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【中小企業経営の弱点】後継者・幹部候補の見つけ方・育て方!今すぐ着手できる方法

2021.08.12

人事コンサルタントとして複数の商工会議所の専門相談員を担当する、『株式会社NCコンサルティング』代表取締役社長の大橋高広先生を講師に迎え、幹部社員の育成に関する特別ウェビナー(Webセミナー)“【中小企業経営の弱点】後継者・経営幹部候補は早いうちから育てる!今すぐ着手できる幹部社員の見つけ方・育て方”を開催しました。

資料DL&動画視聴はこちらから

継続的な事業の運営と、コロナ禍での業績アップに必要不可欠な“人材を育てる”という面で、特に重要な“幹部社員育成”。中小企業で多く抱えている、“幹部社員が育っていない”という問題について、大橋先生が具体的な課題や幹部候補を育成するための方法、注意点についても解説しました。本記事では、ウェビナーの中でご紹介した幹部候補の育て方について一部抜粋してご紹介します。

大橋高広(おおはしたかひろ)
株式会社NCコンサルティング代表取締役社長。
人事評価制度、管理職育成、職場改善の専門家。
同志社大学を卒業後、大手通信系企業での飛び込み営業を経て、経済団体に入職し中小企業の経営支援に従事。その後、中堅製造業で総務経理を担当する傍ら、父から息子への事業承継を推進し、独立。
開業から約5年間で70社以上のクライアント企業のスタッフへ直接面談を実施し、ヒアリングしたスタッフの総数は1,200名以上を超える職場の問題に精通した人事のプロ。「中小企業が元気になれば、日本が元気になる」を信条に、コンサルティング・研修・セミナー・講演を全国各地で行なっている。

中小企業で幹部社員が育たない理由

経済産業省が行った調査でも出ている通り、会社が抱えている経営課題として最も多いのが、“人材の確保、定着、育成”。

会社を経営する上で、人材以外の課題があっても結局それを解決するのは従業員である場合がほとんどです。人材の確保はもちろんのこと、育成して定着させることが非常に大事になってきます。

では、どのくらいの中小企業が実際に幹部人材の育成を行っているのでしょうか。同調査によると、経営人材育成の取組については、“特段の人材育成は行っていない”の回答が58.6%で半数以上を占めました。年間でかける経営人材のための年間育成費用や日数についても“特に目安はない”、“特に費用をかけない”という回答が多く、幹部人材の育成にリソースを割かない経営者の割合が大きいことが見受けられます。中小企業は少数精鋭で業務に取り組んでいるため、人材育成に割く時間がとれず、基本的に育てる時間がないのでしょう。

このことからわかるのが、幹部社員が育たないのは“やっていないから育っていない”ということ。裏を返せば、“やれば変わる可能性が高い”という期待もあります。

大橋先生の経験上、実際にコンサルティングで研修をやると非常に効果が出てくるケースが多いとのこと。もう少しお金や時間をかけて継続することで効果が出やすくなるのではないでしょうか?

なお、製造業などで、定年退職者などを指導人材として再雇用する例もあります。これについて大橋先生は「これで育成が整ったケースはほとんど見たことがない」とのこと。

そもそも定年という期限までに後継者の育成をせずに辞めた従業員に指導者としての適性があるのでしょうか? ベテランの従業員なので結果的に実務に終始してしまうことになるケースも多いです。幹部人材の育成に力を入れる際は、指導する人材と実務を遂行する人材は違うということは念頭に置いたほうがよいでしょう。

早いうちから幹部社員を育てるポイント

中小企業で幹部候補が育たないのは、単純に人材育成を行っていないからということをご紹介しました。つまり、早いうちから幹部社員を育成することによって、幹部候補になる社員がいないという問題も回避できます。大橋先生は幹部社員育成の際に意識するポイントとして次の3つを紹介しています。

(1)計画性を持って着実に幹部社員を育成する

中小企業での幹部社員育成の問題点には下記のようなものが挙げられます。
・現場のOJT*任せ
・外部研修を受講させて感想文を書かせるだけ
・そもそも育成計画やプログラムがない

