登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 従業員の給与との違い・注意点は?役員報酬の決め方【経営の基礎知識をわかりやすく解説】
給与 役員報酬

従業員の給与との違い・注意点は?役員報酬の決め方【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

2022.07.01

会社の経営に深く関わる役員に対する報酬である“役員報酬”は、従業員へ支払う給与とは支払形態やルールが全く異なることをご存知でしょうか。ルールに沿って対応しなかった場合は、損金算入などの節税対策ができなくなる場合があります。今回は、起業などを検討しておりこれから役員報酬を決定していく場合に、どのような手順で役員報酬を決定し、支払っていくのかの手順を、節税の観点も含めて解説をしていきましょう。

記事の最後には、実際に役員報酬を支払う際の詳しい手順をまとめた実務チェックシートがあります。ぜひ参考にしてみてください。

役員報酬とは

役員報酬とは、その名の通り、会社の役員に対して支払われる報酬のことです。役員とは、会社の中でも中心的な立場として、組織内の業務における意思決定権や管理監督権を持つ者のことで、法律では“取締役”“会計参与”“監査役”が役員に該当するとされています。

取締役とは、業務を遂行するにあたって意思決定を行う役員のことを指します。なお、取締役会が設置されている会社の場合は、会社を代表する取締役である“代表取締役”が業務執行権を持ちます。代表取締役は、社長が兼任するケースも多くみられますが「代表取締役=社長」ではない点に注意する必要があります。

会計参与とは、前述の取締役とともに会計書類等を作成する役員のことで、各書類の作成に加え、保管や開示の職務も担っています。

監査役は、取締役の職務が適正に遂行されているかを監査する役員のことで、株主総会で選任されます。

なお、昨今は“執行役員”という名称もよく聞かれますが、これは取締役である役員に代わって会社の業務を行う役員のことです。“役員”という名称がついているものの、執行役員は法律上の役員ではないため、役員報酬は支払われません。代わりに、他の一般社員と同様に月々の給料などが支払われることになります。

【参考】「会社法」 / e-Gov法令検索

役員報酬と従業員の給与の違い

役員報酬が会社の役員に対して支払われる報酬であるのに対し、一般の従業員には、会社で働いた労働の対価として給与が支払われます。ですから、役員報酬は給与とは全く異なります。例えば、給与が働いた時間や内容に沿って支払う必要があるものに対し、役員報酬には支払要件が設けられていません。また、役員報酬は労働時間に比例するものではないため、残業代の適用や日割り計算を行うこともできません。都道府県ごとに設定されている最低賃金のルールの対象外となっている点にも特徴があります。

また、役員報酬と一般の従業員に支払われる給与は、税務上の扱いが異なります。従業員への給与は、原則として全額が損金算入(会計上は費用ではないものの、税務上は損金扱いとなること)できますが、役員報酬の場合は事情が異なり、損金算入を行うためには一定要件を満たす必要があります。この要件には“定期同額給与”“事前確定届出給与”“利益連動給与”の3種類がありますが、詳しい内容は後ほど見ていきましょう。

役員報酬を決める手順

ここからは、実際に役員報酬を決定するまでの流れを順に見ていきます。

STEP1:株主総会で報酬総額を決定

まず初めに、株主総会により役員報酬として捻出できる金額の総額を決定します。金額を決める際には、支払うことになる税金や保険料の金額も念頭に置いて決めていく必要があります。また、同業種の会社とのバランスも考え、乖離しすぎない額を定めることもポイントです。他社と比較して高すぎる金額の場合は、損金算入ができなくなる可能性があります。一方、低すぎる金額の場合は、役員の会社や仕事に対するモチベーションに悪影響を及ぼす危険性があります。同時に、一般社員の給与と比較し、社員から不平不満が出ないように設定することも心がけましょう。

STEP2:取締会で報酬内訳を決定

株主総会で役員報酬として算出する金額の総額を決定したところで、次は役員ごとに分配する金額を決定していきます。ここでは、損金算入を視野に入れて内訳の内容を議事録に記録しておきましょう。議事録は、後ほど行われる税務調査などで提示を求められる可能性もあります。なお、これから起業する予定で、損金算入を行う会社の場合は、役員報酬の金額は会社を設立した日から3ヶ月以内に決定しなければなりません。役員報酬額は原則として事業年度ごとに決定され、報酬額を変更する場合は、年度開始より3ヶ月が経つまでの期間中に行う必要があります。

【もっと詳しく】役員報酬は簡単に変えられないってホント?減額・増額時のルールと注意点

STEP3:役員報酬の支払

報酬額が決定したところで、実際に報酬の支払手続きの段階へと進みます。損金算入は、前述の通り“定期同額給与”“事前確定届出給与”“利益連動給与”のいずれかの要件を満たせば可能となります。

定期同額給与

“定期同額給与”とは、従業員の給与などと同様に、毎月同額を報酬として受け取るケースなどが該当します。損金算入は、課税対象の金額を減らし、納める法人税の額を削減する効果があります。節税のために売上利益に応じて役員報酬額を調整するなどの行為を防ぐため、このような要件が設けられています。

事前確定届出給与

“事前確定届出給与”とは、一般の従業員に対する賞与の扱いと同様に、報酬を支払う形式です。この場合は、あらかじめ支払時期と金額を税務署に対して申告しておくことで、後ほど損金算入が可能になる流れとなります。

利益連動給与(業績連動給与)

“利益連動給与(業績連動給与)”とは、同族会社ではない法人が、事業年度の利益をもとに支給する役員報酬です。有価証券報告書などに記載された利益に関する指標を基準に客観的な算定のもとで支払われていることや、利益確定後の1ヶ月以内に支払われる見込みがあることなどのルールを守って支払いを行う必要があります。

【参考】「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」/ 国税庁

【こちらの記事も】給与引き上げで節税効果を狙う?中小企業向け「賃上げ税制」の見直し【わかりやすく解説】

まとめ

役員報酬の決定から支払までの流れをご紹介しました。役員報酬には、節税のため損金算入ができるか否かがキーポイントです。ルールに沿って金額の決定や支払いを行うことで、節税対策にもつながります。金額の決定は慎重に、会社の状況も鑑みながら検討しましょう。

『経営ノウハウの泉』では、実際に役員報酬を支払う際の詳しい手順をまとめた実務チェックシートを無料でご提供しています。下記リンクよりダウンロードしてお役立てください。

>>>役員にはじめて役員報酬を支払う実務チェックシートを無料ダウンロード

【参考】『会社法』 / e-Gov法令検索
『No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)』/ 国税庁

*kikuo、Luce、takeuchi masato / PIXTA(ピクスタ)