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能率低下し昇給停止に、出産理由の不利益扱いか

「労働新聞」「安全スタッフ」(2009年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 出産・産休を経て、復職した従業員がいます。その後、誰がみても明らかに労働能率が低下し、課内でも問題となっています。来年の昇給は難しいという状況ですが、均等法の「不利益取扱い」に該当しないか、心配です。裁判でも、昇給の停止は違法という判断が下されたと聞きます。出産という事実がある以上、昇給を認めないといけないのでしょうか。

福島・G社

[ お答え ]

 まず、裁判について触れましょう。有名なのは日本シェーリング事件(最判平元・12・14)ですが、これは昇給の要件である出勤率の算定上、産前産後休暇期間を欠勤として扱った事件です。産休取得という法律で認められた権利の行使を抑制するので、公序良俗違反になると判示しています。
 しかし、お尋ねのケースは、休んだことではなく、労働能力の低下を問題としているのですから、同列に論じることはできません。
 均等法第9条では、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いを禁止しています。
 不利益取扱いの具体例は、「性別を理由とする差別の禁止等に関する指針」(平18厚生労働省告示第614号)に示されていますが、そのなかに「減給をし、または賞与等において不利益な算定を行うこと」が挙げられています。
 しかし、「減給、賞与のマイナス査定が一切許されない」という意味ではありません。
 「同程度労働能率が低下した疾病等と比較して、妊娠・出産等による労働能率の低下について不利に取り扱うこと」、「現に妊娠・出産などにより労働能率が低下した割合を超えて、労働能率が低下したものとして取り扱うこと」は禁止されるという趣旨です。
 お尋ねのケースでは、そもそも出産で気が抜け、労働意欲が低下し、それに伴い能率も低下したという側面も否めません。出産後の回復不全や育児に伴う負担増による労働能率低下とは事情が異なります。しかし、両者を明確に区別するのも難しいでしょう。
 それはともかく、「出産すれば必ず労働能率が低下する」といった予断をもって、昇給をストップさせるのではなく、労働能力の低下を淡々と、公正に評価し、他の傷病者などの扱いともバランスを保ちつつ、昇給額を減じることは可能です。
 貴社で、能力対応部分と生活保障部分の2本立ての賃金体系をとっておられるとしましょう。この場合、能力対応部分の賃金項目について、評価基準などに基づき公正に評価し、賃金テーブルに当てはめ、昇給額を決定すれば、たとえ、ご本人の過去の昇給額を大きく下回る結果となっても違法ではありません。
 均等法の規制は、出産したという事実のみをもって、自動的な昇給を義務付けるものではありません。



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