労働実務事例
[ 質問 ]
年金関係のパンフレットを読んでいて、疑問が生じました。子どもが養子になっても、「直系血族または直系姻族の養子であれば遺族年金の権利を失わない」と書いてあります。妻が結婚し、連れ子と再婚相手が養子縁組をしても、遺族年金を引き続き受けられるのでしょうか。
【山口・H社】
[ お答え ]
子どもの遺族基礎年金・厚生年金は、次のいずれかに該当するとき、失権します(国民年金法第40条、厚年法第63条)。
① 死亡したとき
② 婚姻したとき(事実婚含む)
③ 直系血族及び直系姻族以外の者の養子(事実上の養子関係含む)になったとき
④ 離縁により、死亡した被保険者等との親族関係が終了したとき
⑤ 18歳到達日後の最初の3月31日が終了したとき(障害等級1、2級の者除く)
⑥ 障害等級1、2級の障害状態にある者が、その事情がやんだとき
⑦ 20歳に達したとき
お尋ねにあるのは、このうち③に該当するケースです。
民法の条文をみても、直系血族・姻族という言葉の定義は出てきません。教科書を参照しながら、一つひとつの言葉の意味を確認していきましょう。
血族には、自然の出生関係に基づく自然血族と、養子縁組による法定血族の両方が含まれます。直系血族とは、血統が直下する関係をいい、傍系血族と対になっています。直系尊属・直系卑属を総称する用語です。
婚姻した夫婦の一方と他方の血族との関係を、姻族と呼びます。直系姻族とは、自己の配偶者の直系血族、または自己の直系血族の配偶者を指します。
あなたは子どもの直系血族(母)です。あなたの再婚相手は、子どもからみれば、自己の直系血族の配偶者になるので、直系姻族に該当します。
妻であるあなたは、婚姻により遺族基礎・厚生年金の受給権を失ってしまいます。しかし、子どもは直系姻族(あなたの再婚相手)と養子縁組関係を結んでも、年金の資格を失いません。
ただし、子に対する遺族基礎年金は、「生計を同じくする父、母があるときは、その間支給停止」する規定となっています(国民年金法第41条)から、あなたが遺族基礎年金の権利を失っても、子どもに対する遺族基礎年金は支給停止となったままです。
子に対する遺族厚生年金は、「妻が遺族厚生年金の受給権を有する間、支給停止」となります(厚年法第66条)。しかし、あなたの失権後は、子どもが遺族厚生年金を受給することができます(支給停止の解除)。
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