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【経営者必見】財務格付制度の判定ポイントを徹底解説

2024.02.26

前回は財務格付ができた背景や仕組み、実際の算定フローについて書きました。今回はもう少し具体的に、より実践的な内容を深堀りしながら解説していきます。

前回の振り返り

財務格付は、1990年代の不良債権処理問題に端を発し、米国の算定システムを参考に、金融機関が保有する正確な不良債権額を国が把握するためにルール化されたものでした。

これを自己査定と呼び、金融機関が債務者のリスク度合いを判断するために転用したシステムがまさに“財務格付制度”です。そのなかで、以下のように、経営者として押さえておかなければならない具体的なポイントについても示しました。

・債務超過は悪であり、自己資本比率は15%以上(理想は20%)を維持しなければ高得点は見込めない。
・経常利益の伸び率は前年対比30%以上を目標にする。
・営業赤字は死活問題と捉える。企業規模に関係なく高得点を獲得できる項目でスコアが伸びないため。

財務格付制度の仕組みを理解すれば、自社の企業経営における課題や改善点が判明します。自社の財務状態の健全性を意識して維持、発展させていけば、その結果を見て融資の可否や条件を判断し、企業発展の体力や血液となる資金供給源の一つである金融機関と良好な関係を保ちやすくなるのです。

【前回はこちら】財務格付制度とは?経営者が知るべき自社で格付するメリットと格付作業の流れを解説

定量判定で重要視したい配点部分とは

定量判定の要点理解から、経営改善ポイントを把握し、最短距離で経営改善に進んでいくケースはよくあることです。財務格付制度は、結果を教えてもらえない財務的人間ドックのようなもので、この判定方法を企業経営者にレクチャーしていくことに筆者は融資・財務コンサルタントとして使命感を感じています。

中小零細企業経営者が理解すべきは、企業の規模に関係なく、きちんと意識すれば確実にスコアを取ることができる要点の把握です。

前回ご説明した、安全性、収益性、成長性、債務償還能力の4項目ごとに、中小零細企業が目指すべき具体的な目標値と指標の意味をピックアップしてお伝えします。

安全性項目配点:34点

①自己資本比率(満点10点で目標は6点)

いわずと知れた会社の安全性を示す最も重要な指標です。過去の利益の積み増しや借入を含む会社の全資産に対して、どの程度の自己資産があるのかを表しています。数値が高いほど安全性が高く、銀行もお金を貸したいと思うものです。この自己資本比率で、できれば30%以上の6点を獲得したいところです。最低でも20%以上の3点は目指しましょう。

②ギヤリング比率(満点10点で目標は4点)

聞きなれない指標ですが、これは借入金に対して自己資本がどの程度あるのかを示す指標です。この指標が100%を切るほど借入が少なく、安全性が高い会社であることが示されます。目標点数は200%以内の4点です。

収益性項目配点:15点

①売上高経常利益率(満点5点で目標は4点)

会社の本来の成績である経常利益が売上高に対して何%かを示す指標です。数値が高いほど業績がよいと判断され、目標とする点数は3%以上の4点です。

補足すると、経常利益は長期借入金の返済原資とみなされます。そのため、経常利益がマイナスだと銀行からは「返済力が乏しい」とみなされ評価が厳しくなります。

②総資本経常利益率(満点5点で目標点数4点)

企業の経常的な活動による業績を示すもので、収益性分析を行う場合の基本となる指標です。投下した資本に対して、どの程度の利益を生み出したのかを判断します。基本的にこの指標は①の売上高経常利益率と比例しやすいものとなります。目標とする点数は3%以上の4点です。

成長性項目配点:25点

経常利益増加率(満点5点―目標点数5点)

当期末と前期末を比較して経常利益がどれだけ伸びているのかをはかる指標です。30%以上の伸びで5点満点を獲得したいところです。経営者の方々は、経常利益を確保し続けることが、いかに格付判定で高く評価されるために重要かという点を理解する必要があります。

