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接待

優秀な社員も知らないかも?経営者が内部統制するべき接待ルール

2023.10.10

公務員に賄賂(わいろ)を渡したら、刑法の贈賄罪に該当し、処罰の対象となることは、ほとんどのビジネスパーソンが知っています。しかし、公務員への接待も原則禁止であることは、知らない人が多いようです。

少し前にも、企業が総務省の役人に対して高額接待をしていたことが、大きな問題になりました。こうなってくると「公務員と一緒に会食するだけでも許されないのか?」と、許される行為と許されない行為の境目もよく分からなくなります。

企業のコンプライアンスが厳しく要求されているなか、接待についての社内ルールを策定することが望まれています。今回は、弁護士である筆者が接待ルールについて解説いたします。

接待などを禁止する法律とは

公務員への接待は、「国家公務員倫理法」という法律と、それを受けて細かい内容を規定した、「国家公務員倫理規定」という政令によって規制されています。

この規制は、あくまでも“公務員”に対しての規制です。従って、接待をする方の企業が、これによって直接規制されることはありません。しかし、この規定に反した行為をした企業は、国との取引を禁止されたり、マスコミで取り上げられたりして大きなダメージを受けることになります。その意味で、企業としてもこの規定を守らざるを得ないのです。

なお、この規則は「国家公務員」を対象としていますが、「地方公務員」や「みなし公務員(※)」についても、事実上同じ規制が適用されるので、注意が必要です。

それでは、具体的にどのような行為が禁止されているのでしょうか。

(※)公共・公益性の高い職業に携わる民間企業の職員のこと。郵便局の職員や、公共インフラの職員などが該当する。

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他社から見て、不正を疑われる行為の禁止とは

「国家公務員倫理法」で禁止されているのは、外部の人が見たときに、「公務員がその企業に特別な計らいをするのではないか?」と思う可能性のある行為です。

そのため、現在、その企業と何かしらの仕事をしているような公務員に対する接待は、当然禁止されています。

さらには、現実ではその企業との関係のない公務員であっても、同じように禁止されます。たとえば監督官庁(※)の公務員などへの接待が該当します。外部から見たときに、監督権限を持つ公務員に接待などすれば、何か特別なことがあるのかと疑われるのが当然だからです。

(※)公共的団体、または、民間企業に対して、これらの機関が行う業務を監督する権限を持つ官庁のこと。たとえば、銀行や証券会社などの金融機関の監督省庁は金融庁となる。

禁止されている接待の内容

特別な関係を疑われるような接待なら、基本的にすべて禁止されていると考えないといけません。ちょっとした手土産などを渡す行為でも、外部から見れば、やはり特別な関係を疑われることになるので許されません。割り勘の接待であっても、やはり不明瞭さが残ります。

一緒にゴルフをしたり、旅行に行ったりという接待行為をしていた場合、たとえ割り勘であったとしても外部から見れば、何か特別なことがあると思われてもやむを得ないところです。従ってそのような行為も禁止されています。

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認められている接待の内容

逆にいえば、外部から見て疑いを持たれる余地がないような場合は、倫理規定にも反しないことになります。

一般の参加者もいる会費制のパーティーなどでは、公務員も同じような会費を払って参加しても、特別な関係を疑われることはありません。最も、このような場合では接待ともいえないかもしれませんね。

民間同士での接待は問題ないのか

以上見てきた接待のルールは、あくまでも「公務員」や「みなし公務員」に対するものです。実際問題、民間企業同士での接待は基本的に問題なく行われています。

ただ、現在多くの企業が内部統制を強めています。そのような中で、企業でも自社で接待についての厳しいルールを決めているところが多数あります。

そういった企業との取引の場合は、安易に社員に接待を行うと、公務員に対する接待と同じような問題が起こることがあるので注意が必要です。

経営者がするべき内部統制…会社全体に周知するためには

このような接待についてのルールは、必ずしも多くの企業で共有されていません。特に、業界によっては「他社もみんなやっているじゃないか!」ということで、甘く捉えているようなところもあります。

しかし、そのようなことでは、ひとたび問題視されたときには、企業に大きなダメージが生じることになります。最近起こった中古車販売店の事例のように、これまでは何となく見逃されていた違法行為が、会社を潰すような問題となることがあるのです。

企業としては、社内の接待についてのルールを明確にし、研修やセミナーなどでの社員の啓蒙活動をしていくことが大切です。

まとめ

企業として、関連する官庁の人に、業界の実情を知ってもらいたいことがあるのは当然です。また、公務員とよい人間関係を築いていくためには、何らかの接待をする方が効率的であることも間違いありません。会社の業績を上げるために、熱心な社員ほどこのような接待行為を行ってしまう可能性があります。

しかし、そういった接待行為を外部から見られたとき、不正の温床のようにみられることを、経営者は理解すべきです。特に中小企業だと、社員が接待NG、手土産NGなどのルールを知らないことが多い(研修でも社内ルールでもそういう内容はない)ため、「気づかず社員がやってしまった!」ということが起こり得ます。

経営者の立場で、会社の健全な発展を目指すためには、接待についての社員の教育は、避けて通ることができないのです。今一度、自社を見直してみてはいかがでしょうか。

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*Fast&Slow, bluet, metamorworks, Graphs, KY / PIXTA(ピクスタ)