登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 採用 > 人手不足解消や生産性向上に!外国人雇用の注意点【特定技能資格・採用手順を解説】
外国人の雇入れ

人手不足解消や生産性向上に!外国人雇用の注意点【特定技能資格・採用手順を解説】

2022.04.11

2021年10月末時点で日本の外国人労働者数は1,727,221人。年々増加傾向にあり、2020年10月末時点からは2,893人増加しています。

2019年4月1日から一定の産業分野の深刻な人手不足を解消するため、特定技能資格制度が施行され、今後さらに外国人労働者が増加することが予想されます。

また、人手不足解消だけでなく日本人にはない多様な価値観を活かすことでイノベーションを創出することも期待され、特定技能資格に限らず、外国人を雇用することは、今後多くの企業にとって重要性が増していくでしょう。

そこで、本稿では、外国人材を雇用するにあたっての注意点や労務管理上のポイントを説明します。

※最終更新:2022年4月

入管法の在留資格の制約

外国人の雇用にあたり、日本人の雇用と大きくことなるのは、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)の在留資格による一定の制約があることが挙げられます。

入管法では、外国人は原則として在留資格の範囲内でしか活動することができないとされています(入管法19条1項)。

在留資格は、現在29種類あり、大きく分けて、

①外国人が行う“活動”に着目した在留資格

②永住者や日本人の配偶者等の外国人の“身分”や“地位”に着目した在留資格

の2パターンがあります。

②については、活動内容に制限はないものの、①については、活動に制限があり、留学などそもそも就労ができない資格もあります。

また、それぞれの在留資格によって、在留期間も定められています。詳細は出入国在留管理庁のHPの『在留資格一覧表』で確認することができます。これらの活動範囲、在留期間を超えて就労させた場合には、雇用主に対しても不法就労助長罪として3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科される可能性があります(入管法73条の2)。

新たに創設された「特定技能」資格

冒頭で述べたとおり2019年4月1日から特定技能資格制度が施行されています。特定技能資格制度は人手不足が深刻である分野(現在は14産業分野)での人手不足解消の目的で導入されたものです。

当該分野に属する中小企業としては、この特定技能資格制度を活用して外国人を受け入れることが考えられます。

特定技能のポイントは以下のとおりです。

ポイント1:特定技能の内容

特定技能には、“相当程度の知識又は経験を必要とする技能”を要する「特定技能1号」と、“熟練した技能”を要する「特定技能2号」があります(なお、2021年12月末時点においては「特定技能2号」の外国人の在留はありません)。

特定技能1号の場合には、以下のような制約があります。

①在留期間:1年、6か月又は4か月ごとの更新、通算で上限5年まで

②資格取得要件:試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)

③日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認

④家族の帯同:基本的に認めない

ポイント2:特定技能雇用契約の締結

特定技能資格での受入れの場合、当該外国人と締結する雇用契約には、入管法上、①当該外国人が行う活動内容、報酬その他雇用関係に関する事項、②雇用契約の期間が満了した外国人の出向を確保するための措置その他当該外国人の適正な在留に資するために必要な事項について、法務省令で定める基準に適合するものが適切に定められている必要があります(特定技能雇用契約)。

ポイント3:各産業分野の運用方針、上乗せ基準告示に注意

特定技能資格については、各産業分野の所管省庁がそれぞれ「分野別運用方針」や特定の産業分野に特有の事情を考慮して個別に基準を定めています(「上乗せ基準告示」はこちらを参照ください)。そのため、特定技能資格で外国人を雇用する場合には、これらの運用方針、基準をチェックする必要があります。

外国人の採用の流れ

外国人の採用には、海外に住む外国人を採用し日本に入国させるパターンと、既に日本に住む外国人を採用するパターンの2パターンがあります。

パターン1:海外に住む外国人を採用し日本に入国させるパターン

まず、海外に住む外国人を採用するパターンのおおまかな流れは、次の通りです。

①必要な在留資格の取得の可能性を事前調査

②雇用契約の締結(特定技能の場合には、「特定技能雇用契約」による)