債務返済能力項目配点:55点

1次評価(定量分析)において最も大切なのがこの能力です。企業規模に関係なく、高得点を積み上げられるいわばチャンス項目です。

①債務償還年数(満点20点で目標点数は7年以内の10点以上)

会社が借入を何年で完済できるのかをはかる指標です。製造業や旅館業は10年以内で問題ありません。それ以外では基本的に7年以内が10点と判定されます。

②インタレスト・カバレッジ・レシオ(満点15点で目標は8点)

この指標は金利の支払い能力が問われています。金融機関は、貸したお金の金利の支払い能力がどれだけあるのかは当然重視します。計算式は前編に書きましたが、そもそも営業利益がマイナスであれば、この指標での獲得はゼロになってしまいます。

過度な節税をすることによる営業利益の減少は、債務者格付において致命傷にもなりかねないくらい重要なものであると認識しましょう。目標は3倍以上で8点を獲得し、企業の規模は関係ありませんので、できることならば6倍以上の15点満点も貪欲に狙うことが理想です。

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ないがしろにできない定性判定のポイントとは

2次評価判定のポイント

2次判定には、銀行などの金融機関担当者との日頃からの密なコミュニケーションが効果的です。昭和から平成初期頃の時代までの銀行員は往々にしてヒトの目利きが得意でした。それは、相手の懐に入る度胸やおせっかいともいえる世話焼きな性分をもった人物が多かったためともいえます。

金融機関では、普段の何気ない経営者との会話から①市場動向、②経営者の資質、③営業基盤、④競合状態などを的確に把握していました。この4点は定性面でも配点は高い部分です。その企業の数値面以外の定性的な部分も金融機関にきちんと伝わっていたことでしょう。

しかし、令和の現代においては、マンパワーは金融機関といえども潤沢にあるわけではありません。そこで、経理体制を構築し、月末で締め、試算表を翌月の中旬には完成させましょう。そして、簡単な営業振り返りレポートと今後の展望や計画を持って、経営者自らが金融機関に出向き、お茶を飲みながらゆっくり説明することがコミュニケーションの王道とされています。

回りくどくアナログに思えるかもしれませんが、自分自身を銀行員と捉えたときに、毎月きちんと報告に来てくれる経営者とそうでない経営者の仕事が同時に来れば、「どちらを優先し、力を込めて取り組むのか」という問いへの答えは明白です。

3次評価判定のポイント

一番お伝えしたいことは、情報開示は重要であるということです。形式としては、個人資産と生活費などを一覧で指し示すとよいでしょう。隠すのではなく堂々と開示することが金融機関と信頼関係を構築するコツです。もし、一覧を提出したとしても担保として取られることは稀です。むしろ、経営者としての覚悟や、誠実さが評価されます。

当然、個人資産があれば、事業の業績がよくなくても法人・個人合算の貸借対照表(B/S)を作成し、実態的な財務力で債務者としての格付を総合的に判断して調整してくれます。これが3次評価です。

昔ながらの発想かもしれませんが、清貧の思想も受けがよいです。質素な生活ぶりは、自らを律しているとみなされます。創業経営者は自信家が多く傍若無人になるパターンもあります。経営者はいかに自制心を保ち、冷静に経営していくかという発想も持ちましょう。

まとめ

前回と今回の2本にわたって財務格付制度について解説してきましたが、基礎的な会計リテラシーがなければ理解することがなかなか難しいかもしれません。具体的にいえば、日商簿記3級レベルの知識、そして勘定科目の意味を理解することがあげられます。これが身に付いていないのならば、まず一歩目に学んでおくべきでしょう。

財務指標の計算式を丸暗記することはありませんが、その数値が指し示す意味と、銀行が判断する水準を分かっておかなければなりません。財務格付を理解すれば、経営計画を作成するうえで自社の情報をきちんと正確に捉え、業績向上のための施策の精度を飛躍させることができることでしょう。

格付作業は経営要素を細分化してくれる側面があります。知っていて損はなく、混沌とするこれからの時代を生き抜いていくうえで、修得しなければならない知識であると筆者は信じています。

*imtmphoto, Pickadook, David Gyung, No-Te Eksarunchai, insta_photos / shutterstock

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