現場のOJT任せだと、進捗がバラバラになって部下のセンスや才能によるところが大きくなります。細かな指導ができる上司なら問題ないですが、「目で見て盗め」的な職人気質の上司の場合、育成の進捗がバラバラになるため、きちんと計画性をもたせることが重要となります。

まずは育成プログラムを作り、OJTもプログラム化。可能であれば、社長や役員が進捗を確認することがオススメです。

(2)幹部候補者に自覚を持たせる

中小企業における幹部育成の重要課題には下記のようなものが挙げられます。
・退職されると教育投資(費用・時間)がムダになる
・目をかけてきた社員が幹部になりたいとは限らない
・いきなり抜擢すると社内で反発が出やすい

中小企業における人材育成は費用と時間に制限があるので、教育投資をムダにしないことが重要。早いうちから幹部候補者の育成を行うことで、幹部候補者に自覚を持たせます。

(3)事業承継の課題を早めに解決する

中小企業では、下記のような事業承継の課題があることが多いです。
・親族以外には話せないこと、任せにくいことがある
・親族が承継するまでの中継ぎ役がいない
・会社のポテンシャルが高くないと後を継ぎたがらない

幹部社員を育てていれば、上記のような事業継承課題があっても早めに対処することができます。大企業のようにサラリーマン社長は中小企業では通じないので、候補者に自覚をもって着実に成長してもらうことがとても重要になってきます。

* OJT…On the Job Traininng

勝手に育つ社員は幹部に向かない場合も

OJTを行う中で、一部勝手に育つ能力の高い社員がいます。短期的には非常に良いことに感じますが、大橋先生は「実際に現場で見ていると、実力があっても幹部に向くとは限らない」と警鐘を鳴らします。

実力はあっても幹部には向かない可能性が高い社員の特徴には下記のようなものが挙げられます。
・協調性(チームワーク)が低いケースが多い
・独立、転職するケースが多い
・オーバースペックなので不満分子になりやすい

もともとの人材のレベルも大事ですが、それよりも会社が育てるということが重要。そうすることで会社に愛着を持ち、会社に定着する芯を作っていくことが重要です。

幹部社員の見つけ方

では、どのような人材が幹部候補に適切なのでしょうか? 大橋先生は次のような3つのポイントを挙げています。

(1)社長が相談したいと思える

社長が相談したい思える人材の特徴としては次のようなものが挙げられます。
・愛社長精神がある
・経営や数字に強い
・会社側に立てる(スタッフに同調するばかりではない)

幹部社員に大切なのは“愛社”精神ではなく、“愛社長”精神。社長が好きという人材は幹部として、とても強い力を発揮してくれる、と大橋先生。

幹部となって会社を動かしていく立場になると、中小企業の場合、少数で顔が見えるため、妬みなどを受ける場合があります。その際に、めげずに頑張れるのは、社長のことが好きという気持ちを持った人材。“社長に惚れてこの会社にいる”といった力が非常に強いモチベーションとなるのを、特に人事制度改革を行うときに感じると言います。

なお、経営サイドとして必要な“経営や数字に強い”人材にするには、研修を行えば問題ありません。また、能力があっても、会社側に立って話をできない人材は経営陣、幹部として選定できない、というところもポイントです。

(2)現場のスタッフと話ができる

以下のようなことを意識しながら現場のスタッフと話しができるということも重要となります。
・社長のイエスマンではない
・公私を峻別している(プライベートを持ち込まない)
・言行が一致している(会社の不満を言わない)

社長のイエスマンとして現場で認定されている人には、現場の本音の声は届いてきません。会社や社長が好きということは大切ですが、忖度しているイメージが定着してしまうと幹部には難しくなります。

また、よく飲みに行くメンバーなど、プライベートの共有時間が長いスタッフ同士でグループができてしまうと、派閥を作ってしまうケースがあります。職場の雰囲気もよくなくなるため、きちんと社員同士の距離感がとれる人かどうかの見極めが大事です。

