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不祥事 リスク 記者会見

一歩間違えると致命的なリスクに!? 不祥事対応の失敗事例と対応策【弁護士が解説】

2022.08.04

このところニュースでもたびたび話題となるのが会社の不祥事です。経営者や経営陣の対応によっては、事業継続に大きな影響が及ぶ事態にもなりかねません。

そこで『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。牛島総合法律事務所パートナー弁護士・猿倉健司先生にご登壇いただき、実際に自社で不祥事が発覚した際の対応方法や、従業員の不祥事によって経営者が責任を問われる様々なケースなどについて解説しながら、皆様の悩みもその場で解決していきます。

ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本記事では第2回として「不祥事対応の失敗事例と対応策」について解説します。過去の事例から失敗しない対応を学びましょう。

第1回:不祥事の種類と会社の責任
第2回:不祥事対応の失敗事例と対応策
第3回:不祥事を防ぐための改正公益通報者保護法の留意点
第4回:Q&Aまとめ

【資料動画のダウンロードはこちらから】

【登壇者】

猿倉 健司(さるくら けんじ)
牛島総合法律事務所パートナー弁護士

国内外の企業間の紛争(訴訟等)のほか、役員等の不正・経営判断の失敗に関する不祥事・危機管理・訴訟対応等を中心に扱う。その他、企業買収・事業承継や、新規事業等の法的リスクの分析も数多く担当するなど、経営者に対する様々なアドバイスを行う。

契約条項や、不祥事・危機管理対応、役員責任、不動産・M&A取引、汚染廃棄物紛争等に関する記事を数多く執筆、講演も多数行う。近時の著書には、『不動産取引・M&Aをめぐる環境汚染・廃棄物リスクと法務』(清文社、2021年)などがある。

1)不正調査の失敗事例

不正発覚後には不正調査を行なう必要がありますが、調査の際に失敗してしまうことがあります。その失敗事例とリカバリーの手法について紹介します。

a:不正データが削除されてしまった事例

従業員が不正を行なっていた場合、発覚を防ぐ目的でその証拠となるデータを消去してしまうことがあります。この場合、消去された資料やデータを復元する“フォレンジック”という手法が考えられます。フォレンジックを手がける業者はいくつかあるので、参考にしてください。また、不祥事の通報者や関係者へのインタビューやヒアリングといった情報収集も欠かせません。

b:不正調査で内部通報者が特定されてしまった事例

内部通報者は絶対にバレないようにすべきです。善意で通報した内部通報者の身元が明らかになってしまうと、その企業内では未来永劫内部通報する人は出てこないと思っていいでしょう。2022年6月に施行された「改正公益通報者保護法」の規定では、企業の担当者が通報者の特定につながり得る情報を漏らしてしまった場合、刑事責任を問われる可能性があります。

不正調査を行う場合は、定期監査の体裁で行なう、対象部署以外についてもダミー調査を行なう、などの対策を講じ、いきなり不正の核心に近づかないなどの注意をしましょう。しかしどれほど頑張っても通報者が特定されることはあり得ます。そのため、通報者にその旨を確認して同意を取ったうえで調査を進める必要があるでしょう。

※2022年6月施行「改正公益通報者保護法」において、内部通報体制の整備義務は、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、努力義務とされています

c:調査内容が不十分と批判された事例

不正に関する事実関係のみを調査して満足してしまうと、調査内容が不十分であるとして批判されるケースがあります。事実関係の調査においては、時期的・組織的な広がり、上層部の関与についても十分調査する必要があります。また、不正の原因を探る場合でも、不正の動機や背景を調査するとともに、その不正がなぜ可能だったのか根本となる原因を探る必要があります。不正調査では“何が起こったか”を調査するだけではなく、二度と同じことが起こらないように、どう再発防止策を作るかということも含まれています。

この限りではありません。判明した事実関係により、誰が民事および刑事上の責任を負うべきか法的評価を行なう必要があります。そして調査した不正行為がどこまで広がっているのか、他にも同様の不正や被害がないのか、全件調査する必要も生じてきます。これらが揃った報告書でないと、批判される可能性が高いと思ってください。

2)被害者対応の失敗事例

a:対応が遅れて被害が拡大してしまった事例

不正を把握したら、被害が拡大することを防ぐための措置を講じることが重要です。例えば、安全性に問題のある製品を回収する場合や、物件の応急処置が必要な場合などが当てはまります。

