労働実務事例
[ 質問 ]
定年に達する従業員に再雇用後の労働条件を説明していますが、賃金が大幅に下がる点に相当不満があるようです。「標準報酬月額が下がると生涯平均の標準報酬額も低下してしまうから、受取年金額に悪い影響が出るのではないか」と心配しています。加入期間が増えた結果、年金計算で不利益を被るようなことが、本当にあるのでしょうか。
神奈川・S社
[ お答え ]
年金の決定要素のうち、最も重要な意味を持つのが、在職時の給与・賞与額(標準報酬月額・賞与額と連動)と加入期間です。
一般には、勤続が長くなるほど給与・賞与額も高くなるので、将来受け取る年金額も加速度的に増えていきます。
しかし、嘱託再雇用されると、給与・賞与額が大幅にダウンするのが一般的です。
加入期間は長くなるけれど、平均としての標準報酬額は少なくなっていきます。後者の影響が前者より大きくなれば、年金額はダウンするという結論になります。
実際に、そういうケースがあり得るのでしょうか。年金額の計算にはさまざまな経過措置が設けられていますし、物価スライド・改定率・従前額改定率等の数値も使われます。しかし、骨組みとなる算式は次のとおりです。
平成15年3月以前の平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月以前の被保険者月数+平成15年4月以降の平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者月数
昭和21年4月2日以降に生まれた人は、7.125/1000、5.481/1000の部分の係数は生年月日に関係なく固定されています。
算式の後半、「平成15年4月以降の平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者月数」の部分だけを取り出して、ご説明しましょう。
平均標準報酬額は、被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の合計を被保険者期間の月数で割って得た額をいいます。
ですから、上記式を書き換えると、次のとおりとなります。
(被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の合計)÷被保険者月数×5.481/1000×被保険者月数
被保険者月数で割って、また被保険者月数をかけるのですから、結局、次のとおりとなります。
(被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の合計)×5.481/1000
嘱託再雇用され、標準報酬月額・賞与額が大幅に下がっても、「被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の合計」は、毎月、少しずつ増えていきます。ですから、原則的にいって、年金は増えこそすれ減ることはありません。
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