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時間と給与

「残業代が増えて経営が……」残業代増加リスクへの対応策を弁護士が解説

2023.03.31

近年、国を挙げて働き方改革が推進されています。その一環で2023年4月より、中小企業の時間外労働規制が強化されることをご存知でしょうか? これは中小企業の経営にとって非常にインパクトのある改正です。今までと同じやり方だと、残業代の負担が大きく増加する可能性があるからです。

そこで『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。日比谷タックス&ロー弁護士法人の堀田 陽平 弁護士にご登壇いただき、残業に関する労働基準法の改正、正確に理解しておくべき労働時間の考え方、残業代増加リスクへの対応策などについて解説していただきました。

ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本稿では第3回目として「残業代増加リスクへの対応策」について解説します。

第1回:残業に関する労働基準法の改正
第2回:正確に理解しておくべき“労働時間”の考え方
第3回:残業代増加リスクへの対応策①②←今回はここ
第4回:残業代増加リスクへの対応策③・役に立つ補助金について【Q&A付き】

【資料動画のダウンロードはこちらから】
※第1~4回のどの記事からでも全編の動画の閲覧URL・資料DLが可能

【登壇者】

堀田 陽平 弁護士
日比谷タックス&ロー弁護士法人
2020年9月まで、経産省産業人材政策室で、兼業・副業、テレワーク等の柔軟な働き方の推進、フリーランス活躍、HRテクノロジーの普及、日本型雇用慣行の変革(人材版伊藤レポート)等の働き方に関する政策立案に従事。「働き方改革はどうすればいいのか?」という疑問に対するアドバイスや、主に企業側に対して労務、人事トラブルへのアドバイスを行っている。日経COMEMOキーオピニオンリーダーとして働き方に関する知見を発信。著書「Q&A 企業における多様な働き方と人事の法務」(新日本法規出版)など多数。


残業代増加リスクへの対応策3つ

残業代増加のリスクへの対応策3つを今回と次回に分けて解説しています。

対応策①:変形労働時間制の導入

対応策の1つとして“変形労働時間制”の導入が考えられます。

変形労働時間制のメリット

繁閑の差が激しい業態で有効です。すなわち、変形労働時間制を導入すると「ある一定期間の労働時間は少ないが、ある一定期間の労働時間が多くなるといった場合」の労働時間を平均化することができます。

簡単にいえば、労働時間を1日ごとに定めず、1月ごとや1年ごとに定める制度です。たとえば月初は時間が余るが月末に忙しくなる業種の場合、1ヶ月単位で労働時間を計算することで労働時間を平均化できるのです。

変形労働時間制のデメリット

変形労働時間制には以下のデメリットがあります。

  • 常に労働時間が多いという場合には残業代を削減できない
  • 要件・運用が厳格

上記の“要件、運用の厳格”とは、以下のようなことです。

①労働日ごとの労働時間を特定しなければならない
②一度特定した労働時間の変更は原則として認められない

対応策②:固定残業代の導入

別の対応策として、固定残業代の導入も挙げられます。固定残業代とは“みなし残業代”とも呼ばれ、あらかじめ一定金額の残業代を決めておき、毎月必ずその金額を払う制度です。

判例では残業代の計算過程は問題にしないとされています。つまり、労働基準法や関連する規則で定められた計算方法によって計算しなくても、結果的に労働基準法37条で定められた残業代と同等の金額が払われていればよいのです(日本ケミカル事件・最高裁平成30年7月19日)

固定残業代に必要な要件

固定残業代を導入するには以下の3つの要件が必要です。

  1. 時間外労働に対する対価としての性質(対価性)
  2. 通常賃金部分と割増賃金部分との判別可能性(明確区分性?)
  3. 不足部分がある場合には追加で支払うこと、が必要とされている(国際自動車事件・最高裁平成29年2月28日等参照)

つまり、固定残業代を導入したからといっても、通常の残業代と同じように割増賃金部分を明確に区分し、足りない部分があれば追加で支払う必要があるのです。

固定残業代のメリット

固定残業代のメリットとしては、従業員の収入額は増え、事業者の払う残業代は固定できる点にあります。やりすぎはよくありませんが、見た目上の手取り金額は増えるため採用などには有効かもしれません。固定残業代は残業が少なかった月も満額を払わなければいけないのですが、残業代が増えすぎるのを抑制できるのはメリットといえるでしょう。

固定残業代のデメリット

デメリットとしては、固定残業代の要件を満たしておらず、無効になった場合の“残業代の増加”が挙げられます。これは、無効になった場合、固定残業代分も残業代の基礎賃金に含めて計算することとなるためです。そのため、先述したように“判別可能性”を担保しなければいけません。

固定残業代でよく見られる「基本給には時間外労働分も含む」といったものでは判別可能性がなく、どこからどこまでが時間外労働分なのかわかりません。そのため、“組入型”より“手当型”の方が安全です。たとえば「●●手当は、時間外の●時間分とする。」といった規定をおくとよいでしょう。

固定残業代で何時間分の“みなし”が可能かという点では、月80時間分の固定残業代を公序良俗違反で無効とした判例があります。(異論はある)

先述したように、固定残業代は社員が実際に残業しなかった場合でも、その分の満額をもらうことができる制度であり、基本的には社員にとってメリットのある制度です。したがって、事業者側が残業代の節約目的で取り入れるような制度ではないと認識して、導入するためには有効性が担保できるよう、専門家の意見をきいた上で導入しましょう。

まとめ

2020年の労働基準法改正により、2023年4月から中小企業の時間外労働規制が強化されます。法律の内容を正しく理解し、適切な対策を実施することが重要です。第3回目は残業代増加リスクへの対応策について解説しました。次回は引き続き「残業代増加リスクへの対応策」と「役に立つ補助金について」を解説します。

【資料動画のダウンロードはこちらから】

*tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)

編集:山口ヨシカズ

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