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ランチミーティング

「休憩できない…」ランチミーティング、休憩時間の電話対応。休憩返上での仕事は法律違反?【弁護士が解説】

2023.02.27

皆様の会社では休憩を適切に取れているでしょうか? 休憩時間のはずが、電話や来客対応をさせられていたり、ランチミーティングという名目で会議を実施していたりしていないでしょうか? 休憩の付与は、労働基準法上会社に義務付けられているため、休憩を適切に与えていない場合には、労働基準法違反となります。そこで、本稿ではお昼休み返上で働くことの法律上の問題点と対応策を解説します。


約6割が休憩を取れなかった経験がある

2022年にJTが日本企業で働く20代から50代までのオフィスワーカーに対して行った“職場の休憩実態の調査”によれば、62.9%の人が”周りの目が気になり休憩がとれなかった経験”があるとしています。この調査では、お昼休憩のみを指しているわけではないと思われますが、多くの人が適切に休憩を取れていない現状が表れています。また、職種別にみると、とくに女性中間管理職が”周囲の目”によって休憩を取れていないことがよくあると回答しているようです。

【調査結果の参考】日本における「職場の休憩実態」を調査 / JT

昼休憩が十分にとれない理由

上記の調査は“お昼休憩”に限定した調査ではないため、お昼休憩がとれない原因は定かではないですが、お昼休憩が取れない原因として以下のような理由が挙げられるでしょう。

・ランチミーティングなどお昼休憩時間に仕事を入れられる
・業務量が多くお昼休憩を取る余裕がない
・電話や来客対応のため事実上待機状態になり休めていない
・周りの人が休憩を取らないので自分も休憩を取りづらい

“周りの人が休憩を取らないので自分も休憩を取りづらい”については、上記JTの調査でも“周囲の目”によって休憩が取りにくくなっているという結果が出ており、全体の約半数の人が経営層や先輩・上司のような”偉い人”が休憩を取っていないと休憩を取りづらいと感じると答えています。

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そもそも「お昼休憩」を与えないことは違法なのか

結論から申し上げると、労働基準法上、“休憩”を与えないことは違法であるものの“お昼休憩”を与えないことは違法ではないということになります。労働基準法の休憩の基本からみてみましょう。

労働基準法の定め

まず、労働基準法34条では、休憩について以下のとおり定めています。

(休憩)
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

【労働基準法34条の参考】労働基準法( 昭和22年04月07日法律第49号) / 厚生労働省

上記を整理すると、労働基準法では以下が求められています。

(1) 労働時間が6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合には1時間の休憩を与えること
(2) 原則として事業場で一斉に休憩を与えること(ただし、労使協定で除外可能)
(3) 休憩時間は自由に利用させること

休憩は「お昼」である必要はない

他方で、労働基準法上は、お昼の時間帯に休憩与えることは求められておらず、“労働時間の途中”のどこかで休憩時間を与えればよいとされています。さらには、休憩を連続した1時間(もしくは45分)で与えることも求められておらず、“30分ずつ”という形で分割して付与することも認められています。

労働から完全に解放されていなければ「休憩」とはいえない

会社は、社員に対して上記のルールに従って”休憩”を与える必要がありますが、休憩とは、“休息のために労働から完全に解放されることが保障されている時間”をいいます。上記(3)の休憩の自由利用の原則は、これを明確にしたものです。たとえば、以下のような場合は休憩を与えたとはいえないため問題があります。

①電話や来客対応をする必要がある場合

お昼休憩という名目で、実際には電話や来客があった場合にはこれに対応することとされている場合は、たとえ電話や来客がなく対応がなかったとしても、”待機時間”であり労働から完全に解放されることが保障されていないので、休憩とはなりません。つまり、電話が鳴っても、来客があっても対応しなくてもよいという時間であることが必要です。

②休憩を短い時間で分割する場合

上記でも述べましたが、休憩時間は必ずしも連続した1時間ないしは45分を与える必要はなく、分割で付与することも可能です。もっとも、たとえば5分ずつというようなあまりに短い単位で分割することは、労働から完全に解放されることが保障されていないので、休憩とはならないとされる可能性があります。

③外出を禁止する場合

休憩時間は自由に利用させなければならないため、外出することも完全に自由であるかが問題となります。よくあるのは休憩中の外出には会社の許可を必要とする許可制です。行政解釈(昭和23年10月30日基発1575号)によれば、”事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも違法にはならない”として肯定していますが、学説上は批判的な見解があり、届出制や合理的基準(休憩後の再開に間に合わない場合など)による許可制のみが適法であるとする見解が有力です。したがって、外出先の距離や目的を問わず全てに許可制を取る場合には、違法となる場合があると考えておきましょう。

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社員が休憩を確保するために会社ができること

上記のとおり、会社は社員に対し1時間ないしは45分の休憩を与えなければ、労働基準法違反となります。そして、休憩を与えたというためには、労働から完全に解放されることが保障されている必要があり、こうした時間を確保することが重要になります。会社としては、社員の休憩を確保するため以下のような対応をするとよいでしょう。

経営者、上司が率先して休憩を取る

冒頭述べた調査によれば、上位者が休憩を取っていないことが、自分が休憩を取りにくくなる一因であるとされています。そこで、まず経営者・上司が率先して休憩を取るようにしましょう。

電話、来客対応には交代休憩で対応

上記のとおり電話、来客対応の必要がある場合には、休憩を与えたこととなりません。休憩は、必ずしもお昼に与える必要はなく、労使協定を締結することで一斉休憩も除外することができますので、休憩時間を交代で与えるなどし、電話、来客対応も確保しつつ、休憩も確保しましょう。

そもそも休憩時間に指示をしない

当然のことですが、休憩時間に“ランチミーティング”などの仕事を指示しないようにしましょう。ランチミーティングも、ランチを食べながらではありますが仕事であり労働からの完全な解放が保障されていないので、休憩ではありません。また、休憩を使ってでも仕事をせざるを得ないような業務量を与えることも問題です。こうした場合には、業務量の軽減や人員増加などによって、適切に休憩を確保できるよう工夫しましょう。

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*sasaki106, y.uemura, bee, Fast&Slow, EKAKI, sardine / PIXTA(ピクスタ)

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