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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 残業45時間を超えたらどうなる?超過する場合の対処法とは
36協定

残業45時間を超えたらどうなる?超過する場合の対処法とは

2023.11.14

時間外労働の上限は厚生労働大臣の告示(限度基準告示)によってのみ定められていましたが、働き方改革による労働基準法の改正によって、労働基準法において時間外労働の上限が定められました。この法改正は、2020年4月1日からは中小企業に対しても適用され、一部の業種を除いてほとんどの企業へ適用されるに至っています。

時間外労働の上限規制に違反すると、行政指導の対象になるだけでなく刑事罰の対象にもなりますし、なにより企業のレピュテーション(評価、評判、信頼)を大きく下げることになり、人材獲得に深刻な影響を与える恐れがあります。本稿では、時間外労働の上限規制について解説していきます。

残業時間の上限は?

労働基準法は、1日8時間、週40時間を“法定労働時間”として定めています(労働基準法第32条1項)。企業がこれを超えて社員に働いてもらうためには、労使間で締結する労使協定(時間外労働協定、いわゆる『36協定』)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

36(サブロク)協定には、以下の事項を記載する必要があります。

  1. 時間外・休日労働をさせる対象労働者の範囲
  2. 対象期間(1年間に限る)
  3. 時間外労働又は休日労働をさせることができる場合
  4. 対象期間における1日、1か月及び1年の各期間についての時間外労働をさせることができる時間数又は休日労働をさせることができる日数
  5. その他労基則で定める事項(有効期間、対象期間の起算日、時間外・休日労働の上限等)

上記のうち、④の「時間外労働をさせることができる時間数」を定めるにあたっては1か月につき45時間、1年につき360時間の“限度時間”を超えることはできないこととされており(労働基準法第36条3項及び4項)、これがまず原則的な上限とされています。

【参考】
労働時間・休日/厚生労働省
第三十二条第一項/e-Gov法令検索
第三十六条第三項及び四項/e-Gov法令検索

【もっと詳しく】2021年4月より新しくなった36協定届を確認!「押印廃止」「新様式」への対応ポイント

「限度時間」を超えることができる場合は?

労働基準法上の原則的な時間外労働の上限は、1か月につき45時間、1年につき360時間です。ただし、臨時で特別な事情がある場合には、36協定に“特別条項”を定めておくことで、これを超えて時間外労働に従事させることができるとしています(労働基準法36条第5項)。

特別条項には、以下の事項を記載する必要があります。

  1. 1か月の時間外労働及び休日労働の時間数(100時間未満の範囲に限る)
  2. 1年についての時間外労働の時間数(720時間を超えない範囲に限る)
  3. 限度時間を超えることができる月数は1年について6か月以内
  4. 限度時間を超えて労働させることができる場合(事由/できる限り具体的に)
  5. 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置
  6. 限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率(法定の割合率を超えるよう努める)
  7. 限度時間を超えて労働させる場合の手続を定める

1~3について労働基準法36条第5項、4〜7については労働基準法施行規則17条第1項第4号〜第7号で定められています。

また、上記特別条項によって限度時間を超えて労働させることができる場合であっても、複数月の平均の時間外労働及び休日労働時間数が80時間を超えてはならないとされています。

まとめると、限度時間を超えて労働させることができるのは、1年のうち6か月に限り、1か月100時間未満(休日労働時間も含む)、複数月平均80時間(休日労働時間を含む)、1年について720時間を超えない範囲に限り、上記特別条項を定めることで限度時間を超えて労働させることができるとしています。

【引用】厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」/厚生労働省
【参考】労働基準法 第三十六条(時間外及び休日の労働)/e-Gov法令検索
【参考】労働基準法施行規則 第十七条/e-Gov法令検索

上限規制が適用外の業種

時間外労働の上限規制は、以下の事業については適用が猶予されています。

  • 建設事業
  • 自動車運転の業務
  • 医業に従事する医師
  • 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業

ただし、これらの業種への猶予措置も、2024年3月31日までであり、2024年4月1日以降は、各業種で特別な定めがあるものの、時間外労働の上限規制の適用が開始されますので注意が必要になります。

【参考】時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務/厚生労働省

上限を超えたときの対処法

時間外労働の上限規制を超えてしまった場合には、残業代の支払はもちろんのこと、労働基準監督署からの行政指導などの対象となります。それだけでなく、時間外労働の上限規制に違反した場合には、刑事罰の対象にもなります。実際、上限規制違反を理由として送検された事例も出てきております。

程度や悪質性にもよりますが、一時的に上限規制を超えてしまったとしても直ちに刑事罰の対象とはならないこともありますので、仮に時間外労働の上限規制を超えてしまった場合には、翌月以降、これを超えることがないように直ちに是正措置を取りましょう。

また厚生労働省は、時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死などの労災請求が行われた事業場を『長時間労働が疑われる事業場』として毎年公表しています。上限規制に違反した場合には、こうした公表によりレピュテーションを大きく下げることになります。

【参考】時間外労働 2カ月平均80時間超える 上限規制上回り送検 名古屋南労基署/株式会社労働新聞社
【参考】長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します/厚生労働省

【こちらもおすすめ】【あなたの会社の時間外勤務の上限は?】働き方改革で注目される「労働時間」の相談まとめ

時間外労働の上限を超えないために

1:労働時間を適正に把握・管理する

時間外労働の上限を超えないようにするためには、まずは自社の従業員の労働時間を適正に把握・管理することからスタートしましょう。労働時間を適正に把握・管理するための指針としては、いわゆる『適正把握ガイドライン』があります。

同ガイドラインによれば、労働時間の把握・管理方法として原則的に以下のようになります。

  1. 使用者自らの現認
  2. タイムカード、PCログなどの客観的な記録方法

自己申告はあいまいな労働時間管理になりがちであるため例外とされています。仮に自己申告を取る場合でも、定期的にメールの記録などの客観的記録と照らし合わせて補正する必要があります。労働時間が長時間になりがちな企業は、労働時間の把握・管理を自己申告に頼ってしまい、本当の労働時間が見えていないケースもあります。

したがって、まずは労働時間を適正に把握・管理することが大切です。

【参考】労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン/厚生労働省

2:業務の効率化

業務全体を見直し、無駄な業務がないか、テクノロジーを用いた自動化が可能な業務がないか、外注することができる業務がないかなどを総点検します。業務全体の負荷の削減、効率化を図りましょう。

3:人員の増加

業務の見直しを行ってもなお時間外労働が上限を超える(ないしは超えそう)な場合は、新たに採用を行い人員の増加を図る必要があります。

ただし、長時間労働が常態化しており、何らの対策も打っていないような企業では、新たな人員の獲得も困難といえるでしょう。時間外労働削減の対策として、いきなり人員の増加を図るのではなく、まずは“労働時間を適正に把握・管理”や“業務の効率化”のような対策を講じ、改善する努力を行うべきでしょう。

【こちらもおすすめ】「残業時間を減らすように」と指示するだけはNG!サービス残業の根本的な解決策

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