労働実務事例
[ 質問 ]
再雇用で老齢厚生年金を受けている男性(66歳)から、相談を受けました。「まもなく妻が65歳に達しますが、妻は年金の保険料を納めたことがなく、老齢基礎年金を受け取れないのではと心配しています。年金がない場合、私が配偶者加給年金額を引き続き受給できるのでしょうか」というのですが、いかがでしょうか。
【東京・O社】
[ お答え ]
老齢厚生年金の受給権者(お尋ねのケースでは夫)が権利取得当時、65歳未満の配偶者(同妻)の生計を維持しているときは、配偶者加給年金額が老齢厚生年金に上乗せされます(厚年法第44条第1項)。
一方、配偶者(妻)が65歳到達当時、夫等に生計を維持されていた場合、老齢基礎年金に上乗せで一定額の加算を受けることができます(国民年金法第14条)。同時に夫の配偶者加給年金額を受ける権利が消滅するので、「振替加算」と呼ばれています。
しかし、夫の権利が消滅するのは、法律の規定上、妻が振替加算を受けるからではありません。配偶者加給年金額の失権事由は、次のとおり定められています(厚年法第44条第4項)。
① 配偶者が死亡したとき
② 配偶者の生計維持状態がやんだとき
③ 配偶者が離婚・婚姻の取消しをしたとき
④ 配偶者が65歳に達したとき
配偶者が65歳に達すれば、振替加算の対象になるか否かに関係なく、夫の配偶者加給年金額はカットされてしまいます。
ただし、お尋ねのケースで「年金保険料を払っていないから、年金がない」とは限りません。昭和61年4月以降、国民年金の第3号被保険者であった期間は保険料納付済期間に該当します。それ以前も、厚生年金の被保険者等の配偶者だった期間は、合算対象期間となります。保険料納付済期間と合算対象期間を合計し、25年以上(将来的に10年に延長予定)あれば老齢基礎年金の受給資格を満たします。
結婚の時期が遅く、配偶者本人が独身でずっと国民年金保険料を未納といった状況でなければ、問題ないはずです。
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