労働実務事例
[ 質問 ]
地方公務員にも労災保険と同じように、メリット制が採用されたと聞きましたが本当でしょうか。そうすると国家公務員にも同じようにメリット制が採用されるのでしょうか。そのような点について概略でもよいですから、簡単に説明してください。
【秋田・F生】
[ お答え ]
地方公務員と国家公務員についても、民間の労働者と同じような災害補償制度があります。ではその制度の内容は民間の労災保険を主にした災害補償制度と同じかというと、必ずしもそうではなく、違っている部分もあります。
では、どのように違ってくるかといいますと、補償の種類や内容は余り違った面はありません。若干、公務員の方がよいようですが、それは公務員の特殊性等を考慮してのことでしょう。したがって、ここではそれ以外のことを主として説明することにします。
まず、非常に大まかにいうと、地方公務員の災害補償については、労災保険に似た面があるということです。すなわち、労災保険は、原則として災害補償義務のある事業主の納付する労災保険料によって運営されています。そして、その労災保険の率は業務災害分については、業種別の収支率により決められています。地方公務員の場合は、地方自治体の負担金により運営されていますが、その負担金の率は船員の1000分の6.44を最高にして、最低は義務教育学校職員の1000分の0.76のように仕事の危険度で決定されています(次ページ表参照)。そして、労災保険料は政府に納付しますが、地方公務員の負担金については、地方自治体から地方公務員災害補償基金に納付されます(地方公務員災害補償法施行規則第42条)。もちろん補償を受ける場合には被災した地方公務員が請求する先は、使用されている地方自治体でなく基金です。労災保険の被災者の給付の請求先が事業主でなく政府(基本的には労基署長ですが)であることに似ています。
ところが、国家公務員については、災害補償制度は、労災保険法でなく労働基準法(主として第8章)に似ている面があるということです。国家公務員災害補償法によると、国家公務員については、災害補償を実施するのは、被災した国家公務員の使用者である実施機関(例えば各省のように)です。労働基準法のように使用者が災害補償を実施するのです。したがって、労災保険料や負担金を別機関に納付するという制度はありません。したがって、国家公務員の場合には、地方公務員の場合のように、メリット制という問題は生じません。次に平成22年4月から生まれた地方公務員についてのメリット制の概要について述べることにします。
まず、地方公務員のメリット制の適用ですが、平成22年度の概算負担金(労災保険なら概算保険料に相当します)からということになります。
では、そうなると人口の少ない市町村でも適用されるかというと、そうではなく、適用されるのは次の団体です。
・都道府県
・政令指定都市
・中核市
・特例市
・東京特別区
ただし、消防職員については、指定都市、中核市、特例市が構成団体である一部事務組合も適用されます。
次に、適用される職種は、以下の職種であって運輸事業職員と船員とには適用されません。
・義務教育学校職員
・義務教育学校職員以外の教育職員
・警察職員
・消防職員
・電気・ガス・水道事業職員
・清掃事業職員
・その他の職員
では、問題のメリット率はどうでしょうか。これは最高20%であり、現在の労災保険からみれば低いのですが、労災保険も最初は20%だったことを考えますと、これで適当かもしれません。労災保険の場合には、GHQのデービス氏が、アメリカのオレゴン州での成功例を話して採用されたようですが、うまく活用できればメリット制はよい制度かもしれません。
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