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ブラックボックス 可視化

中小企業における管理デジタルトランスフォーメーション(3)~業務のブラックボックス化の原因と解決法~

2020.09.24

前回まではブラックボックス化もいくつかのタイプがあると述べてきました。1つ目は情報システム自体のブラックボックス化、2つ目は情報システム内に格納されたデータのブラックボックス化、そして3つ目が今回の詳しく紹介する“業務のブラックボックス化”です。

この業務のブラックボックス化への対応は文字通りホワイトボックス化であり、現行業務の把握から始め、効率性等の観点から業務改善・見える化を実現することになります。

また、業務はなぜブラックボックス化してしまうのか、それを理解しておかなければ、一旦見える化した業務においても、時間と共に再びブラックボックスに近づいていくでしょう。まずはその背景を理解することが大事です。

業務のブラックボックス化が起こる背景とは?

よくある背景として次のようなことが考えられます。

(1)担当者に業務の進め方を任せきりにしている(業務の重要な変更が担当者によって自由に行われる)場合

(2)業務がシステム化されてはいるものの、他のシステムとの連携など、一部が手作業によって行われている場合

これらは業務がマニュアル化されていない(社内に共有されてない)ことや変更管理(裁量的な業務変更を認めない)がなされないことに通じます。

(3)内部統制上のリスクが高いプロセス(通常、権限者による承認が必要になる作業)において、不正処理の余地を残したり、業務上の煩雑さを回避(承認申請を回避)するために意図的にブラックボックスに取り残されたりする場合

(4)各業務が組織内の壁などにより全体最適の観点でなく、部分最適(部署や担当者最適)になっている場合

部分最適がはびこると日常業務の改善意識に欠けたり、他者の業務に関心を持たない組織になります。

(5) 定期的な業務でなく、スポット的に行われる細々な業務である

総務業務をはじめとしたシステムを使わず直に行うスポット的業務は、比較的作業量は小さいですが、業務数が多く、また電子化にも向かないことが多いです。こういった業務は常にリスト化するとともに業務内容をきちんとまとめておくことが必要となります。そして機会があるごとにリストを見直し、廃止や統合できるものはないか、外注化できるものはないか検討していくことになります。

ブラックボックスを解決するには”見える化”

上記のうち、(1)(2)については現行業務の棚卸しや業務改善を行い、見える化を行うことが目標となります。なお、業務そのものは担当者を観察しても把握できないことも多いので、業務フローの中で進捗を管理者に見えるようにすることが、見える化の代替となることもあります。

まず、業務の棚卸しですが、多くの企業では日常的に業務の棚卸しをすることはまれで、実際に行うタイミングとしては業務システムの導入時が多いと思われます。

この際に、導入予定の業務システムの業務フローに現行業務を照らし合わせることを業務棚卸しと称することが多いですが、一旦は現行業務フローを業務リストでもよいので書き出して事前に整理、共有しておくことがのぞましいでしょう。それにより、メンバーの間での議論が促進されますし、なによりも担当者自身が業務を見直す最初の機会になるからです。

また見直す際には、“ECRS”といわれる視点を導入すると、業務の整理が容易になります。

Eliminate(廃止):業務の目的目標を見直し、あるいは効果を考えて、不要な業務を廃止する

Combine(統合):複数の業務をまとめて、同時に処理することで効率化する

Rearrange(再配置):業務手順や担当者の入替えなど、業務再設計を行うことで効率化する

Simplify(簡素化):ECRで整理した業務をさらに分析し作業や活動を簡素化し、業務量を減らす

上記により現行業務をもとに業務システムとの適合性を検証し、極力パッケージソフトの標準仕様に合わせて業務の整理、業務の見直し行っていくことになります。上記(4)に関しても、見直し対象に関連する業務担当者が集まり、漏れ、重複なく業務がカバーされるように業務範囲の確認を行うことで、各業務分担の全社最適化が達成可能となります。

また、パッケージソフトだけでは業務のシステム化が困難な部分(システム間の連携処理など)については、RPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)による自動化なども考えられますが、その際にはパッケージソフトに合わせて見直された業務以上に、(処理内容の)見える化が必要となります。システム化されずに手作業部分が残る場合は、第三者によるチェック業務を行うことが望ましいですが、工数の関係などから、それができない場合は、事後にチェックを容易に実行できるようにしておくことが、よいと思われます。

(3)については、まず基本的に承認を要する事項を明確に定めておくこと。すなわち社内の決裁権限を定めて、社内に周知することが必要となります。それでも実際の業務では、決裁権限に適切に該当するものがない(だからといって、担当者の判断のみに委ねられない)ものも多く出てきます。

これらについては、その都度に必要な決裁権限を決めるとともに、処理する方法(業務システム上どのように決裁を得るか)を明確にしていく必要があります。内部統制の観点から、リスクがあるところが、かならず必要な措置(権限者による承認行為など)がなされるような業務フローにしていく必要があります。

実際に業務フローを見える化する際には

業務フローを見える化する際には、使用する業務システムを通じて行うことが通常ですが、紙ベースでの書類回付や承認申請をデジタル化する目的で、いわゆる専用ワークフローシステム(業務システムとは異なり、ワークフローに特化したシステム)の導入が増えていると聞きます。この専用ワークフローシステムを導入する際の注意点としては、業務フローは、「実業務の流れ」とその業務の進捗に必要な「承認申請」などが、システム上で一体化しているものの方が業務がスムーズに進むということです。

一般的に、販売管理システムや購買管理システムなどの業務システムに組み込まれているワークフロー部分は、機能が限定されていることが多いといえます。

この場合、例えば次のような問題が発生してきます。業務自体は業務システム上の画面操作によって進んでいきますが、本来であれば、上司の承認が必要となる段階で、承認機能が実業務と整合しないようなケースです。発注権限者が自分で発注入力をするように業務フローが変更できれば、業務システムと実業務が合致します。

しかしながら中小企業では、発注作業担当者のすぐ上が社長であったりして入力を依頼することもできず、発注権限をもたない担当者がシステム上で発注権限者にならざるを得ないことが起きます。そのようなケースでは、業務システム外で発注権限者の承認をとり、それが事後的に確認できる状態にしておくこととなります。つまり、発注承認自体は紙の書類を残して保存したり(テレワーク中であれば、メールで承認をとるという手段が代替的に取られているかと思います)、導入済みであれば専用ワークフローシステムで承認記録を残したりすることが必要になってきます。

いずれにしても、権限者の承認を得るというプロセスも、申請・承認処理の簡便化や見える化や決裁記録の確認・保存を容易に行うため、紙で行うことから、業務システム内ワークフローないしは専用ワークフローシステムに落とし込んでいくことが必要になると思われます。

業務のブラックボックス化は、不正が起きやすくなる、トラブル(担当者の急病や退職)時の対応が困難になる、業務効率化の妨げとなる、業務品質が均一でなくなる、テレワーク・BCP対応が難しくなるなど、さまざまな問題が現れます。

業務フローを定義できれば人材不足への準備にも

ところで、人材の確保は今後の中小企業にとって、重要な課題です。テレワークに関しては、今後の採用活動において、応募者側が企業を選別するポイントになることは間違いありません。テレワークの導入が困難な会社は、他社と比べて不利な立場に追い込まれる可能性が高いと考えられます。そういった場合でも、業務システムを使った業務フローがしっかり定義できていれば、業務の切り出しが容易になるので、人材を採用できない分をスポット的な外部委託する手を使えるようになるかもしれません。

以上、デジタルトランスフォーメーションにおける大きな課題のITブラックボックス化については説明しました。次回はその他の課題について説明していきます。