労働実務事例
[ 質問 ]
月の初めに、退職した社員がいます。給与明細をみて、「年金の保険料が全額天引きされているのはおかしい」といってきました。「退職日に関係なく一律徴収という決まりとなっているから、仕方がない」と説明しましたが、実は私も前から不合理に感じていました。どうしてこのような規定になっているのでしょうか。
神奈川・K社
[ お答え ]
厚生年金の資格喪失時期は、日単位で決まります。喪失日は次のとおりです(厚年法第14条)。
・死亡したとき(翌日)
・退職したとき(原則翌日、同じ日に次の厚生年金資格を取得したときはその日)
・任意適用事業から脱退認可が下りたとき等(翌日)
・適用除外に該当したとき(翌日)
・70歳に到達したとき(その日)
月の初めに(たとえば1日)に退職すれば、原則的には翌日(たとえば2日)に資格を喪失することになります。その月の加入期間が1日しかないのに、日割按分でなく全額の保険料を納めさせるのは従業員に酷なようにも感じます。
しかし、被保険者期間の計算は、月単位になっています。被保険者期間には、資格を取得した月から喪失月の前月(同月得喪の場合はその月)までを含めます(厚年法第19条)。
1日に退職して2日に資格を喪失した人も、29日に退職して30日に資格を喪失した人も、その月は被保険者期間にカウントしません。
それでは、なぜ保険料が差し引かれたかというと、給料から天引きするのは、原則として前月の保険料だからです(厚年法第84条)。
お尋ねの人は、月の初めに退職しても、前月は丸々1カ月、ずっと被保険者だったのですから、その分の保険料を全額支払うのは当然といえます。
しかし、資格を取得したばかりの人(同月に資格喪失した人を含みます)は、その月を被保険者期間1カ月と数えます。この場合、「被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、保険料を徴収する」と定めているので、全額の保険料を納める義務が生じます。
たとえば、月末の30日に資格取得したばかりの人でも、1カ月分の保険料を納めないといけません(同月に資格を喪失した人も同じ)。こちらの方が納得がいかないかもしれませんが、保険料を納めればその分の見返りがあります。将来の年金は、平均標準報酬額と被保険者期間を2大ファクターとして計算されます。加入期間が1日の月でも被保険者期間を1カ月と計算することで、加入日数の多い月と同様に年金額に100%反映されますから、損することはありません。
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