
不祥事とは?定義や種類から企業が取るべき対策まで解説
ニュースでもたびたび話題となる会社の不祥事。経営者や経営陣の対応によっては、事業継続に大きな影響が及ぶ事態にもなりかねません。
そこで『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。牛島総合法律事務所パートナー弁護士・猿倉健司先生にご登壇いただき、実際に自社で不祥事が発覚した際の対応方法や、従業員の不祥事によって経営者が責任を問われるさまざまなケースなどについて解説しながら、皆様の悩みもその場で解決していきます。
ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本記事では第1回として「不祥事の種類と会社の責任」について解説します。
第1回:不祥事の種類と会社の責任
第2回:不祥事対応の失敗事例と対応策
第3回:不祥事を防ぐための改正公益通報者保護法の留意点
第4回:Q&Aまとめ
【登壇者】
出典: 経営ノウハウの泉
猿倉 健司(さるくら けんじ)
牛島総合法律事務所パートナー弁護士国内外の企業間の紛争(訴訟等)のほか、役員等の不正・経営判断の失敗に関する不祥事・危機管理・訴訟対応等を中心に扱う。その他、企業買収・事業承継や、新規事業等の法的リスクの分析も数多く担当するなど、経営者に対する様々なアドバイスを行う。
契約条項や、不祥事・危機管理対応、役員責任、不動産・M&A取引、汚染廃棄物紛争等に関する記事を数多く執筆、講演も多数行う。近時の著書には、『不動産取引・M&Aをめぐる環境汚染・廃棄物リスクと法務』(清文社、2021年)などがある。
目次
そもそも不祥事の定義とは
不祥事とは、企業や組織に属する人物、またはその組織自体が、社会的信頼を著しく損なう行為を行った際に使われる言葉です。語源的には「めでたい兆し(祥)を打ち消す(不)」という意味を持ち、社会的に歓迎されない望ましくないできごと全般を指します。
企業不祥事においては、法令違反や規程違反、社会規範に反する行為だけでなく、過失や怠慢によって重大なトラブルや損害が発生するケースも含まれます。つまり、不祥事とは意図的な犯罪行為だけでなく、管理不足や教育不備によって引き起こされた事故や問題も対象となる点が重要です。
不祥事の種類

出典: 経営ノウハウの泉
社内の不祥事の類型は以下のように7つに分類できます。ここでは、特に近時多くなっている類型を挙げています。
1:環境汚染・廃棄物の不適切処理
メーカーが所有する工場などで製品をつくる過程において発生する副産物・不要物を、廃棄物処理法に従って適正に処理しない(リサイクルなど)ことで行政から指摘を受けるということがよくあります。
産廃業者へ処理を委託したとしても、委託先が不法投棄などを行えば排出事業者責任に問われる点には注意が必要です。
2:データ偽装
建築資材の基礎データの偽装、食品の成分や産地、消費期限の偽装などがよく見られる古典的な問題です。1と2の不祥事は、被害者の生命や健康への影響が及ぶことがあり、不祥事の類型としては非常に責任が重いものです。
3:横領・会計不正
よく見られる不正ですが、長年にわたる横領は大きな損害につながることもあります。本社から離れたグループ企業や海外子会社の不正については特に注意が必要です。
4:業法違反
ビジネスを開始するにあたって事前に必要な登録・許可等のライセンスを取得しなかったり、必要なプロセスを経ないままに進めてしまう類型です。例えば、建設業法上の必要なライセンスを取得しないで業務を行なったり、金融商品取引法上の登録をせずにファンドを募集してしまったりといったことが挙げられます。
5:建物の設計・施工不良
設計・施工不良は、その建物に住む人の生命や身体に大きく影響するものなので、注意が必要です。建設業以外の業種から見ると関係ないように思われますが、有名な大手企業でもかなりの頻度で起こっている類型でもあるので、あえて挙げています。
6:SNSへの不適切な投稿
会社として運用しているSNSで不適切な投稿が行なわれることがあります。それに加えて注意しなければならないのが、企業活動とは関係なく従業員が勝手に企業情報をSNSにアップしてしまうようなことです。例えば、飲食系サービス業において有名人が店舗に来店したことを個人アカウントで投稿した従業員が炎上することが多くあります。
7:パワーハラスメント
いかなる理由においてもパワーハラスメントは致命的な不祥事になります。頻度が高い不祥事の代表格です。パワハラについては以前のウェビナーでも解説していますので参照してください。
業種によっては、ここで挙げた不祥事の類型に当てはまらないこともあるかもしれませんが、発生する原因は業種に関わらず同じであると言えるでしょう。ぜひ自分事として考えてください。
不祥事による会社への悪影響
不祥事が発覚すると、最悪の場合企業の存続に関わります。ここからは、不祥事が引き起こす具体的な悪影響について見ていきましょう。
- 信用・ブランド毀損
- 組織風土の悪化
- 刑事責任を問われる
信用・ブランド毀損
不祥事が発生すると、企業の信頼性や社会的評価が大きく毀損されます。たとえば、SNS上での批判やメディア報道により、企業ブランドに対する印象が大きく低下します。この結果、消費者や取引先の離反が起こり、売上や株価の下落、最悪の場合は市場撤退や倒産につながることもあるでしょう。
