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見落としがち!従業員数が50人になったら経営者がやらなければいけないこと

見落としがち!従業員数が50人になったら経営者がやらなければいけないこと

2021.06.10

会社の従業員が1人、2人のときは事業主が全体を見回すことができても、規模が大きくなるにつれ対応しなければならないことが増えていきます。

たとえば、従業員が50人以上になると、

・就業規則の見直し
・時間外労働・休日労働に関する協定届『36協定』の作成提出
・労災書類の作成提出

が必要です。これらは遅滞なく行っている会社が多いと思いますが、労働安全衛生法が求めている選任・届出・組織体制は整っていますか?

特に大きな労災事故や長時間労働が原因による脳疾患で亡くなってしまう労災事故では、労働基準監督署から調査を受けます。その際に産業医を選任しているか、衛生管理者を選任しているか聴収・調査され、選任・届出をしていないと是正勧告を受けることになります。

そうならないために、今のうちから労働安全衛生法が求めている産業医の選任、衛生管理者の選任、届出がされているかチェックしてみてください。

産業医の選任

産業医とは

産業医とは労働者が快適な職場環境のもとで業務が行えるよう、医学的・専門的な立場から助言・指導を行う医師のことをいいます。

産業医になるためには、医師(必須)のうち(1)~(5)の要件のいずれかを満たしている必要があります。

(1)厚生労働大臣の指定者(日本医師会、産業医科大学)が行う労働者の健康管理等を行うために必要な医学知識についての研修を修了した者
(2)産業医の養成等を目的とする医学の正規課程を設置する産業医科大学その他の大学を卒業し、その大学が行う実習を履修した者
(3)労働衛生コンサルタント試験の合格者で、試験区分が保健衛生である者
(4)大学において労働衛生関係科目を担当する教授、准教授、講師(常時勤務)またはこれらの経験者
(5)その他厚生労働大臣が定める者

産業医の業務・役割

産業医の業務は、多岐にわたります。

(1)健康診断の実施
(2)労働者の健康管理・健康教育・健康相談
(3)労働者の健康障害の原因調査
(4)労働者の健康障害の再発防止対策の策定
(5)少なくとも毎月1回職場・作業所の巡回

※2017年改正で事業者の同意と所定の情報提供(時間外労働が月当たり80時間を超えた労働者の氏名及びその超えた時間に関する情報など)がある場合には、職場巡回が少なくとも2か月に1回以上に変更することが可能になっています。

(6)事業主に対して労働者の健康管理について必要な勧告

※必要な勧告を理由として、解任その他不利益な取り扱いをしていけません。
※事業主は必要な勧告を受けた場合、産業医の意見を尊重しないといけません。

産業医は必ず雇わないといけないのか?罰則は?

常時50人以上の従業員を使用する事業所は、産業医を1人以上選任する必要が発生します。産業医の契約形態としては一般的に雇用契約もしくは業務委託契約の2つの形態が考えられます。ですので、産業医は必ず雇用契約しなければならないわけではなく業務委託契約でも構いません。選任義務が生じる事業所は、産業医を見つけて会社の必要性や状況、そして産業医側の希望などを配慮しながら契約形態を決めるべきでしょう。

産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならず、選任したときは遅滞なく選任報告書を所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。産業医の選任・職務義務違反をした者には50万円以下の罰金に処せられることがあります。

【選任と報告】

産業医は何人必要?

常時50人以上の従業員を使用する事業所は、産業医を1人以上選任する必要があります。①常時1,000人以上の労働者を使用する事業所、②一定の有害業務(高熱物体取り扱う業務、放射線にさらされる業務)に常時500人以上の労働者を使用する事業所は、専属の産業医を選任する必要があります。

常時3,000人を超える労働者を使用する事業所になると、2人以上の産業医の選任が必要になります。なお、2人以上の産業医を必要とする事業所は、2人以上のうち1人が専属の産業医でなければなりません。

【産業医の選任数と専属が必要とされる事業所】

衛生委員会の設置と衛生管理者の役割

衛生委員会とは

衛生委員会とは以下3点について調査審議する委員会です。

(1)労働者の健康障害の防止
(2)健康の保持増進
(3)労働災害の原因および再発防止策(ただし、衛生面に関わるもののみ)

衛生委員会は、業種は問わず全業種、常時50人以上を使用する事業所には設置義務があります。

衛生委員会の構成メンバーは?

衛生委員会の構成メンバーは、以下のメンバーで構成されます。

(1)総括安全衛生管理者または総括安全衛生管理者以外の者で事業所において、事業の実施を統括管理する者もしくはこれに準ずる者(議長):1名
(2)衛生管理者:1名以上
(3)産業医:1名以上
(4)事業所の労働者で衛生に関し経験を有する者:1名以上

ただし、これでは会社側だけの意見しか調査審議されませんので、労働者側から(1)~(4)以外のメンバー以外に委員が選出されます。

労働組合があれば労働組合から、労働組合がなければ労働者の過半数の推薦による指名を受けた者が衛生委員会に委員として出席します。

【衛生委員会の構成】

衛生管理者とは

メンバーを構成する、衛生管理者はどのような条件で選任できるのでしょうか。

衛生管理者とは、事業所の衛生面についての技術的事項を管理するスペシャリスト・専門家。衛生管理者は国家資格であり、資格を有する者しかなれません。

選任条件は以下の通りです。

(1)衛生工学衛生管理者免許
(2)第一種衛生管理者免許
(3)第二種衛生管理者免許
(4)医師・歯科医師
(5)労働衛生コンサルタント
(6)その他厚生労働大臣が指定する者

特に、(2)第一種衛生管理者免許、(3)第二種衛生管理者免許は国家資格であり、実務経験が1年以上あれば受験できるため、積極的に資格取得させている企業もあります。

衛生管理者の業務・役割

衛生管理者は、衛生面全般の技術的事項を管理します。少なくとも毎週1回事業所等を巡回し、施設設備、作業方法、衛生状態に有害の恐れがある場合には、労働者の健康障害を防止するために必要な措置を行わなければなりません。

衛生管理者は必ず選任しないといけないのか?罰則は?

衛生管理者の選任は、衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければいけません。衛生管理者を選任すべき事由が発生しているにも関わらず、選任していない場合、選任して必要な権限を与えない場合は50万円以下の罰金に処せられる場合がありますので注意しましょう。

【選任と報告】

衛生管理者は何人必要?

衛生管理者は、業種を問わず全業種、常時50人以上の労働者を使用する事業所に選任義務があります。また、常時使用する労働者数に応じて、選任しなければならない衛生管理者の人数が決まります。労働者数と衛生管理者の選任数は下記のとおりです。

【衛生管理者の選任数】

職場での労働者の健康管理を正しく効率的に行うために、産業医の選任、衛生管理者の選任、届出について改めて確認してみてください。

【画像】
saki / PIXTA(ピクスタ)