
【企業の監督者】監査役の報酬と役割に関するお悩みまとめ
会社運営において、特殊な役割を持つ監査役。役員の一員でありながら、従業員とは異なる職務や責任が課されるため、報酬設定や職務範囲に悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、監査役に関するお悩みをピックアップ。役員としての立場と実際の業務のバランスをどのように取るべきかお悩みの経営者の皆様、ぜひご覧ください。
1. 監査役の給与設定はどうしたらいい?
質問日:2024年9月9日
◆1. 質問内容(全文)
法人の監査役です。
普通は役員報酬になると思うのですが、一般社員と同じ給与にしたいのです。
可能でしょうか?
現在、代表取締役である夫の扶養内とするために年収100万円以内でおさめています。(月額報酬83000円)
監査役となる前は一般従業員として同額給与で夫の扶養だったのですが、これまでの監査役が高齢で引退したため、代わりに監査役となりました。
特に業務の変更はなく、給与額もそのままだったんですが、役員報酬となると、社会保険料の扶養対象は外れるという事で困っています。
以前に取締役という肩書だけど、一般使用人としての業務をしているという事で、役員報酬ではなく給与で、他の社員と同じように残業手当も付き、雇用保険にも加入している社員がいました。(親族でしたが)
今回の監査役も同じような形態にしても大丈夫でしょうか?
監査役(役員)という形がどうしても社会保険上扶養の対象外になるようなら、監査役から外れる(監査役の廃止も検討)ことを考えようかと思っています。
教えてください。
◆1. 総務の森に寄せられた返信はこちら
●回答①
(前略)
法人の監査役であれば、社会保険の加入義務がある立場になるので、夫の健康保険の扶養にはいることはできないです。
その点は代表取締役はどのようにお考えなのでしょうか。
役員については過半数以上を身内で固めておきたいという考えもありませんか。税務において夫の配偶者控除の対象になるのであれば、役員であっても税扶養の対象にはなります。
●回答②
(前略)
監査役は、以下の職務を兼任することができません(会社法335条2項)。
× 会社の取締役、使用人
× 子会社の取締役、使用人、会計参与、執行役どのような業務をされているか分かりませんが
現在も業務内容が変わっていないとの事ですが違法になっていませんか(後略)
●回答②への返信
回答をありがとうございます。
正直、監査の兼務は自分でもおかしいような気がしていました。
小さい会社なので、経理も労務も含め一人でこなしておりますので、会計に携わる者が監査役なのはやはり違法ですか?
司法書士さんに相談して監査役に就任したのですが、今の業務状況を私が伝えきれていなかったのかもしれません。
違法状態で継続することはできないので、監査役の廃止も調べてみたいと思います。
いずれ取締役が規定人数確保できなくなるので、その時には取締役会も廃止する予定でした。
そうすれば、監査役も必要なくなりますよね?
●回答②からの返答
(前略)
同族株式会社でしょうか
株主総会は必要でしょうが取締役会迄必要でなければ廃止でもいいでしょう
先ずは登記されている監査役を外すよう司法書士とよく相談されてはどうでしょうか(後略)
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総務の森<相談の広場>『役員(監査役)だけど給与はありですか?』
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2. これって監査役の仕事?業務範囲はどこまで?
質問日:2024年8月27日
◆2. 質問内容(一部抜粋)
(前略)
表題の件、当社には常勤監査役が1名おりますが、当監査役は取締役会において決議事項に対して私見を述べることが非常に多く、決議を扇動していると捉えられる行動を取っています。
また、取締役への報告事項に対しても私見を述べ、こうした方が良いのではないか等の発言をしております。
他にも、一部従業員に対してヒアリングを行い、対象部門長へ業務の改善を提議していることもございます。当社には社内取締役3名・社外取締役3名おりますが、まるで決議を扇動している動きをしており、細かい業務に対しても私見を述べることが多く、業務が滞ることが発生しています。
本件につきまして、監査役の業務範囲や法的に問題・逸脱している点はありますでしょうか?
◆2. 総務の森に寄せられた返信はこちら
●回答①
監査役は上場会社の株主に代わって株主監査を代行する職務です。職務範囲は会計監査に限定されていません。株主総会において監査結果を報告している会社もあります。ただし総会報告は法律上の義務ではありません。
当該の監査役の振る舞いは大筋において違法性は低いと思います。特に
> 他にも、一部従業員に対してヒアリングを行い、対象部門長へ業務の改善を提議していることもございます。
は監査役の職務そのものの可能性があります。御社においては監査役の職務が取締役会の陪席職務だけになっていることが問題のように感じます。監査役の本来職務は監査ですから、会計監査含めて定期監査をしてもらい、その報告を取締役会にあげてもらって、監査役の職務を果たしてもらう「見せ場」を作ってあげることが必要かもしれません。また株主総会での報告も義務ではありませんが、株主への情報フィードバックとして検討の必要があると思います。
最後に御社に監査役設置義務があるかどうかをご確認ください。中小企業で非上場の場合は設置義務がないこともあります。
(後略)
●回答②
監査役の職務権限として法定されている(会381~)のは、
・取締役の職務執行の監査
・監査報告書の作成
・取締役…支配人その他の使用人に対して事業の報告要求
・会社の業務及び財産の状況の調査
・認知した不正行為不当事実の取締役会への報告(そのための役会招集請求)
・取締役会出席、意見陳述
・総会議案、提出書類調査
・取締役の違法行為差し止めと、多岐にわたっています。
> 取締役会において決議事項に対して私見を述べることが非常に多く、…
> 取締役への報告事項に対しても私見を述べ、こうした方が良いのではないか等の発言を…
扇動とは穏やかではありませんが、意見述べることは職務の一環でしょう。> 一部従業員に対してヒアリングを行い、対象部門長へ業務の改善を提議していることもございます。
前段は当然として、後段は越権でしょう。管掌取締役に対してもしくは取締役会にて行うべきでしょう。ここは監査役規定といったルール作りでしょうか。監査役は株主からの委任をうけて職務を執り行います。なんでしたら、非公開会社であれば、会計限定監査役(会389)と定款変更できますので、検討されては。
>相談元やほかの返信はこちら
総務の森<相談の広場>『監査役の業務範囲について』
【関連記事】株式会社設立時の役員構成はどうしたらいい?
株式会社は企業の意思決定を行い業務を行うため、取締役・取締役会・代表取締役などの役員構成を決めなければなりません。これは会社の実情に応じて適切なものにすることが重要です。
下記記事では、これから株式会社を設立しようと考えている方に向けて、比較的小規模な株式会社を念頭に、法律上可能な役員構成について説明します。その上で、実際に事業を行っていくにあたりどのような役員構成にすべきか、弁護士兼中小企業診断士の筆者が日頃接している小規模な会社なども参考に検討したいと思います。
>詳しくはこちら
経営ノウハウの泉『会社設立時の役員構成の決め方は?弁護士・中小企業診断士が解説【経営の基礎】』
最後に〜相談の広場ご紹介〜
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