労働実務事例
[ 質問 ]
当社で、契約社員を期間満了により雇止めすることになりました。そのことを伝えると、「解雇だから解雇通知書がほしい」といわれました。契約期間の満了ですので、解雇とは違うと思うのですが、労基法に規定がある退職証明書を出せばよいのでしょうか。
福島・J社
[ お答え ]
退職証明について、「労働者が退職の事由(解雇の場合は、その理由)について証明書を請求した場合、遅滞なくこれを交付しなければならない」と規定されています(労基法第22条)。しかし、労働者が求めているのは労基法の退職証明書とは異なります。
使用者は、有期労働契約(有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている労働者に限る)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15厚労告第357号)。
使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。また、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。
例えば、「事業縮小のため」、「業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため」、「職務命令に対する違反行為を行ったこと等勤務不良のため」等が考えられます。
従業員の方が雇止理由書を請求してきたのは、「雇止めではなく、実質的には解雇だ」と主張するためと考えられます。実質解雇かどうか争う意味は、2種類あります。
第1は、雇用保険上の問題です。以前は、雇止めによる離職は解雇による離職(特定受給資格者)より、はるかに不利に扱われていました。しかし、現在では、契約期間が満了し、かつ、契約更新がないことにより離職した者は、「特定理由離職者」と扱われ、特定受給資格者同様に被保険者期間が6カ月以上あれば、基本手当を受給できます。離職の日が平成21年3月31日から平成29年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数は特定受給資格者と同様です。
雇止理由書を交付する際に、雇用保険上、不利益がない点も併せて説明してあげればよいでしょう。
第2は、雇止めの合法性をめぐる問題です。更新の態様から実質的に期間の定めのない契約と異ならない場合や契約更新についての労働者の期待が合理的なものであれば、「客観的で合理的な理由」が必要です。
従業員の方は個別紛争解決促進法に基づき、都道府県労働局長にあっせん等を委任することができます。その前準備として雇止理由書を請求するケースもあるので、ご本人とよく話し合ってみてはいかがでしょうか。
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