(3)ありのままの報告ができる

下記のような基本的な報連相ができるということがとても重要になってきます。
・社外の問題を報告できるか
・部下や職場の問題を報告できるか
・自分の問題を報告できるか

実は自身のポジションを守るため報連相ができないでいる社員も多いのが中小企業でよくある現状です。幹部社員こそ報連相の遂行は必須であり、ありのままの報告ができる人材を幹部候補に立てる必要があります。

幹部の外部採用をオススメしない理由

社内で幹部が育っていない場合、「外部採用したい」という相談を受けることも多いと言う大橋先生。しかし、「できることなら、やめてください、というのが私の結論」と断言。「大企業などでは問題ないが、これは中小企業の特徴だと思う」と述べます。

なぜなら、外部採用の幹部社員には下記のようなケースが多く、社内で求心力を欠いて機能しない可能性が高いためです。
・現場のスタッフに統制が効かない
・他の管理職と連携できない
・万が一、合わない場合に配置換えしにくい

中小企業では、現場の仕事ができる人が認められて上司になり、「あの人だから言うことを聞く」という場合がほとんど。そうでないと人心を掌握しずらいケースが多いそうです。そのステップを踏んでいない人には、他の管理職の従業員が非協力的になる可能性も高く、そうなると現場のスタッフの統制が効かないといった問題が起こります。

スタッフが協力的ではない、他の管理職とも連携しづらいケースになった場合、配置換えなども難しい状況が生じます。そのため、中小企業では幹部の外部採用はあまり向きません。やはり現場からの叩き上げで育成・定着させた幹部を目指していくことが一番王道な正攻法になります。

社長なしでも会社がまわる幹部社員の育て方

最後に、大橋先生に幹部候補の人材を見つけた後の育て方を紹介してもらいました。

(1)OJT

実際に下記のようなことを任せることで成長を加速させることが重要になってきます。
・社長との営業同行(取引先・経済団体など)
・ジョブローテション(計画的な配置換え)
・経営会議のファシリテート(会議の進行役)

中小企業の幹部人材の育成と選定には勘も大事。勘を鋭くするために実際にやらせてみることが重要で、社長と同行営業やジョブローテションをさせてみると、各社員の特性や適性が見えてきます。

幹部となりマネジメントしていくためには、仮に実務ができなくても、人心掌握するために全部門に精通していないとスタッフを動かせません。大企業では必ず行っているジョブローテションは中小企業の幹部社員育成にも必要なことといえます。

(2)OffJT(Off The Job Training)

下記のように重要情報に触れることで成長を加速させることも有効です。
・会社の情報を開示する(財務を含む)
・社長による勉強会の実施(1on1がおすすめ)
・外部の勉強会に参加(会社の常識以外のインプット)

経営サイドに入ることになると、現場にある情報だけでは不十分。開示できる範囲は限られるかもしれませんが、幹部社員と覚書など秘密保持の契約を結び、会社の情報を開示していきましょう。

可能であれば、社長と1対1で勉強会を行い、考え方も話してもらうことがオススメ。考え方のベクトルが合うかはとても大切です。合わなかった場合も、“幹部としては違った”という意味で幹部候補の適性がないということに早めに気づくことができます。

また、社内で育成することがベースになると視野が狭くなってしまうため、外部の勉強会に参加させましょう。その外部の勉強会も中小企業の幹部社員が集まる研修会を選ぶと、幹部社員が外部の悩みを知り、その課題を社内で共有することができます。

(3)権限委譲

下記のような決裁権を与えることも、幹部候補の成長につながるでしょう。
・一事業をまるごと運営させる
・社長の権限(とくに人事権)を少しずつ委譲する
・会社の経営計画の策定を任せる

中小企業で幹部社員が成長しにくいのは、社長が現役の状態であり、権限を与えてもらえないからという場合も多いです。権限を委譲することによって、実際の事業をイメージさせることが重要になります。

