志をもって会社を経営しているからこそ悩みが尽きない経営者ですが、壁にぶつかったとき、他の経営者はどうしているんだろうと思ったことはありませんか?
『経営ノウハウの泉』社長対談型のセミナーは、パシフィック・コミュニケーションズ株式会社代表取締役社長・相川裕彦氏が、異なる会社で活躍する経営者の“考え”や”失敗”を深堀。中小企業経営者の方の悩みがちなテーマについて、自社に活かせる解決方法のヒントをお届けします。
第1回のテーマは“組織における社員教育”。学び続ける組織づくりを実現するための動画学習プラットフォームを提供するTATEITO株式会社代表取締役CEO・平野考宏氏をお迎えして、お話を伺いました。
社員教育まで手が回らない中小企業では、新しい人材が入るたびに同じ説明を繰り返さなければならない、担当者が退職後に業務が滞るということも。そんな課題を抱えている方はぜひ参考にしてみてください。
登壇者プロフィール
ゲスト:平野考宏(ひらのたかひろ)
TATEITO株式会社代表取締役CEO
新卒で人材アセスメントを行う日本エス・エイチ・エル株式会社へ入社し、客観的な人材評価手法について学ぶ。2005年にインターネット広告代理店の株式会社オプトへ転職。SEM部本部長として最大120名のマネジメントを経験し、2008年にはリスティング広告売上高で1位も達成。2009年にオプト100%子会社として株式会社サーチライフを設立し、同社取締役に就任。2012年にTATEITO株式会社を設立し、代表取締役CEOに就任。
マーケティングに特化した教育サービスを展開後、現在は組織内動画配信プラットフォーム”RUUUN”を中心に、組織の”動画を活用した伝える仕組みづくり”に取り組む。ファシリテーター:相川裕彦(あいかわやすひこ)
パシフィック・コミュニケーションズ株式会社代表取締役社長
大阪芸術大学卒業。複数の大手広告会社において、営業から各種プランニング(クリエイティブ・デジタルプロモーション含む)、新規開発業務、チームマネジメントに至るまで、幅広い業務を経験。2020年5月コロナ禍の中INCLUSIVEグループへ参画。
そもそも中小企業は社員研修が必要か?
相川:中小企業では少数精鋭の体制であることが多いです。そのため、教育を充実させることが経営判断として難しいという悩みから、まず「そもそも社員研修は必要か?」という悩みもあります。さまざまな企業の社員研修を整える経験をしてきた平野さんは、この点をどのように考えていますか?
平野:知識を学ぶための研修もあれば、ワークショップのようなスキルを学ぶための研修もあります。なので、「研修自体が必要か?」と聞かれたら、それは「目的や状況によります」とお伝えしています。
例えば、当社が社員研修を支援した200名規模のとある中小企業では、きちんとした社員研修をやっておらず、OJT(on the job training)で対応していました。しかし、成長して規模が大きくなるにつれて、社員が入社するたびに、同じ話をしなくてはならないことに限界を感じ、当社に相談をいただきました。新卒社員の場合は入社時期にまとまった数の社員に新人研修をすればよいですが、中途社員は入社時期がバラバラなのでその都度対応することが多いです。即戦力を求めて中途社員を採用することが多い中小企業には、実はこういったケースが多くあります。
また、中途入社の場合、研修に頼らず、業務の進め方などの情報を自分で集める力を育ててもらうという考え方もあると思います。ただ、中途社員でも若年層になると、自分で動くことがアクティブにできない人たちが増えている。インターンなどで当社に入ってくる20代くらいのいわゆるZ世代は、生まれた頃からGoogleなどがずっと身近にあり、聞けば(調べれば)簡単に情報が手に入れられる環境が当たり前になっています。
そのため、業務を進めるうえで疑問点が出てくると、すぐに「このやり方ってどこにありますか?」と聞いてくる。このように、聞けば明確な答えが返ってくることを当たり前に感じている人たちが存在しているし、これから増えていくと思います。そして、その人たちが何かを教えてほしいと個別に聞いてくるようになると、社員数が多くなるにつれ対応が難しくなるという問題が起きます。こういった状況になると、やはり研修は必要になってくるのではないでしょうか?
社員研修に動画は活用できるのか?
キレイに整えられた動画ではなく、雑談しているような動画でいい
相川:実は私の会社もZ世代ばかり。しかも少人数なので、教育のために人員を割くことは本当に難しい。自動化して省力しながらも後進の教育ができる術を探っているところです。Z世代でいうと、彼らは動画視聴や検索を能動的にすることはできる世代だと思います。平野さんの会社では動画学習プラットフォームを提供していますが、社員研修の課題については、やはり動画を用いるということが解決策になるのでしょうか?
