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悩むビジネスパーソン

休みの日に上司から連絡…これは違法?ケース別で弁護士が解説

2023.09.28

休日でも、その日のうちに部下に連絡を取りたいと思う管理職はいるはずです。しかし、そんなことをして後から問題にならないのか心配になる人も多いでしょう。とくに、最近起こった中古車販売店の事例など、休日に上司が部下に連絡していたことが大問題となっています。

本稿では、休日に連絡をすることはそもそも許されるのか、会社として上司が部下へ休日連絡をすることに対してどのように対応するべきなのかといった事項について、弁護士が解説します。

休日に連絡した事により起こるトラブル

会社の上司から休日に連絡をされたことで、さまざまな法的トラブルが発生してきたことは間違いありません。

大体、休日に連絡してくる場合、何か問題が生じたことによる叱責のメールが送られたといったケースがよくあります。このようなメールが、パワハラの証拠とされることはよくあります。

たとえ叱責でなくても、休日に連絡して何か仕事を依頼するような場合ですと、休日に勤務させるということで残業代の問題が生じます。また、単に連絡をうけて、わざわざ仕事をしなくてもよい場合だとしても、その日のうちに返信しないといけないとなると、やはり休日勤務の問題は生じます。

とくに、その日のうちに返信がないと怒り出すような上司がいた場合は、問題が生じる可能性が高くなってきます。

労使関係が友好的なときには、これらの問題は顕在化しないかもしれません。しかし、ひとたび関係が悪化したり、他の問題が出てきたりしたときには、会社にとって大きなダメージとなる可能性があるのです。

休日の連絡は許されないのか?

法的に考えて、そもそも休日に部下に連絡すること自体が許されるのかを検討してみましょう。

会社が社員に対して、“指揮命令権”を及ぼすことができるのは、“勤務時間内”だけです。休日は従業員にとって自由な時間です。自由時間に仕事を命じるには、会社と労働者側の代表とで締結した「36(サブロク)協定」に従う必要があります。原則、休日勤務という形を取った場合にはじめて、会社から従業員に休日でも連絡ができることになります。

休日の連絡自体は許される場合があるとしても、休日勤務として残業代(休日労働なので1.35倍の割増率)を支払う必要があるというのが原則です。このことは、会社としてもしっかりと指摘しておく必要 があります。

【参考】36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針3. 法定休日労働の割増率/厚生労働省

【こちらもおすすめ】2021年4月より新しくなった36協定届を確認!「押印廃止」「新様式」への対応ポイント

休日に業務を依頼する場合の問題

休日に連絡して、その日のうちに業務を命じた場合には、残業代が発生することは間違いありません。当初より、休日の一定時間働くことを予定していた場合と異なり、いきなりの連絡による業務命令の場合には別の問題も生じます。

つまり、従業員としては、休日にもかかわらず、上司からの連絡があればいつでも勤務できるように“待機”しないといけないのではないかということです。

そのような状態だったと認定されれば、休日とはいえません。実際に仕事をした時間だけでなく、待機時間についても残業代の支払いが必要となってきます。さらに、会社が休日を与えていなかったと認定されることもあり、それ自体が問題となってきます。

また、休日に仕事自体を依頼しなかった場合でも「休み明けの朝には成果物を出すように」といった指示がなされた場合は、事実上、休日勤務を要請したものとされますので、その点も注意が必要です。

休日に連絡だけしてもよいのか

仕事を依頼するわけではないが、連絡だけするような場合はどうでしょうか。

上司としても、指示を出すことを忘れてしまうといけないので、休日でもとりあえずメールを出しておこうということはあります。従業員としては、休み明けにメールを確認すればよい場合です。そういうことなら、とくに問題は生じないでしょう。

しかし、上司はそのつもりでも、部下にとっては休日に連絡があること自体、大変なプレッシャーとなることはあります。また、部下によっては気をまわして、休日中に仕事をしてしまうような人も出てきます。

休日連絡での問題を起こさないための対応策

そこで、休日連絡をする上司の側としては、連絡する部下に対して、誤解の余地のない明確な指示を出すことが必要となります。休日に特にメールなどチェックする必要がないのなら、日頃からその旨を明確にして、徹底して周知させる必要があります。また休日の連絡の中では、休日明けに取り組めばよい業務であることを明記しておくなどの配慮も必要でしょう。

もっとも、クライアント絡みで急な対応が必要な事態も起こり得ます。大きな時間は割かれないものの、一時的に拘束されるような業務(確認や他所への問い合わせ)が発生する場合です。企業活動を止めないために何らかの業務をお願いする場合は、少なくともその業務に要した時間については残業代を支払う必要があります。ただ、そのような事態が頻繁に生じるようなら、それに合わせた業務体制を整えることも考えなくてはいけないでしょう。

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経営者の立場で注意するべき点

会社や経営者としても、会社内で違法な休日業務命令が行われていないかをチェックすることが必要です。中古車販売店と同じ轍を踏まないように内部統制を強化するのです。

会社として、休日の勤務や連絡についての考えを明確にして、違反は許さないことを徹底しましょう。万が一、問題が起こったときでも、会社はコンプライアンスを重視していたことを示すことができます。

まとめ

昭和はもちろん平成の時代でも、休日に上司が部下に軽い気持ちで連絡することはありました。当時は、急ぎの用なら連絡するのが当然で、それに対応するのは部下として当然であり、「残業代が発生するなんていうこと自体けしからん」といった風潮があったのです。

しかし、今は時代が変わっています。いつまでも昔の考えのまま上司が休日連絡をすることを放置しているようでは、会社として大きな問題が発生することは間違いありません。

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