労働実務事例
[ 質問 ]
派遣先の管理職から、当社が派遣している女性派遣労働者の携帯電話番号について照会がありました。「休日、急に連絡が必要な場合もあるから」というのですが、問題ないでしょうか。派遣先は指揮命令権を持ち、派遣労働者と特別の関係にあるので、情報の提供もやむを得ないのでしょうか。
宮城・D社
[ お答え ]
お尋ねのケースでは、そもそも会社を代表して(たとえば派遣先責任者として)情報の提供を求めているのか、疑問が残ります。しかし、仮に派遣先会社から照会があったとしても、回答には慎重な態度を採るべきです。
派遣元事業主が個人情報保護法に基づく「個人情報取扱事業者」に該当するときはもちろん、該当しないときでも、「派遣元指針」(平11・労働省告示第137号)に基づき情報の適正な取扱いに努めるべきとされています。
派遣先会社は派遣労働者の雇用主ではなく、「派遣先に対して個人データを示す行為は、『第三者提供』に該当」します(派遣事業取扱要領)。個人データは、「法令に基づく場合等を除き、本人の同意を得ないで第三者に提供してはならない」と規定されています(個人情報保護法第23条)。「オプトアウト(第三者に提供することを本人に通知すると同時に、本人の求めに応じて提供の停止することを制度化)」等の例外もありますが、通常、個人の携帯電話番号は第三者通知事項として想定されていません。
派遣先へ提供可能なデータは、基本的には、「派遣法第35条に基づき通知すべき事項」「派遣労働者の業務遂行能力に関する情報」に限られます(前記取扱要領)。「派遣法に基づく事項」は、次のとおりです。
・派遣労働者の氏名・性別(45歳以上18歳未満は年齢情報も)
・健保・厚年・雇保の資格取得状況
・派遣(基本)契約と異なる就業条件
現在、派遣元(人材ビジネス会社)は、採用応募書類等により携帯電話の番号を知っているのが、むしろ普通です。しかし、本来、派遣元も労働者名簿の記載事項(労基法第107条)、健診情報(安衛法第66条)など法令に基づくもの以外は、本人の同意を得て情報を取得すべきです。携帯電話番号は本人の同意を得て取得したものとみなされ、特定した利用目的以外で使用すべきではありません。
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