労働実務事例
[ 質問 ]
嘱託再雇用者から、在職老齢年金について質問を受けました。雇用保険から高年齢雇用継続給付を受けると、年金額がカットされます。この再雇用者は、「最近、残業が非常に多くなっている。給料が増えるのはいいが、年金カット額も大きくなるのでは元も子もない」というのですが、残業と年金カットの関係を教えてください。
【東京・M社】
[ お答え ]
再雇用時には、定年前と比べ、賃金が大幅にダウンするのが一般的です。高年齢者の就労意欲を高めるため、雇用保険では高年齢雇用継続給付を設け、賃金ダウンの一部を補てんしています。
しかし、雇用保険からお金が出ると同時に、年金額の一部をカット(併給調整)する仕組みが設けられています。この併給調整は、在職老齢年金による年金減額に上乗せする形で実施されます。
減額率を決定するファクターは、「みなし賃金月額」と「標準報酬月額」の2つです。「みなし賃金月額」とは、60歳到達までの6カ月間の賃金総額を180で除して得た額に30を乗じた額をいいます。この数字は、定年前の賃金水準(賃金が下がる前の水準)を表すものです。
次に、標準報酬月額は、再雇用後の額を用います。こちらは、賃金低下後の賃金水準を表します。
この2つの数字を比較することで、再雇用の前後でどれだけ賃金水準が下がったかを知ることができます。年金のカット額(併給調整額)は次のとおりです。
① 標準報酬月額がみなし賃金月額の61%未満のとき
標準報酬月額×6/100
② 標準報酬月額がみなし賃金月額の61%以上75%未満のとき
標準報酬月額×「賃金の低下幅に応じて逓増する率」
「逓増する率」は、たとえば再雇用後の賃金水準が70%のときは1.87%、65%のときは4.02%などと定められています。この結果、再雇用後の賃金水準が低いほど、年金のカット額も大きくなります。なぜかといえば、賃金水準が低くなるほど雇用保険から支給される額が大きくなるので、それに比例する形で年金カット額を増やす必要があるからです。支給される高年齢者雇用継続給付の額と年金カット額の比率は原則として5対2に設定されています。
ご質問は、「残業をして賃金額が増えると、年金のカット額も増えるのか」ということでしたが、上記の計算方法を見て分かるとおり、計算のベースとなるのは「標準報酬月額」です。残業で一時的に賃金が増えても、標準報酬月額が改定されない限り、年金のカット額は一定で変わりません。
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