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銀行員

資金調達のカギは「銀行」!金融機関と対話するときに大切なこと

2023.10.30

中小企業経営者や財務部門の幹部にとって、「銀行との交渉は掴みどころがなく難しい……」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

今回から2回に渡って“銀行と対話する上で大切なこと”をテーマに書き綴ってまいります。言い換えるなら、中小企業にとっての銀行とのあるべき“正しい”付き合い方の基礎的レクチャーです。資金調達手段が増えてきた現在においても、中小企業が資金調達する上で、銀行などの金融機関との交渉はまだまだ大切であるといえます。

貸す側として中小企業を対象とした融資業務に携わり、反対に借りる側として中小企業経営者としての経験もある融資・財務コンサルタントの筆者が、昨今のトレンドも踏まえながら普遍的に銀行取引において大切な点をできる限り分かりやすくお伝えします。ぜひ、最後までお読みいただければ幸いです。

銀行担当者とは

日本政策金融公庫などのいわゆる旧政府系金融機関以外の民間金融機関には、融資取引がある場合は、必ず一企業に1名以上の担当者が配置されます。融資という目に見えない商品を扱う金融機関にとって、融資担当者が握っている役割は非常に大きいといえます。銀行はその企業の情報や意向が担当者に集約される体制を敷いているという点を理解していただきたいです。つまり、企業側は担当者とのコミュニケーション抜きでは絶対に取引ができないということです。

ケースによっては「専門部署に直接問い合わせたい」と感じることもあると思いますが、何を差し置いてもまずは、担当者に相談するということが大切になります。銀行はきちんとガバナンスの効いた“組織”であることを強く認識してください。簡単にいえば「まずは担当者に相談」と覚えておけば間違いないでしょう。

銀行を味方につけるメリットとは

中小企業経営において、銀行を味方につけることはいわば“百人力”を得るも同然です。その広いネットワークを活かして、資金面のみならず、ときには営業や総務の分野においても解決策を提供してくれることは頻繁にあります。経営資源は中小企業と比べると段違いであるのは、令和の現在も昭和平成となんら変わりないと感じます。ここで大切なことは、大前提となる良好な信頼関係を育んでいるかということと考えます。

では、どのような動きやコミュニケーションを行えば、銀行との関係は良好になっていくのかを簡単に説明していきましょう。そこでカギになってくるのは適切な情報開示です。具体的な手法をケースごとにレクチャーいたします。

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銀行とのコミュニケーション方法【パターン別】

■法人で融資取引がある場合

(1)支店へ出向き、毎月試算表と簡単な振り返りレポートを持って支店長や役席の人に報告しながらお茶を飲む

これが実は王道中の王道です。銀行員側の立場で考えてみていただくと、丁寧に業績報告やこれからやっていきたい将来への希望を語ってくれるお客さんと、場当たり的に己の直感で好き勝手に経営し、いざお金が必要になってから「困った、困った」なんて深刻な顔で相談にくるお客さん。お金を貸す審査と手続きの手間はどっちも一緒だとしたら、どちらの仕事に力が入るかはいうまでもないことですよね。

(2)法人だけでなく個人資産の明細一覧を決算書に添えて提出する

「銀行に財産をいうと全部担保に取られてしまう……怖くていえない!」なんて思っている方はおられませんか? ケースバイケースではありますが、往々にして、個人財産を銀行に伝えた方が取引は優位になります。そして、金利などの条件はこちらの希望が通りやすくなったりします。この効果は多少専門的にいえば、“債務者格付作業の3次評価が向上する”という状態です。銀行は、決算書を見て毎年企業の格付作業を実施しています。1次評価は決算の数値をみた定量面、2次は経営者や市場を見た定性面、3次評価が経営者の個人資産背景とイメージしてください。今の銀行は財産があればできるだけ多く担保を取ろうというスタンスではありません。むしろ逆で、一定の財産(資産背景という)が見えると、安心して銀行側も貸すことができます。事実上、根抵当権の設定や質権の設定は行わず、みなし担保のようなイメージで審査します。

簡単にいえば、隠すより開示する方が賢明ということです。

■これから融資取引をする場合

(1)現在の借入の一覧をエクセルでつくって提出する

どうして新たに別の銀行から借りたいのか、目的を正直にいいましょう。初めてのお客さんは銀行側も審査が慎重になります。税理士や既にその銀行と取引があり、誠実で影響力のある経営者からの紹介が理想ではありますが、自分からアプローチした場合は、現状をきちんと紙に落として伝えないと相手は信用してくれません。

