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弁護士が疑問を解決

労働時間じゃない休日のゴルフ・懇親会・接待は違法?判例をもとに弁護士が解説

2023.04.24

社内での懇親会や、取引先とのゴルフに参加した社員から「これは残業ですか」「労働時間ですか」と聞かれるという相談を受けたことがあります。一般的な経営者の常識としては、「そんなものが残業となるわけないだろう!」と感じているはずです。タダで楽しんでいるのに、残業代など請求するなどありえないという感覚です。ただ、法律的に考えると、これはなかなか難しい問題です。そこで、法的に本件はどういう風に考えるのか、過去の判例なども参考にしながら考察してみます。

労働時間とは

接待や懇親会が、残業代などの対象になるかどうかは、それらが”労働時間”に行われたか否かによって決まってきます。それでは、労働時間かどうかの判断はどのようになされるのでしょうか。過去の判例では「労働時間とは、客観的にみて、労働者の行為が使用者の”指揮命令下”に置かれたものと評価できるか否かにより決まる」と判断されています。

労働契約というのは「労働者が一定の時間雇用主の指揮監督下に置いて労働に従事するもの」です。そうである以上、会社の指揮監督権が及んでいる場合には、労働時間とされるのはある意味当然でしょう。抽象論としては、とくに問題ありませんが、具体的事案の場合、接待や懇親会において雇用主である会社の指揮命令があったのかなかったのかの判断は、かなり難しいものがあります。

ゴルフ接待は労働時間になるのか

ゴルフの接待が労働時間と認められるかが争われた判例があります。

ただ、この判例においては、ゴルフ接待の場合「基本的には労働時間とは認められない」と判断されています。基本的にはゴルフは、本人も楽しんで行うものです。また、”接待”といっても、具体的に何かの仕事に関連してのゴルフということは通常はありません。一般的に親睦を深めるのが目的です。そのような中で、ゴルフ接待が当然に雇用者の指揮命令が及んでいるとはいえないとの判断でしょう。そして、雇用者が取引先とのゴルフに参加するようにいった場合や、出席費用が、事業主より出張旅費として支払われていたというだけでは、やはり指揮命令が及ぶ労働時間とは認められないと判断しています。

接待でも労働時間と認められる場合

それでは、ゴルフ接待の場合は、絶対に労働時間とは認められないのかというと、そういうわけではありません。一般的に、取引先とのゴルフに参加するだけでは、雇用者の指揮命令に服したとはいえないのは確かです。しかし、そのゴルフで大切な商談がなされることが決まっており、雇用主がそれへの参加を明確に命令しているような場合は、指揮命令権が及んでないと考えることはできません。相手先を特定し、具体的な任務のもと、特定の日時にゴルフをするような場合は、会社の指揮命令に服しているといえるからです。理屈としてはそういうことになりますが、具体的な判断は難しいところです。一般論としては、ゴルフ接待の場合はなかなか労働時間とは認められないと考えた方がよさそうです。

社内懇親会は労働時間になるのか

社内での懇親を深めるために、食事会や飲み会が開催されることはよくあります。こちらについても、基本的には社員同士の親睦を深めることが目的ですし、参加する人たちも楽しんで参加することが多いといえます。とくに懇親会の中で、業務の話がなされることもなく、その時間会社の指揮命令が及んでいるともいえません。そう考えると、社内懇親会が労働時間と認められる可能性は相当低いものといえます。実際、判例においても基本的にはこのような判断のもと、懇親会は労働時間とは認められないと判断されている場合があります。しかし、すべての社内懇親会に関して、労働時間と認められないのかというと、そんなことはありません。

社内懇親会でも労働時間と認められる場合

社内懇親会の場合でも、特別の社員が幹事として宴会の準備をした場合や、社員の送迎役を行った場合には、その者の仕事が労働時間と評価されるのは当然のことです。それでは、単に懇親会に参会しただけの人が、その時間を労働時間と判断される場合があるのかが問題となります。この点に関して判例は、会社が懇親会の費用を負担したなどの理由があるだけでは、その懇親会が労働時間と認めるには十分でないと判断しています。

それでは、どのような場合に、懇親会も労働時間とされるのかというと、基本的には接待ゴルフの場合と同じように考えることができます。つまり、その懇親会において会社の業務についての話などが具体的に行われる場合で、会社の命令によって参加が義務付けられるような場合には、懇親会も労働時間と認められるとされています。このような場合には、会社の指揮命令権が及んでいると考えられるからです。

齟齬を防ぐための事前対応策

上記のように接待ゴルフや社内懇親会でも、労働時間と認められる場合と、認められない場合があります。判例を見る限り、簡単には労働時間と認められないようです。

しかし、場合によっては認められる可能性がある以上、社員との争いを予め防ぐことは重要です。まずは、懇親会や接待ゴルフへの参加が、強制なのか、嫌なら断れるものなのかを明確にする必要があります。社員が、無理やり参加させられているという意識をもつ場合には、どうしても紛争が生じる可能性は残ります。

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最後に

接待や懇親会が残業時間になるのかという問題提起自体、社内の人間関係、経営側と従業員の信頼関係がしっかりしていれば生じないものかもしれません。社員が自分から積極的に参加を希望するようなら、このような問題はそもそも発生しないからです。そのため、社内コミュニケーションやチームビルディングへの取り組みを通じて、社員の会社との一体感を自然に強化するようにしていくことが大切でしょう。

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*タカス, USSIE, Fast&Slow, Mac, Komaer, MediaFOTO / PIXTA(ピクスタ)

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