また、損害賠償請求などの経済的リスクも伴います。
組織風土の悪化
不祥事が社内で発生すると、従業員のモチベーションは大きく低下します。自社への誇りを失い、職場環境に不信感を抱くことで離職が増えるケースも少なくありません。
また、内部通報制度や管理体制への信頼も失われ、風通しの悪い組織風土がさらに悪化するという悪循環を招きます。
社会・法的責任と説明責任
不祥事に対しては、行政による業務停止命令や課徴金などの制裁が科される可能性も否定できません。さらに、代表者や責任者が刑事責任を問われる場合もあります(業務上過失致死、個人情報漏えいなど)。
また、メディアや株主、顧客に対して誠実な説明責任を果たさなければ、企業の存続も危ぶまれてしまうでしょう。
不祥事の原因と背景
不祥事が起こってしまう原因はさまざまです。ここでは、不祥事が起こり得る原因と背景について解説します。
- 組織的要因
- 人的・文化的要因
- 外部環境要因
組織的要因
企業不祥事の多くは、組織のガバナンス体制の脆弱性に起因しています。たとえば、経営陣の監督不在、内部統制の機能不全、役職者による報告軽視などは典型的な要因です。内部監査が機能していない、または通報制度が形骸化している場合、初期の兆候を見逃し、大規模な問題へと発展するリスクが高まります。
人的・文化的要因
従業員一人ひとりの倫理意識やリスク感度も不祥事の発生に大きく関与します。「バレなければよい」「言わないほうが得」といった風潮が蔓延する企業文化は不祥事の温床です。
また、教育研修が不十分であったり、過剰な業績プレッシャーがかかったりすると、意図せずルール逸脱が起きる可能性も高まります。
外部環境要因
現代の企業は、法制度の変化、社会的責任の高まり、グローバル化といった複雑な外部環境にさらされています。
たとえば、個人情報保護法の改正、取引先のサプライチェーンリスク、海外子会社での不正などに対応が遅れた場合、不祥事として発覚することがあります。つまり、企業を取り巻く環境変化に敏感であることが求められるでしょう。
不祥事が起きた場合の対応
意図していなかったとしても不祥事を起こす可能性はゼロではありません。ここでは、もし不祥事を起こした場合の対応について、3つのフェーズで解説します。
- 初動対応と広報戦略
- 再発防止と体制強化
- ステークホルダーの信頼回復
初動対応と広報戦略
不祥事発生時の初動対応は、数時間〜数日のうちに企業の命運を左右する重要な局面です。まずは事実関係を正確かつ迅速に把握し、誠実な姿勢で社内外に説明する場を設けましょう。
メディア対応では情報発信のタイミング・言葉選びを誤らず、事実の透明性を確保した上で謝罪と再発防止策を明示することが信頼回復へとつながります。
再発防止と体制強化
不祥事を単なる「対応」で終わらせず、組織変革の契機と捉える姿勢が問われます。
第三者委員会の設置や専門家による再発防止策の策定、ルールの明確化や新しい仕組みの導入などにより、再発防止を確かなものにします。
ステークホルダーとの信頼回復
被害を受けた顧客や取引先、株主、そして社員に対する説明と対話の場を持ち、誠意をもって対応することが重要です。
企業の再建には、法的・制度的な処置だけでなく、失った信頼を一つずつ回復するための継続的なコミュニケーションが欠かせません。コツコツと積み上げた信用も、崩れるときは一瞬です。
不祥事を起こさないための対策
万が一にも不祥事を起こさないためには日頃からの対策が重要です。ここでは、企業が取るべき不祥事対策について解説します。
- コンプライアンス強化
- リスクマネジメント
- 教育・企業文化改革
コンプライアンス強化
コンプライアンス経営とは、法令だけでなく社会規範や企業倫理を順守する姿勢を企業活動の中核に据えることです。そのためには、明文化されたコンプライアンス方針を掲げ、役職員全体に浸透させることが不可欠です。
ただ浸透させるだけではなく、組織や時代の変化に合わせて定期的な見直しを行う体制が望まれます。
リスクマネジメント
リスクアセスメントの導入により、組織が直面しうる危機を予測・分類・優先順位付けすることが重要です。
さらに、監査役や社外取締役といった独立性を持つ監督機能を充実させ、内部通報制度(ホットライン)を整備することで、問題の早期発見と予防が可能になります。
教育・企業文化改革
不祥事を防ぐ最も根本的な対策は、「人」と「文化」の改善です。年次研修やeラーニング、ケーススタディによる実践的な教育を通じて、ルールの背景と目的を理解させることが重要です。
また、失敗や問題を共有し合える企業文化の醸成こそが、長期的な遵法風土の土台となります。
不祥事を起こさない企業づくりと適切な対応を大切にしよう
一口に不祥事と言ってもその類型は多岐にわたります。また、不祥事によって経営者や役員が個人的に民事責任、刑事責任を負うことも少なくありません。それを回避するためにも、不祥事には適切に対応する必要があるでしょう。次回は、不祥事対応の失敗事例を解説します。
*kai / PIXTA(ピクスタ)
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