簡単でよいので、現状を伝えるエクセル一覧表を作成しましょう。記述するのは、融資ごとに列挙した以下の項目です。

1:銀行名
2:現在残高
3:金利
4:借入期間
5:毎月の元金返済額
6:資金使途(運転or設備)
7:プロパーか保証協会付か
8:保証人・担保設定の有無
9:銀行毎の残高シェア

(2)資金繰りの実績と予定表を持参する(メイン通帳の直近1年分コピーでもOK)

実は資金繰り表をつくる過程こそ自社の実態を正確に把握できるという副産物があります。資金の流れをきちんと説明できれば新たな銀行取引はしやすくなります。

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担当者がよく代わるケースには要注意

担当者が頻繁に代わって新人が多いという場合がありませんか? 言葉は悪いですが、単刀直入にいうと“舐められている”場合があります。気分を害してしまったら申し訳ございませんが、舐められている原因の大半は経営者側に多かったりします。

融資が信用保証協会付のみだったり、支店から遠い場所に営業所があったり、企業側から担当者への連絡や働きかけがほとんどなく疎遠だったりと、理由はさまざまです。つまり、「支店の営業数字には影響が小さいから、新人や若手でも大丈夫かな。いざとなったら自分がフォローに入ればいいし……」と、支店幹部から判断されていると、たいていの場合、新人やそれに準ずる(ざっくり入社4年目くらいまでの)若手行員があてがわれます。

担当者が退職して交代するのはご多分に漏れず、かつて花形人気業種であった銀行も3年で約3割の社員が転職してしまう昨今の原理・原則にはあてはまっています。このことも頻繁な担当替えに影響を及ぼしているでしょう。

できることならば、パフォーマンスが比較的高く安定している30歳前後以上のある程度腹をくくっている感のある担当者と上司を選びましょう。たいていの場合は、若手からベテラン担当者への変更は難しいので、重要局面ではアポイント時に上席と一緒に話ができるよう注意しておくことが大切です。また、直ちに担当者変更をすることは大変なので、その担当者が転勤すれば、「できることならば次はわりとベテランをお願いします……」と良好な関係を構築した上で、上席に伝えておくのも有効です。

決して、若手批判をしたいわけではありません。中には優秀で将来有望な新人が少なからず存在します。銀行の人事部はエリート集団で非常に優秀なので、そういった人物が早々にやる気を失い、給与面が段違いの外資系コンサル会社やM&A仲介会社に引き抜かれないように、本店や中核店といった行内のいわゆる“位の高い店”に配置します。

若手だからダメ、というわけでは決してありません。人によりけりです。「いっていたことにきちんと対応してくれない」「いっている意味をきちんと理解してくれない」ということが複数回あれば、取引に黄色信号が点灯したも同然です。力不足の担当者が自社の担当である場合、局面によっては中小企業経営者にとっては“資金繰りに失敗する”という経営的死活問題に発展する恐れもあるので、慎重に担当者の力量を見極めるべき、というのが筆者個人の考えです。

まとめ

銀行とのあるべきコミュニケーションの要点をまとめると以下のようになります。

・2か月に1回(理想は月に1回、試算表をもって)支店へ出向くスタイルが王道
・若手担当者が要領を得ない場合は、できるだけ上席に同席してもらう(コンビ担当体制をつくってもらう)
・担当者が訪問してくれたときは、できる限り関係構築のためにお茶と茶菓子を出してもてなす(当日アポイントでも嫌な顔をしない。日々銀行員は多忙を極めます……)
・良好な“話せる”関係性を構築し、(銀行員から見て)グリップできているお客さんリストに入れてもらう(蛇足かもしれませんが「当日アポでも遠慮せずお茶飲みにおいで」は魔法のフレーズです)

次回は後編として、融資取引以外にも、預金取引、為替取引を含めた銀行取引全体的視点から、“銀行員が喜ぶこと”をテーマの中心に据えて書いてまいります。最後までお読みいただければ幸いです。

【第2回】知っていれば得!銀行の3大業務から考える「資金調達」のポイント【後編】

*ふじよ, Graphs, Ushico, Luce / PIXTA(ピクスタ)