労働実務事例
[ 質問 ]
1年単位変形労働時間制の期間途中で入社・退職した場合、割増賃金の清算が必要になります。結果的に、1年変形制採用のメリットはなく、退職予定が決まっている人の場合、最初から通常の労働時間制で働かせた方がいいのでしょうか。
東京・K社
[ お答え ]
変形労働時間制を採ると、変形期間内で労働日・時間を一定期間に集中させることができます。その間だけ働き変形制から離脱した人は、割増賃金の受取りで不利になります。
このため、1年変形制に限り、調整の仕組みが設けられています。「労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合、その超えた時間(既に割増賃金を支払った時間を除く)の労働については、労基法第37条の規定の例により割増賃金を支払う」義務があります(労基法第32条の4の2)。
週40時間を超えて働いた時間に、25%の割増賃金を払えばよいのか、それとも125%の賃金が必要なのかという問題があります。変形制によりある月の所定内労働時間を増やしても、基準内賃金を時間按分でアップさせる必要がないのは、他の月の所定内労働時間を減らすからです。所定時間内労働のみに着目すれば、変形期間全体をならせば損得は生じません。
しかし、変形制を途中離脱すれば、所定内労働時間が増えた分を他の月の労働時間減でカバーできません。つまり、100%の部分が失われたままになるので、割増賃金の清算のときは、125%の賃金を支払う必要があります。
それでは、「最初から、通常の労働時間制で働かせても同じ」になるのでしょうか。メリットがすべて失われるのではなく、「途中退職者・入社者は、あたかも、実際に労働した期間を単位とする変形労働時間制に服したかのようにして割増賃金が支払われる」(菅野和夫「労働法」)ことになります。
たとえば、7カ月で途中離脱した場合、7カ月の期間内で所定労働時間の多い月・少ない月の相殺効果が生じます。労基法第38条の4の2の清算を実施しても、1日8時間・週40時間を超えて働いた時間のすべてに割増賃金が支払われるわけではなく、7カ月という変形期間設定によるメリットを享受できます。
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