部休業日」と称しています。そして、この場合の休業補償給付は、通達によれば「労働災害により失われた労働者の稼得能力の補てんという労災保険制度の本来の趣旨に照らし給付内容の適正化を図るため、一部休業日についての休業補償給付または休業給付(筆者注:特別支給金支給規則第3条)の額を、給付基礎日額から実際に労働した部分についての賃金額を差し引いた額の100分の60」ということです。
 したがって、労災保険の扱いとしては、所定労働時間の一部であっても休業すれば休業補償給付の支給対象である休業として扱うということです。もっとも、休業最初の3日間については休業補償給付の支給対象とならないことは当然です(労災保険法第13条第1項)。
 ところで複雑な問題があります。残業(所定労働時間外の労働。所定労働時間のことであるから、労基法第32条の週40時間1日8時間以内の場合もあることに注意)中に業務上負傷等した場合にはどうなるかということです。というのは、「所定労働時間の一部休業のみ負傷当日を休業日数に算入するものである」(昭27・8・8基収第3208号)という通達があるからです。どうしてこのような通達が出されたかというと、「休業する日」について、厚生労働省は「業務上の負傷または疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日」(昭40・7・31基発第901号)と解釈しているからです。したがって、労災保険で休業する日というのは、単に作業を休むだけでなく賃金を支払わない日であることが必要なのです。だから休業した日を賃金支払いの有無に関係なく休業日とすると間違うことになります。
翌日に及ぶ休業
 次に午前0時をまたいで行う作業についての休業日数です。この場合についても労災保険法は何も規定していません。休業補償給付は2日分もらえるのでしょうか。23時から翌日の午前7時までを所定労働時間として作業する労働者について、その労働者が翌日の午前5時に負傷した場合に通達は翌日の災害であるとしました(昭27・8・8基収第3208号)。そうしますと、作業の開始されたのが前日の23時(午後11時)で、負傷が発生したのが翌日の午前5時とした場合は、労基法第77条第1項の規定により事業主が休業補償を行わなければならないのは、翌日から3日間ということになり、以後は労災保険から休業補償給付が支給されることになります。この扱いは休業日数を勤務開始した日と翌日の負傷した日の2日間を休業した日としたり、休業日数を前日1日だけにした場合と比較するとそれらより合理的な処理方法であるといえそうです。
 実は、「休業」は労災保険法だけでなく、労基法や安衛法等にも出てきます。しかし、それらの法律もそれについての定義は政令や省令にも規定しておらず、具体的問題が発生した場合に通達等により考え方が示される程度です。例えば、安衛則第97条に労働者死傷病報告についての規定がありますが、その1項によると、労働者が就業中に負傷等して休業したときは、遅滞なく労基署長に報告しなければなりません。しかし、休業の日数が4日に満たない場合には4半期ごとにまとめて報告すればよいとされています。では、その場合に休業日数はどのように計算したらよいのでしょうか。負傷が夜中をまたいだ勤務時間中に発生した場合の休業は、1勤務で1日とみるのか、夜中前に発生した場合には2日と評価するのか規則には規定されていません。問題はこの97条には50万円以下の罰金刑という罰則があることです。したがって、本来は省令でもあればよいのかもしれません。
 労災保険給付は事業主でなく労働者が支給を受けるものですが、こちらも何か省令でもあった方がよいのかもしれません。



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