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事業承継全体のスケジュールを描く

事業承継の進め方は?「事業承継計画書」を作成してやることを明確にしよう

2022.02.01

筆者が支援しているある建設業の会社は、4年後に親子間で事業承継をする予定ですが、親子ということも影響してか、なかなか事業承継に向き合えていませんでした。しかし、あるきっかけから、危機感を持って事業承継に取り組むようになりました。

そのきっかけとは、本記事の議題でもある『事業承継計画書』です。ある勉強会で現経営者の方が作成してみたところ、「事業承継まで意外と時間がない!」「やるべきことが山積みだ!」ということに気づいたそうです。

こうして作成した『事業承継計画書』を後継者に共有し、事業承継にあたってやるべきことを親子で再確認。現在では手帳に挟んで、課題解決に向けて取り組みを加速させているとのことです。

今回は、事業承継で取り組むべきことを明確にする『事業承継計画書』について、その概要と作成方法の基本をご説明しましょう。事業承継がなかなか進まないという方は、ぜひ参考にしてみてください。

事業承継を円滑に進めるために「事業承継計画書」を作成しよう

そもそも事業承継とは?

事業承継とは”会社の経営を現在の経営者からほかの後継者へと引き継ぐこと”を指します。事業承継ときくと、「誰を後継者にするか?」「株式をどのように引き継ぐか?」「事業で使用する設備や不動産をどのように引き継ぐか?」というようなことがまず思い浮かぶかもしれません。

これはもちろん正しいのですが、ほかにも事業承継では、”目に見えにくい資産”をどのように円滑に引き継ぐか、ということも非常に重要です。

”目に見えにくい資産”には、以下のような要素があります。

・経営理念や会社の文化
・経営者の培ってきた信用
・技術や技能
・営業ノウハウ
・顧客の情報

これらの中に”会社の強みの源泉”がある場合も多く、”目に見えにくい資産”をいかに円滑に引き継いでいくかということも、将来の経営を左右するほど重要なことでしょう。

「事業承継計画書」を活用して引き継ぐ資産を確認しよう

事業承継では、前述の”目に見えにくい資産”を含め、何を引き継ぐかということを明確にして、現経営者と後継者で認識を一致させることが重要です。

そこで活用を検討したいものが『事業承継計画書』です。『事業承継計画書』とは、円滑な事業承継の実現に向けた具体的な対策を盛り込んだ長期的な計画のことです。

『事業承継計画書』を作成することで、事業承継へ向けて自社の現状を知り、将来へ向けて何が必要かということを整理し、経営者と後継者で共有することができます。

「事業承継計画書」の作り方を紹介

次に『事業承継計画書』をどのように作るかについてみていきましょう。『事業承継計画書』に盛り込む内容に定めはありませんが、事業承継を円滑に進めるために必要となる項目は必ず網羅しましょう。

参考として、中小企業基盤整備機構が提供しているフォーマットを紹介します。

こちらの事業承継計画表記入様式のエクセルファイルのフォーマットは、こちらからダウンロードできます。

この様式のように『事業承継計画書』は、横軸に期間、縦軸に会社や経営者・後継者の情報を記載するのが一般的です。こちらをベースに、必要な項目を追記していく形で作成してもよいでしょう。

ここからは、具体的に盛り込む項目の内容や考え方について説明していきましょう。

1:事業承継全体のスケジュールを描く

まず、現在を起点として、どのように事業承継を進めていくか大枠のスケジュールを検討しましょう。

例えば、親子間で事業承継をするのであれば、現経営者と後継者の現在から将来へ渡っての年齢を記載していくとイメージを持ちやすいでしょう。

なかなか事業承継に目が向かないという場合でも、「後継者が40歳になるタイミングで代表取締役に就任する」「現経営者が70歳を迎える誕生日までに経営権を引き継ぐ」というように、何らかの目途をつけることで事業承継に着手しやすくなるという側面があります。

特に重要なことは、やはり「いつ株式を譲渡、または贈与するか?」という経営権引継ぎのタイミングではないでしょうか?

「経営に携わっていない親族に株式が分散している」というケースで、後継者に株式を集約する必要があるとします。この場合にも、「〇〇年までに親族Aの株式を集約」「△△年までに親族Bの株式を集約」というような具体的な計画を立てやすくなるでしょう。

2:引き継ぐべき資産を洗い出し、予定を組む

次に、事業承継で引き継ぐべき資産を洗い出し、『事業承継計画書』の縦軸の項目に入れます。そして、その資産を引き継ぐために、誰がいつ何をするべきかを記入していきましょう。

会社によって内容はさまざまだと考えますが、先に挙げた表にもあるように、“後継者教育”という項目は必ず入れておきたいところです。

後継者教育は、時間的な余裕があるのであれば、外部研修も活用しながらじっくり教育を図っていくこともできるでしょう。逆に、時間的に余裕がないのであれば、“会社を経営するうえで欠かせないこと”から優先的に伝えられるようにスケジュールを組んでいきましょう。

その他、“現経営者の人脈”や“関係者への理解”に関連する項目も記載したほうがよいでしょう。例えば、主要取引先や金融機関はもちろん、現経営者の”顔”でつながっているという関係者もいると思います。そのような関係者にいつ・どのように紹介し理解を取り付けるかということが非常に重要です。

また、“関係者への理解”の一環として、“社員に対する説明や理解”を取り付けることも重要です。後継者が十分に自社で経験を積んで実績も残しているのであれば問題ないかもしれません。一方で、経験が浅かったり、他の会社に勤めているというような場合は、どのように会社に関わってもらい、社員が納得する状況を醸成していくかということも重要になってきます。

3:「事業承継計画書」に沿って進め、定期的に振り返る

最後に、『事業承継計画書』を作成したら、現経営者と後継者とで共有し、両者の合意をとるようにしましょう。両者の認識をすり合わせることで、事業承継を効率的に進めることにつながります。

そして、計画に沿って具体的な行動に移していきます。取り組みを進めるのかで、物事が進んだり、状況が変わってくることがあるはずです。定期的に『事業承継計画書』を振り返りながら、計画に追記したり、修正したりすることで調整しながら、確実に必要な事項を引き継ぐようにしましょう。

 

今回は『事業承継計画書』の作り方の基本を紹介しました。『事業承継計画書』を一気に作成するのは大変ですので、まずは思い浮かぶ項目から少しずつ記載していくことをおすすめします。

大事なことは、事業承継に向き合い課題を認識することです。なかなか事業承継が進まないという場合、まず『事業承継計画書』の作成から始めてみてはいかがでしょうか?

【こちらの記事も】
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【参考】
中小企業経営者のための事業承継対策』 / 中小企業基盤整備機構

* CORA、makaron*、siro46、freeangle / PIXTA(ピクスタ)