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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 「パワハラ」と言われないための注意指導トラブルを防止する4つのコツ

「パワハラ」と言われないための注意指導トラブルを防止する4つのコツ

2020.08.26

「パワハラと言われるのが怖くて注意指導できない」「しかし、注意指導しなければ管理職として役割を果たせない」など経営者や管理職の注意指導の悩みは深いものです。

どのような考えた方で注意指導すれば、適切な注意指導になるのか4つのコツをお伝えします。

(1)注意指導の目的を理解する

注意指導は、口頭注意、文書注意があります。幅広く捉えれば、譴責(しっせき)や減給などの懲戒処分も注意指導に含まれるといえます。さて、注意指導の目的とは何でしょうか? それは「社員を正しい方向に導く」ことです。当たり前のことですが、このことを忘れがちです。

例えば、「もうアイツには我慢できないから、注意しよう!」と言っている人を想像してみてください。容易に想像できると思いますが、この発言にはおかしい点があります。「我慢ができないから注意する」という点です。この人の心理状態は自分の負の感情(我慢によるストレス)から開放されるために注意指導しています。「社員を正しい方向に導く」という本来の目的が忘れ去られているでしょう。

このような心理状態の人から注意指導されて、社員は素直に注意指導を聞き入れられるでしょうか? きっと難しいと思います。注意指導をする目的は「社員を正しい方向に導くこと」を忘れないようにしましょう。

譴責や減給なども懲戒処分も同様です。懲戒処分となると「会社として示しをつけるため」「企業秩序を守るため」などという理由が先行しがちです。それらの理由は処分の目的の一部として正しいですが、懲戒処分の目的は処分を通じて労働者に反省を促すことです。懲戒処分を行う際も「社員を正しい方向に導く」という本来の目的を忘れないようにしましょう。

(2)注意指導の前に事情を聞く

いきなり注意指導をするのは避けましょう。まずは当事者に事情を聞いたほうが、効果的な注意指導ができます。なぜなら「上司(経営者)が事情を聞いてくれた」という事実が、信頼度を高めるためです。人は自分が信頼する人の注意指導は聞き入れやすいと思います。

どのように事情を聞くかは上司(経営者)と部下(社員)の関係性にもよるのでケース・バイ・ケースですが、「なぜこのような状態になったのか事情を説明してください」と丁寧に話しかけるのもいいと思います。普段は優秀な部下(社員)で、関係性が深いならば「(優秀な君なら本来こんなことにはならないはずなのに……)どうしちゃったの?」とちょっと驚く感じで聞くのもいいでしょう。

事情をしっかりと聞き出せたなら、注意指導を70%は完了しています。良識のある部下(社員)ならば、事情を自分で説明するうちに自分の過ちに気づくためです。

(3)突然の文書指導はしない

労務関係の専門書を読むと「問題社員への対応として、裁判などでの証拠づくりのために文書で注意しましょう」というアドバイスを見つけることがあります。これはこれで正しいことを言っていますが、これまでの文脈を無視してこのアドバイスを実行するのは非常に危険です。

労働者の気持ちになって考えてみましょう。いつものように仕事をしていたら、ある日突然文書で注意指導されたとします。私が労働者ならば「なぜもっと早く注意してくれなかったのか?」「もっと優しい伝え方があるのではないのか?」など会社に対して怒りが湧きます。

怒りが湧くと人間は攻撃的になるため、何らかの手段で会社や上司を攻撃している可能性があります。例えば、未払い残業などなんらかの労務管理の不備を指摘されるかも知れません。

そうなると話し合いが難しくなり、注意指導の本来の目的である「社員を正しい方向に導く」ということの実現が遠ざかります。文書指導する前に十分な話し合いや口頭注意をしたのか?ということを十分に確認して、文書による注意指導をおこないましょう。

(4)部下がパワハラしていたら、自分を疑う

注意指導とパワハラは表裏一体のテーマです。よくある質問として「どこまでが注意指導で、どこからがパワハラですか?」というものがあります。その質問に対して私はいつも「パワハラと注意指導の境界線を探しはやめて、社員のことを本当に考えて注意指導してください。そうすればパワハラとは言われないでしょう」と回答しています。

暴力や罵倒は明らかなパワハラになりますが、それ以外のケースだとグレーゾーンが存在し、パワハラと注意指導の境界線をはっきりさせるのは、専門家でも難しいのが実情です。このため注意指導の原点に立ち返り「社員を正しい方向に導く」ということをアドバイスしています。

さて、会社経営者や大きな会社の役職者となると、部下も管理職でその下にさらに従業員がいるというケースもあると思います。そのようなケースの相談であるのが、「中間管理職のパワハラが止まりません。どうすればいいですか?」というものがあります。

パワハラは心理的な要素も大きいため原因はさまざまですが、「中間管理職がパワハラしている」という相談をじっくり聞くと、相談者本人(中間管理職の上司にあたる経営者など)がその中間管理職にパワハラをしているというケースがあります。パワハラが連鎖している状況です。

具体的には、次のようなケースです。

経営者

(実現不可能な営業目標の設定)

中間管理職

(実現不可能な営業ノルマの設定)(部下への罵倒、過剰な指導)

一般従業員

例えば中間管理職が営業部門を任せられているとします。経営者から中間管理職に対して、実現不可能な営業目標を設定します。中間管理職は実現不可能な営業目標を設定され、大きなストレスを抱えます。中間管理職はどうすることもできず、部下の一般従業員に対して「実現不可能な営業のノルマを設定」や「部下への罵倒、過剰な指導をする」というパワハラの連鎖です。

中間管理職がパワハラしていたら、パワハラの本当の原因が自分も含めた他人にないか考えてみましょう。

注意指導トラブルを防止する4つのコツをお伝えしました。ぜひ参考にしてみてください。

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※Graphs / PIXTA(ピクスタ)