平野:全ておいて最善ではないですが、解決策の一つとして動画を用いることは有効だと思います。僕自身でいうと、コロナ禍の影響もあり動画を撮影する機会は増えていて、社内社外を問わず活用しており、去年は100本ほど作成していました。例えば、インターン生などに意外によく聞かれることで、“社名の由来”について紹介した動画もあります。
キレイに整えられた動画ではなく、雑談しているような動画でいいんです。今、相川さんとお話ししている感じで撮るときもあれば、1人でYouTuberのように話したりも。「はい、みなさん、こんにちは。今日は“TATEITO”の社名の由来について5分でお話しします!」といった感じです(笑)
相川:なるほど。かしこまった感じではなくてもいいということですね。構成などは多少雑でも、どんどん合間の時間でお話されたことを動画にして、「暇があったら観ておいてください」という形式にしているんですね。
平野:はい、スライドを作ったとしても、一枚に一行だけだったり、写真だけだったりがほとんどです。
「ながら見」でもOK!ただし、きちんと見てほしい場合は動画で終わらせない
相川:動画を活用するというと、きちんとパワーポイントなどで作った資料を使って、プレゼンテーションのような動画を取らなきゃいけない、という概念がありました。でも、そうではなく、もっと気軽な形であれば、取り入れやすいですね。
平野:僕がコロナ禍に入って動画活用で一番変わったと思うことが、“動画の雑化”。これってメディアの世界とかでも起こっていると思うんです。昔だったら撮影環境をもっとこだわっていたものを、今は「リモートでちょっと音が聞こえづらいですね」みたいな状況の動画も上がっている。そういうことが当たり前になってきている。そういう意味では“映像に期待するハードルがとても下がっている”と思います。
Zoomなどで会話しているだけの簡単な動画でも、アクセスしやすい場所に置いておけば、興味がある人は見るんです。
そこで見ておいてもらうと、インターンの子とかと会話したときに、「平野さん、会社の歴史についての動画を見たんですけど、あれヤバイですね」みたいなことを言ってくるんです。ラジオ感覚で見てくれています。僕からも、“ながら見”でいいよと言っています。
ただ、どうしてもしっかり見ておいてほしい動画がある場合もあります。そんな時は、動画だけで終わらせないようにしています。動画のあとにテストを実施したり、動画のあとにディスカッションするためのミーティングや研修を組んだりしています。
年齢層が高めの社員は?動画活用の世代間のギャップ
相川:会社のいろはを学べるといった意味では、若者にとっては動画を取り入れることはとてもいいなと思いました。ベンチャーではない歴史のある会社さんだと、年齢層が高めの方も中途採用で多く入ってきますが、その場合はどうなのでしょう? あまり年齢の隔たりはないのですか?
平野:いや、世代間のギャップは本当にあります。動画は年代によって受け入れられ方が違います。それは僕らの会社でも起こっていることですが、社内の新人の前任の上司が、僕より年上の方で、紙で全部マニュアルを作っていたんです。
紙ですごくしっかりわかりやすくまとまっているんですけど、新人は「これ動画のマニュアルないんですか?」と言ってくるんです。動画のほうがその場で何をやっているのか見えるし分かりやすいと。今の若い世代はこれまで受験勉強も動画である程度やってきていたりだとか、もう動画で学ぶことが当たり前になっているんです。
ただ、これは僕自身の話でもあるんですが、正直、動画のインプットはコロナ禍前までほとんどしていませんでした。僕も以前は本などでインプットしていましたが、そういう意味では、食わず嫌いだったな、という感覚はあります。
相川:では、ある程度は会社として働きかけも大事ということですね。テキストだったり、これまでのような学習の仕方を変えて動画にしていく、という意思も大事ですね。
平野:どちらに合わせるかはすごく難しい話かなと思います。そういう意味ではテキストがないと伝わらない会社も事実あると思います。今、我々が関わっている中小企業で製造業の会社もあるのですが、そこは年齢層が高めなんです。ただ、その会社も2年前から動画を導入して活用されていて、本当に割り切って、新人さん向けと言っています。
相川:テキストが必要な領域と、動画を活用できる領域を仕分けて、線引きすることもできそうですね。
平野:その社長さんが導入のときに、「今は動画はそこまで必要じゃない。ただ、だんだん動画の割合が増えてくるのは間違いない。だから、今からやっておかないと、僕らもそんなにすぐに適応できない。若手から動画活用をどんどん広げていくということを今からやらないと間に合わなくなる」と言っていました。
相川:これから動画の活用が増えていくことを見込んで、いざ必要となった時に出遅れないように、早めに導入して社員に慣れてもらうという考え方も必要ですね。
セミナー参加者の方からのご質問
対談の最後に、セミナーの参加者の方から寄せられたご質問に対しても、平野氏にお答えいただきました。
Q:動画はライトに視聴できる反面、動画自体の尺の問題がある。知りたい、調べたい部分をサッと見つけにくいのでは?
平野:対処法としては、見つけやすくするために「何十秒でこれがわかる」のように、動画をちゃんとチャプター分けをしてあげる。
ただ、動画のデメリットは読む順番とペースをコントロールしにくいところがある。倍速にはできたとしても、調整がしにくい。テキストでよいと感じている面は、テキストは自分のペースで読めるところ。僕の場合だと、集中力があるときは本でインプットして、疲れている夜などは動画でラジオ代わり流してインプットしています。
そういう意味では、
Q:動画は編集に時間がかかるのでは?
相川:さきほども話しましたが、これはきちんと編集した動画ではなくて、撮りっぱなしの編集しない動画を作ることで解決しますか?
平野:編集しないでバンバン上げている会社も本当にたくさん増えています。あと、僕らのサービスでは動画を撮ったデータだけ送ってもらえれば、1万円で見やすく映像補正や分割をして、全部チャプター割などもします。最低限の編集として、お客さんでは大変なところを対応しています。
そういったサービスを活用したり、YouTuber形式のように、普段話しているような感じでまとめられるものは出してしまうのがいいと思います。
相川:かしこまった動画を作らなければいけないと思いこんでいましたが、暇があったら対話しているような内容をどんどん上げて伝えていくことが見ている側にも構えさせない。そういうやり方があることが気づきになりました。成長支援としての動画活用を経営者として大切に考えないといけないと改めて思いました。
本記事は実際のウェビナーの内容を元に作成しています。記事に掲載しきれなかった内容も、今回のウェビナー動画で確認できます。以下リンクから動画閲覧可能ですので、ぜひご活用ください。
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