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業務上疾病追加の影響は?保険給付を受けやすくなる!?

「労働新聞」「安全スタッフ」(2011年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 平成22年5月から労基則別表第1の2が改正されて、労災保険の給付対象となる疾病が増加しました。大体においては分かるのですが、実際にはどのような点が改善されることになるのでしょうか。何か業務上疾病について、保険給付を受けやすくなればよいのですが、具体的にはどのような点が違ってくるのか、ご説明をお願いいたします。

【青森・L社】

[ お答え ]

 業務上疾病の考え方
 業務に起因して発生した疾病については、業務上疾病として、労基法の第8章に規定されている労災補償が行われます。しかし、どのような疾病が業務上疾病に該当するかという定義は、労基法のどこにも書いてありません。労基則第85条に、法第75条第2項の規定による業務上の疾病は、別表第1の2に掲げる疾病とするとあるだけです。
 そこで別表第1の2をみますと、第1番目の「業務上の負傷に起因する疾病」以下の疾病が列挙されています。今回の改正では、この疾病が追加されることになりました。では、追加されることはどのような影響があるでしょうか。
 まず、業務上の疾病として、事業主から災害補償を受けたり、労災保険から保険給付を受けたりする場合に、最初に苦労することは何かといいますと、いろいろあるでしょうが、大きな心配の一つは、その業務上の疾病であることを主張しようとする疾病と、その人の就いている職業との間に相当因果関係のあることを証明することでしょう。
 その証明を軽減してもらえば、災害補償の請求をしようとする労働者や、労災保険の給付を請求しようとする人は非常に助かることになります。今回の改正で、別表第1の2に業務上疾病が追加されることは、以上のように業務上疾病の被害者側にとって、非常に救いとなります。
 たとえば、「長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)もしくは解離性大動脈瘤またはこれらの疾病に付随する疾病」を例にして、説明することにいたしましょう。これについては、従来は「脳血管疾患および虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準」という大部の厚生労働省労働基準局長より都道府県労働局長にあてた通達があって、それによって業務上疾病に該当するかどうかが決められていました。もちろん、別表第1の2に追加されても、業務上外についての考え方に変更はありませんが、請求する側も、認定する側も、その手数は相当簡略になり、その分、官民ともに利益をこうむるのではないでしょうか。
規則改正後の取扱い
 ある疾病を、業務上疾病に該当すると認めるためには、少なくとも次のことが必要となります。
① 業務と疾病との間に、相当因果関係が認められること
② 被災者の就業していた業務が、有害な業務であること
③ 被災者のかかっている疾病が、②の業務により生ずるもので、それに罹病していること
 以上で学問的に証明することが最も困難なのは、おそらく①でしょう。
 そこで、この証明を軽減するために、学問的に業務と疾病との間に相当因果関係が明らかなものは、別表第1の2に疾病名を掲げて、証明する必要をなくそうということです。このことについて、労働基準局長通達は、「以上のように、現在までに業務との因果関係の確立したものをできる限り定型化して、例示疾病として掲げているので、例示疾病(別表第8号により指定された疾病を含む)については、一般的に業務との因果関係が推定されるものである」(昭53・3・30基発第186号)と説明しています。
 したがって、災害補償を使用者から受ける場合でも、労災保険から業務上疾病として保険給付を受ける場合でも、前述した①については推定を受けられることになるため証明の必要がなく、その分について請求者側の証明責任が軽減されることになります。
 しかし、②や③については、やはり一定程度の証明が要求されるのではないでしょうか。たとえば、「長期間にわたる長時間の業務」による脳出血については、長期間にわたる長時間の業務に従事したことは、証明する必要があるのではないでしょうか。



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