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ブラックボックス

中小企業の管理業務をデジタルトランスフォーメーションする(2)~ブラックボックス化したITシステムの問題点~

2020.08.28

「DX」(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が最近よく聞かれます。データ化とデジタル技術で業務プロセスの革新を行おうというもので、経済産業省も推進しています。業務コストの削減手段のひとつとして注目されている読者もいるでしょう。

しかし、現状の実態としては、企業の情報システムが長年抱えてきたITに関する課題への取り組みが必要であると、前回に説明しました。

職場以外の場所で働くテレワークという新しい勤務様式が持ち上がったため、新しく出現した課題のように光が当たっていますが、その対策としては従来からの社内のITに関する課題を地道に解消していくしかないわけです。

前回、その課題のいくつかをとりあげましたが、今回は“ブラックボックス化した既存ITシステム”について、掘り下げていきます。

どのような業務がブラックボックス化しやすいか

社内の管理業務に関するシステムを大きく分けると、経理業務を行う際の中心となる経理システム(仕訳入力・決算集計システム)のほか、事業部門でも使用する各種基幹システムの管理機能部分、その他の管理系システム(人事労務システム、ワークフローシステム(稟議申請)等)があります。

このうち経理システムは会社が異なっても借方、貸方等の簿記原理にしたがって、システム入力を行い、集計作業、帳票類を出力するものです。経理の専門性を有した社員が操作し、付加機能は多少異なっても、通常は専業ソフト会社のものを使うことがほとんどのため、仕様が問題になることはありません。

やはりブラックボックス化しやすいのは経理システムの周辺にあり、会計データの発生源でもある会社ごとに業務が異なる可能性がある基幹システム部分や経理システムとの連携となることが多いといえます。

基幹システムでは主に、以下のような管理業務が行われます。

(1)購買管理業務、販売管理業務、在庫管理、生産管理業務
(2)債権・債務管理業務、情報分析業務

一般にブラックボックス化するとシステムの使い方や処理内容に関して、社員間の知識量の偏りが極度に大きくなります。他の社員には業務内容が見えにくくなり、担当者のみでリスクの大きい様々な処理が可能になります。

特に、少ない人員で業務を回さざるを得ない中小企業では内部統制上の問題が発生する可能性が高くなります。事業資産を直接管理する基幹システムでは内部統制が弱くなると扱っている資産の横領などの不正が起きやすくなります。

ブラックボックス化した既存ITシステムはさらに以下のような実態を伴っていることが多いといえます。

  • (1)(前述の)システム仕様が分からないことにより、システム(機能)の有効活用やシステム更新の障害となる
  • (2)蓄積されたシステムデータの入力内容が不完全だったり、データ間の整合性に欠けたり、目的適合性に乏しい
  • (3)基幹システムデータの出力・加工後に、第三者による十分な確認が行われぬまま、後工程の他システムに投入されている、もしくは、そもそもそのような処理について担当者以外は知らない

それぞれを詳しくみていきます。

システム仕様が分からないことによる問題点

1点目のシステム仕様ブラックボックス化に関して、システム開発の常道にしたがえば、要件定義書からはじまりシステム設計書などのドキュメントをしっかり残すことがまずは基本的な解消方法となります。

また、導入後はユーザー視点の業務マニュアルをつくることも必要です。さらには、開発後も通常継続的に行われる保守業務で仕様修正があれば、きちんとそれも含めて、ドキュメント化することが基本です。

実際のところ、このドキュメント化作業が自社開発(社員による開発)においては、一番おざなりになりやすく、また品質コントロールも難しく、管理コストがかかるところともいえます。

外部のベンダーに完全に開発を依頼するという手もありますが、仕様管理については事後の保守費用としてかかってきますので、結局は仕様管理のコストをあらかじめどのように負担するのか考えておく必要があります。

これに対する中小企業における現実的な案としては、専業ソフトメーカのクラウドサービス(Saas)やパッケージソフトの標準仕様による業務利用となります。実質的に自社では仕様管理をやめることになります。

なお、この場合自社業務の標準仕様化に伴うメリットと自社業務から独自性が失われるデメリットの可能性のトレードオフはきちんと評価する必要があります。

また、専業メーカーの製品も各社の製品開発の経緯(対象とするユーザー顧客の層)などから、得意な業種、不得意な業種がありますので、それらをしっかり見極めることも必要となります。

具体的には、購買在庫管理機能であれば、在庫をどのような観点から管理するのか、業種も小売業であれば、仕入価格に加え、販売価格による管理、製造メーカー、ブランドなどのカテゴリ区分、事後の購買分析に使うための単価履歴の取得方法やそのための品番コード設定方法が必要になるでしょう。

販売管理機能であれば、顧客の購買行動の分析する・しない、するのであれば、どのように分析するか。自社の事業上の管理ポイントをしっかり洗い出し、専業ソフトメーカーが提供している仕様で事足りるか、業務変更の妥協点を見いだせるかを、比較検討することになります。

蓄積データの内容がそのまま活用できないことによる問題点

2点目に関して、DXで過去に蓄積してきたデータの事業への積極活用をしたいのに、実際にはさまざまな問題があることです。

データの入力方法が不規則であったり、決まったルールに従っていなかったりなど、システムに蓄積されたデータを出力後そのまますぐに使えず、『EXCEL』や『ACCESS』にダウンロードし、担当者が時間をかけてデータ確認、修正や再加工しなければならないというのはよくある話で、データ活用の大きな障害となります。データの中身を解析、修正しない限り、安心して使えないという状態はある意味で情報のブラックボックス化ともいえます。

こうしたことが起きやすいことの原因としては、システム仕様(使い方)の理解が不十分のまま入力業務を行っていたり、入力時のルールが徹底されていなかったりすることがあげられます。よくある問題事例としてはシステム上(および業務上も)重要なマスターへの登録作業があります。

たとえば、商品マスターには、一般的には商品コードや商品名、仕入単価、販売単価などを登録します。商品コードについては、システム上最低限の制限しかないことが多く、運用ルールの大部分はユーザーが決める必要があります。

どのようなタイミングで新しい商品コードを発番するか、どのようなコード体系とするかは、購入後の商品管理(新旧製品などの分別管理を行うかであったり、ブランドなどの中レベル項目にもとづく体系化を行うか)などをしっかり検討し、それにもとづいてコード体系、採番ルール、マスター各項目の登録内容(表記)ルールを決めておかねばなりません。

システムデータの処理についてブラックボックス化した場合の問題点

3点目に関して、例えば経理システムを用いる経理業務においても、基幹システムからシステム連携が直接行えないため、手作業で集計・加工し、仕訳入力業務を行うような場合、担当者の属人的な処理になることが多く、人員をあまり割けない中小企業にとっては、その人しか分からないブラックボックス業務になり得ます。

次回はこの“業務のブラックボックス化”への対応およびその他のDXにおける課題を説明いたします。

 

*tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)