③当該外国人がビザ(査証)の交付申請・発給

④入国、就労開始

海外に住む外国人を採用する場合には、雇用契約を締結する前に、卒業証明書、成績証明書、履歴書、その他の職務に関する資格書類等を確認し、予定する就労が可能となる在留資格を取得できるかを調査しておきましょう(特定技能の場合には、該外国人は技能試験及び日本語試験への合格も必要)。

また、③のビザの発給にあたっては、受け入れ機関が国内で在留資格認定証明書を取得し、当該外国人に送付。当該外国人がそれを用いて査証の申請を行う方法がスムーズであり、この方法をとることが一般的です。

パターン2:日本に住む外国人を採用するパターン

既に日本に住んでいる外国人を採用する場合には、入国関係は問題になりませんが、既存の在留資格との関係が問題になります。

そのため、在留カード、パスポート、就労資格証明書、指定書(在留カードでは確認できない具体的な活動類型が書かれています)等を徴求し、在留資格、期間等を確認しましょう。

外国人雇用状況届出を忘れずに

いずれの場合であっても、外国人を雇用した場合には、原則として当該外国人の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、ハローワークへ届出が必要です。外国人が離職した場合も同様です。

これを怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となりますので、忘れないようにしましょう。

外国人の労務管理の注意点

注意点1:日本の労働関係法令・社会保険等の適用

外国人を雇用する場合であっても、労働基準法や労働安全衛生法、労働契約法等の日本の労働関係法令が適用されます。労働保険・社会保険についても原則として日本人と同様の適用です。

したがって、日本人を雇用する場合と同様に労務管理を適切に行いましょう。

注意点2:使用言語に配慮する

上記のとおり、外国人に対しても、日本人と同様に労働基準法が適用されますので、外国人を雇用した場合には、労働条件の明示が必要になります(労基法第15条)。

外国人の場合には、労働条件を正確に理解してもらうため、当該外国人が使用することができる言語で労働条件を明示するとトラブルを回避することができます。

厚生労働省のこちらのページでは、外国人労働者向けのモデル労働条件通知書や労働条件ハンドブックが掲載されていますので、これらを活用するとよいでしょう。

注意点3:外国人用就業規則で差別的な扱いは禁止

外国人従業員が一定数おり、個々の労働契約で労働条件を定めることが困難である場合には、日本人の従業員とは別の労働条件を定めた外国人従業員用の就業規則を作成することが考えられます。

ただし、その場合には、労働基準法上、国籍を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをすることは禁止されていることには注意しましょう(労基法第3条)。

例えば、日本人の従業員と同じ仕事、同じ働き方であるのに、賃金に差を設けるような場合には、国籍による差別的取扱いとされる可能性があります。

注意点4:日本特有の雇用慣行の説明

労働契約において、職務内容が特定されておらず広く配置転換されることや、賃金が仕事内容と紐づいていない職能給であること等は、日本に特有な雇用慣行であり世界的には例外です。

外国人雇用の場合には、配置転換の場合にも在留資格による制約があり得る他、当該外国人から「元々予定していた仕事と違う」ということでトラブルになる可能性があります。賃金や評価についても日本特有の定め方、考え方があるため、予め雇入れる外国人にも日本の雇用慣行について説明し、理解を得ておきましょう。

注意点5:働きすぎに注意

外国人労働者の中には、母国への送金のために長時間労働を厭わず勤勉に働く例が見られます。

しかし、上記のとおり、外国人であっても日本の労働関係法令は適用されるため、労働基準法、労働災害等の発生には十分注意する必要があります。特に外国人は、慣れない土地での仕事、生活をするだけでも肉体的・精神的に負荷がかかっていることに配慮しましょう。

外国人の雇入れの検討段階から専門家に相談しましょう

上記のとおり外国人を雇用する場合には、労働関係法令の適用はもちろん、入管法による制約があります。そのため、採用したにも関わらず在留資格が取得できないといったことになると、企業にとっても当該外国人雇用にとっても望ましい結果ではありません。

そのため、外国人を雇い入れることを検討している段階で、行政書士、社労士、弁護士等の専門家に相談しましょう。

*EKAKI、aijiro / PIXTA(ピクスタ)