トラブルに直面したとき、大事にならないよう上手く収めることを優先してしまい、対応が後手後手になるのはよくあることです。しかし放ってくと、刑事事件や民事事件責任のリスクがあることを覚えておきましょう。

b:被害者への補償が極めて多額に及んでしまった事例

取引先や居住者、周辺住民への補償が必要になることがあります。経済的な被害の回復費用にとどまらず、慰謝料や見舞金を支払うケースも多く、数百億円といった規模になることもあります。また、被害者から損害賠償請求などの訴訟提起が行なわれることも少なくなく、補償金が大きくなってしまうことは避けられないと考えておくべきでしょう。

3)行政・自治体対応の失敗事例

a:行政処分の具体的内容を把握していなかった事例

不祥事が起こった場合に、行政処分を全く把握していないままに不正調査を進めてしまうと、いきなり処分を受けて事業が立ち行かなくなるケースがあります。行政処分には、不正の内容についての報告命令や立入検査、指導、勧告などがあります。改善命令や措置命令を受けることもあり、最悪の場合、業務停止を命令されることもあります。ほかにも不祥事が欠格要件や処分要件となり、認可取り消しとなる可能性もあります。

b:監督官庁への報告が遅れ行政処分がなされた事例

被害者への対応が遅れたケースと同様の失敗ですが、何か不祥事が発覚したらすぐに対応すること、すぐに一報を入れることが重要なセオリーです。すべてを把握していなくても、現状把握している限りの情報を監督官庁へ一報しましょう。これはとにかく行政処分を避けるために重要なことです。もちろん被害の拡大を防ぐことも重要ですが、報告が遅れることで“不祥事の隠蔽”と認識され、関係が悪化する可能性があります。先回りして不祥事を報告し不信感を払拭する対応が、自浄効果を示すことにつながります。ただ、先回り対策についても逆に失敗例もあるので、うまく監督官庁と連携することが重要です。

4)広報対応の失敗事例

a:公表しない/遅れたことにより事態が悪化した事例

不祥事を開示したり公表したりすることは経営判断です。公表しないまま解決したい企業もあるかもしれませんが、その場合、隠蔽を疑われるリスクがあり、企業信用の低下につながりかねません。できる限り、公表して被害者に対応することが重要だと認識しておきましょう。特に、被害が拡大する恐れがある場合、第三者の生命・身体への影響が懸念される場合では公表すべきです。公表しなかったことによって、役員の損害賠償リスクや刑事責任リスクが増大することも覚えておいてください。

b:謝罪内容が批判された事例

不祥事について直ちに公表し謝罪をしたのに、その内容が批判されることもあります。速やかな開示や公表をした結果、後から異なる事実が出てくるというケースがあります。虚偽の説明をするつもりはなくても、場当たり的な説明や弁解によって説明内容が二転三転すると、ダメージがさらに拡大するリスクを考えておきましょう。

c:記者会見・住民説明会で失敗する事例

不祥事に伴う広報対応として、記者会見や住民説明会が求められるケースも出てきます。生命や身体の安全が懸念される場合や、話題性があって社会的影響が大きい場合は、大企業に限らず記者会見を行なうべきです。しかしながら、そういった場合以外に関しては、個人的には必ずしもマストではないと思います。企業を担当する弁護士の多くは記者会見をやりたがる傾向にありますが、記者会見をやることで上手く乗り切った経営者は多くないのです。会見のあら探しをされたり、問題発言の切り取りだけが報道されたりと、マイナスイメージとなることも少なくありません。記者会見よりは、プレスリリースなどの文書で説明したほうが、メリットが大きい場合もあると考えてください。

住民説明会では、弁護士を同席させることは避けたほうが賢明です。もちろん弁護士に関与してもらうのは当然ですが、説明会の席で弁護士が隣に座っていることで、住民に対して言い訳するのではないか、争ってくるのではないか、という印象を与える可能性があります。また、自治体の担当者に出席してもらう場合でも、同席してもらうことで不祥事を起こした自社に加担しているという印象を与えかねません。中立的な位置にオブザーバー的な立ち位置で出席してもらうのがいいでしょう。

ここまでの失敗事例を踏まえた対策例は以下のようになります。

不祥事への対応を誤ることで、企業に大きな損失を生むばかりでなく、経営者や役員が個人的に責任を負うことになります。過去の事例について学びつつ不祥事対応の正解に近づきたいものです。次回は、改正公益通報者保護法の留意点について解説します。

*Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

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