ウェビナーで頂いた質問&回答のご紹介

(Q1)外部から管理職採用するメリット/デメリットとうまくいくために必要なこと

中小企業・中堅企業において、外部から管理職を採用するメリットは特にありません。
「マネジメントを理解した者が管理職に就いてくれる」というのが最大のメリットと考えますが、セミナーでお伝えしたようにデメリットの方が圧倒的に大きいといえます。

また、管理職の外部採用がうまくいくために必要なことは、一般的に
・一定期間、現場仕事を経験させる
・定期的に部署を異動させて、多くの社員と信頼関係を構築する
・(精神論ではあるが)誰よりも早く出社するなど苦労している姿をまわりに見せる
というようなものがありますが、うまく機能しているケースを見かけることは大変少ないのが実情です。

また、上記のような施策を実施すると、当該本人の意図する内容とかけ離れてしまい、辞めてしまうというケースも散見されます。

(Q2)管理職適性があるか見極める前の幹部候補扱いは良いのか

幹部候補扱いすることで、本人やまわりに影響があるというご指摘については、まさにその通りといえます。

しかし、幹部候補としての育成期間を十分に置くことで、社内に浸透してくることがほとんどです。(ご本人の成長が伴わない場合は、違う処遇をする必要はありますが)

いずれにしても、いきなり幹部を任命するケースよりも、まわりへの影響が緩和されることは間違いありません。

なお、複数名を幹部候補に選定し、一定の育成期間を経たのちに適性を判断し、幹部に任命するというような方法をとると、特定の1人に意識が集中することがなく、まわりへの影響が緩和されることが期待できます。

(Q3)社内ゴトを報連相できているかが幹部候補の基準とあったが、しっかりできているかの見極め方が知りたいです。

社内で報連相が機能しているかどうかを確認する方法としては、一般的に下記のようなものが挙げられます。
・クラウドシステムで情報共有する
・日報を提出させる
・面談シートを提出させる
・社員のエンゲージメントを測定するサーベイを活用する

しかし、上記のような方法を用いても、現場の実態を知ることはできません。
なぜなら、社員本人にとって不都合な事実は、表現されないからです。
このことから、ご質問いただきながら大変恐縮ではございますが、自社で報連相ができているかどうかを判別することは極めて困難といえます。

そのため、弊社では、コンサルタントによる1対1での面談を実施して、部署別・階層別にスタッフからいただいた情報を照合し確認しています。なお、これらの情報は、人事制度の設計や各種研修などに活用しております。

(Q4)幹部候補が内向きで見方が狭い。一方で、まったく外部に出ていこうとしないですが、どうしたらよいですか?

質問者様は、現場との信頼関係を構築され、うまくポジションを確立することができているということを前提に回答させていただきます。
質問者様がうまくいった施策を次の幹部候補者が取り組んでくれないということに問題があるとするなら、これは幹部候補としては機能しないということになります。
ですので、下記のような施策を検討する必要があるでしょう。
・なぜ幹部候補で採用されたのに、現場に出なければならないのかという意義を理解させる
・評価基準に組み込む(採用条件が幹部になることであるため施策に取り組む義務がある)
・目標管理制度に組み込む(同上)
・1on1ミーティングを定期的に実施しフォローする(キャリアチェンジを含む)

なお、こちらは採用時の問題になってしまうのですが、そもそも中小企業・中堅企業における幹部としての適性を持っていなかったケースも想定されますので、こういった場合は率直に会社と話し合われることをおすすめいたします。
(対象者がマネジメントの適性を有していない場合、OJTを実施しても大きくは成長しない可能性があります。)

今回のウェビナーでは、大橋高広先生を講師に迎え、後継者・経営幹部候補を早いうちから育てるメリットや、今すぐ着手できる幹部社員の見つけ方・育て方についてお話ししていただきました。

今すぐ着手できる幹部社員の育成のポイントをわかりやすくまとめた今回のウェビナーの資料と動画は、以下リンクからダウンロード可能です。ぜひご覧ください。
【参考】
平成29年度中小企業の経営人材の育成に関する調査』 / 経済産業省
令和元年能力開発基本調査』 / 厚生労働省

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