労働実務事例
[ 質問 ]
会社で安全衛生担当をしています。そのため自社だけでなく、広く労使の安全衛生運動に関心を持っていますが、最近聞いたところによりますと、安全衛生運動の型(タイプ)として、参加型あるいは法規(または法令)準拠型の2つの大きな流れがあるということを聞きました。耳新しいことなので、それについて説明し、その長短についても分かる範囲でよいですから説明してください。
茨城・L社
[ お答え ]
これは安全衛生運動について、単に経営者側の指揮命令によるだけの消極的なものでなく、労働者側も積極的に安全衛生運動に参加していこうというものです。このような考え方は単に安全衛生運動に限られるわけではなく、生産性の向上運動でも、それよりもっと広い意味の社会活動にも強調されることがよくあります。
このような考え方により、安全衛生についての企業活動が非常に活発になった例もあるようです。企業や役所が主となって行う安全衛生活動は、ややもすると労働者側の活動に積極性が認められないことがあったりして、それにはこの参加型の安全衛生活動は大きな刺激になるかもしれません。
これに反して、法規準拠型というのは、運動の基本が法規の遵守にあるといってもよいでしょう。これは労働安全衛生法をはじめとする各種の安全衛生法規を労使が遵守することが重視されます。したがって参加型とは違って、法令の重要さが格段に違います。これは一般的には後進国に多いのかもしれません。
法規準拠型
安全衛生運動は、労働安全衛生法規を重視するということは、それなりに意味があり、労働者の安全衛生運動としても十分意味があると思います。というのは、労働組合の組織すら認められていない労働組合にとってです。もちろんスト権などはありません。非現業の公務員はそうでしょう。
ぼう大な人数の教育公務員などはその最たるものでしょう。最後に命と健康を罰則付きで保障してくれるのは労働安全衛生法規があるのみです。したがって、これらの人びとについては法規準拠主義も意味があります。
では、それらの公務員以外の民間労働者にとっては法規準拠型は必要ないでしょうか。団結権もスト権も労働組合法で保障されています。したがって、団結して、会社の安全衛生管理に参加し、もし、要求がとおらなければストをすればよいでしょうか。
しかし、現実に特に中小零細企業の労働者にとっては夢のようなことです。やはり最後にすがるところは法規ではないでしょうか。ここでは、実際には法規準拠型に頼らざるを得ません。そこで、参加型と法規準拠型の関係をどう考えたらよいでしょうか。
参加型と法規準拠型
これを仏教にたとえると、参加型で行ける人は禅で自分を救済できる人に似ていると考えます。自力で生きていける人なのです。
しかし、法規準拠型の人は、お経というものにすがって生きていく人です。他力にすがるといってもよいかもしれません。
以上の他力と自力とはたいへん違うようにも見えますが、案外、自分で座禅を組んで考えたことも、その内容はお経に書いてあることと同じであるかもしれません。とにかくそれぞれに安心立命できればよいのではないでしょうか。
ですから、参加型の人も、時に法規も活用し、法規準拠型の人もあまりそれに頼るだけでなく、時には参加して自分を失わずに主張することも必要ではないかと思います。
それでお互いに、余りむきにならず、職場におけるみんなの命と健康を守ることができれば、それが最もよいことではないでしょうか。そして、ともに、この社会を極楽浄土にすることができたならば、そんなによいことはないのではないでしょうか。
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