労働実務事例
[ 質問 ]
従業員から代替休暇取得の意向が示され、それに基づき月60時間を超える時間外労働に対しても、2割5分増しの割増率を適用して賃金計算を行ったとします。後から従業員が「やはり、代替休暇の取得は止めにしたい」と言い出した場合、清算に応じる義務があるのでしょうか。
【三重・T社】
[ お答え ]
時間外労働が月60時間を超えた場合、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければいけません(労基法第37条第1項ただし書)。しかし、有給の代替休暇(通常の労働時間の賃金が支払われる休暇)を与えれば、「ただし書の規定による割増賃金の支払いを要しない」と規定されています(同条第2項)。
代替休暇を導入する場合、過半数労組(ないときは過半数代表者)と労使協定を結びます。協定事項の一つに代替休暇の取得時期がありますが、「60時間を超えた月の末日の翌日から2カ月以内」とする必要があります。
しかし、翌月以降に代替休暇を取得する場合、すでに月60時間を超えた分の割増賃金は支払済みとなっています。少なくとも当月賃金を計算する事務的な最終期限(賃金締切日から数日後)までに、5割増しか2割5分増しか、どちらの割増賃金率を適用するか決めなければいけません。
代替休暇取得の意向を確認すれば、休暇の取得前でも「60時間を超えた月の賃金支払い日に2割5分増しの割増賃金を支払」うことができます。
「割増賃金の一部を支払わないことは、法が予定する行為で、全額払いの原則に反しない」(厚生労働省のQ&A)と解されています。休暇取得の意向について厚生労働省のモデル協定では、「月の末日の翌日から5日以内に確認する」という例を示していますが、自社の賃金計算の所要期間を考慮して決めるべきでしょう。
本人が休暇を取るつもりでも、後から取得できないケースも想定されます。その際には、「取得されないことが確定した月の賃金支払い日に支払」えば足り、直ちに清算する必要はありません(平21・5・29基発第0529001号)。しかし、会社が取消しを拒否するのは、本人の意向に反して休暇取得を強制することになり、認められません。
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