労働実務事例
[ 質問 ]
当社の役員が、まもなく65歳に達します。受けている報酬が高いので、年金の繰下げ受給をしたい意向です。年金の受給を繰り下げると、どの程度、メリットがあるのでしょうか。
高知・H社
[ お答え ]
65歳以上で働いている人には、「60歳代後半の在職老齢年金」の仕組みが適用されます。70歳に到達して、厚生年金の被保険者資格を喪失しても、被保険者同様の働き方をしている限りは、老齢厚生年金が減額調整されます。
在職老齢の計算式は、次のとおりです。
(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×0.5×12
総報酬月額相当額とは、各月の標準報酬月額(70歳以上の人は、それに相当する額)に、1年間の標準賞与額(それに相当する額)の12分の1を加えたものです。
減額の対象となるのは老齢厚生年金だけで、どんなに収入が多くても、老齢基礎年金は満額が支給されます。
報酬が高額で、在職老齢年金により老齢厚生年金の大部分が支給停止になる人は、繰下げ受給も検討に値します。
繰下げによる加算額は、次の計算式により算出します。
繰下げ加算額=(年金額×平均支給率+経過的加算額)×増減率
増減率は、繰り下げた月数(60カ月が限度)に0.7%を乗じて計算します。しかし、単純に1カ月あたり0.7%(年率8.4%)ずつ年金が増えるわけではありません。
前記計算式中に、「平均支給率」という項目があるのに注目してください。まず、「支給率」とは何かですが、次の計算式を用います。
支給率=1-在職老齢の仕組みにより支給停止される額÷報酬比例の年金額
つまり、年金の繰下げ請求をしなければ、どれだけの率で年金が支給されたか、それを示すのが「支給率」です。繰下げ期間を通して、月単位の支給率を平均したものが平均支給率になります。
平均支給率=繰下げ期間の支給率の合計÷繰下げ月数
ですから、年金を繰り下げた期間を通じて、高い報酬をもらっていれば、月々の支給率および平均支給率は小さくなります。
結果として、繰下げによる加算額も小さくなります。
一方、老齢基礎年金については、在職老齢年金による調整がないので、繰下げ請求すれば、月当たり0.7%ずつ年金額が増えます。
なお、支給繰下げの申し出は、老齢厚生年金単独で行うことも、老齢基礎年金の支給繰下げの申出と同時に行うことも可能です。
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