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M&A

事業承継問題の解決策として注目! 中小企業のM&Aメリット・デメリット【事例付き】

2021.08.05

コロナ禍が長引くなかで、さまざまな企業がこれまでの事業のやり方を見直しています。ウィズコロナの中で新たな経営方針を立案し、実施する必要性に迫られているのです。

一方で、経営者自身が高齢となり会社をたたむため、後継ぎを探している場合もあります。

このような課題に対して注目されているのが、“M&A”です。“M&AはMergers and Acquisitions(合併と買収)”の略称で、2社以上の会社が1社になるケースや、会社が別の会社を買い取るケースなどがあります。

今回は、M&Aにおける“売り手側”のメリットやデメリットを、事例とともに説明をしていきます。

M&Aのメリット

M&Aを実施した場合のメリットには、主に下記の内容が挙げられます。

(1)事業承継問題の解決

M&Aを行った場合の売り手側のメリットとして最たるものは、事業承継問題が解決することでしょう。後継者不在で悩む経営者が増加している中、他の会社に自社を買い取ってもらうことで、これまで培われてきた事業をたたむことなく、存続させることが可能になります。

(2)売り手企業の安定化

M&Aを実施し、売り手企業に買い手企業の資金や新たな経営能力が加わることで、会社の経営がこれまで以上に安定し、発展につながる可能性があります。

(3)経営者の利益取得

株式会社の場合、M&Aを実施すると売り手側の経営者の手から会社が離れることになり、経営者は株式譲渡益を取得することができます。その他、株主という責任を負うこともなくなります。

(4)従業員の雇用確保

会社をたたむことにより路頭に迷わせる懸念があった社員の雇用も安定し、これまで働いてくれた社員の生活を守ることができます。

M&Aのデメリット

M&Aは会社にとってよい影響がある反面、デメリットもあります。次の点に気をつける必要があることを覚えておきましょう。

(1)企業内での権限が減少・喪失される

他社へ企業を売り渡すということは、経営者自身の手から会社が離れることになります。

前章では、会社の経営権を手放すことで株主などからの責任から解放される、というメリットをお話しましたが、それは同時に自身の会社にかかわる権限も縮小されてしまう、ということでもあります。

M&Aを実施することで、自身の会社でありながら、自身の会社ではなくなるという喪失感を覚える可能性があることを覚悟しておきましょう。

(2)顧客との信頼関係を失う可能性

M&Aを行った場合、会社の経営主体となる経営者や担当者が変わることが多いです。そうすると、これまで築いてきた取引先や顧客との関係にも影響がでてくるでしょう。なかには経営主体の変更を快く思わず、これまでの良好な関係性を続けられなくなることも。

会社のイメージは、中で働く人によって大きく変化するものです。M&Aはこれまで取引のある取引先や顧客に対しても影響があることを覚えておかなければなりません。

(3)社員のモチベーション低下

M&Aにより経営者の方針や業務内容、仕事の進め方などが大きく変わるケースは少なくありません。特に中小企業の場合、社長の方針が大きく反映されることから、「この社長の下ならば安心して仕事ができる」と考えている社員もいるでしょう。

したがって、経営者の変更されることにより、社員の会社に対する愛着が薄れ、仕事のモチベーションが低下する場合や退職してしまう場合があります。

M&Aで失敗しないためのポイント

ここからの項目では、M&Aで失敗しないためのポイントについて、順を追って紹介をしていきましょう。

(1)専門家の意見を仰ぐ

M&Aを成功させるためには、事前準備を徹底し、迅速に対応することが重要になります。しかし、大企業と比較して規模の小さい中小企業の場合、経営者が日々の業務に追われる状況であることも多く、企業譲渡や買収に関する充分な知識を持ち合わせていない可能性があります。

知識不足の中、たとえば資金面で合意しただけの状況でM&Aに踏みきってしまうと、準備不足が原因で失敗してしまうリスクがあります。

対応策としては、M&Aに詳しい仲介会社などを早急に探し、相談をする方法が有効です。経営者の希望に応じたM&Aのプランを専門家に実際に立ててもらうことで、準備不足の見切り発車を防ぐことができるでしょう。

(2)会社の状況を適切に把握する

M&Aで会社を売却する場合、買い手にとってのその会社は”売り物”になります。

したがって、よりよい条件で買い取ってもらうために、まずは売り物である会社の状況を正しく把握し、買い手にアピールできるような”強み”を見いださなければなりません。この”強み”をうまく伝えられないと、買いたたかれてしまう可能性があるためです。

まずは会社の経営状況を正しく把握し、買い手に知って欲しい会社のよい点、そして、懸念点を洗い出しましょう。その上で、M&Aを行う際に優先したい条件や希望の譲渡価格を決めていく必要があります。また、これまでの取引先や雇用している社員の今後についても検討をしなければなりません。

(3)誠実な条件交渉を心がける

実際に買い手となる候補が見つかり、条件交渉を進めるにあたり、買い手が売り手企業の実情を把握するための買収監査が実施されます。買収監査では、売り手側は正しい資料を提供し、誠実な対応を心がける必要があります。嘘の書類を出したり、不誠実な対応を取ったりしてしまうと、買い手側の信用を失い、M&Aが失敗に終わる可能性があります。

M&Aは、売り手・買い手の信頼関係が必要不可欠です。相手に嫌がられるような態度や行為は避けましょう。

(4)金融機関との連携

中小企業間で行われるM&Aの場合、買い手が買収のための資金を融資で調達するケースが非常に多いです。もしも買い手が金融機関より融資が断られた場合、M&A自体が頓挫してしまい、失敗に終わる例も少なくありません。売り手としては、買い手企業の情報を事前にしっかりと取得しておくことが、失敗を防ぐためのポイントになります。

中小企業のM&A成功事例

最後に、中小企業同士のM&Aによる成功事例を紹介しましょう。

(1)同業種によるM&A

富山の印刷業者である『株式会社アヤト』は、同じく北陸地域である福井県の印刷会社『スキット株式会社』に株式譲渡を行いました。売り手の経営者が高齢となったことで、第三者である同業種の会社へ事業譲渡を実施したというのがこのM&Aの経緯です。

『株式会社アヤト』では、まず株主や経営陣、社員に対し、「第三者へ会社を譲渡を検討している」旨を話していました。そして、取引のある金融機関よりコンサルティング会社の紹介を受け、実際の譲渡へ踏み切りました。

常日頃より譲渡に対する話を正直に伝えていたことから社員や株主の反発もなく、買い手企業の強みを取り入れることができ、お互いにとってよいM&Aになりました。

【参考】 『親子3代で継承してきた富山県の印刷会社を福井県の印刷会社に譲渡』/ Visional(PR TIMES)

(2)異業種によるM&A

静岡県で旅館業を営む『桐のかほり 咲楽』が、茨城県で写真業を営む『株式会社小野写真館』に対し、事業譲渡を行いました。後継者不足に悩まされていた売り手と、コロナ禍により売り上げが減少しており、業態を変えて事業を存続させたいと考えた買い手。

交渉は双方の強みに共感したことでとんとん拍子に進み、わずか3ヶ月でM&Aが成立することになりました。

【参考】『伊豆河津の隠れ宿「桐のかほり 咲楽」をM&Aで取得』 / 株式会社小野写真館

 

M&Aにはメリット・デメリットがそれぞれあり、事前の情報収集・準備や、迅速・丁寧な対応が成功につながるという点について、お分かりいただけましたでしょうか。

M&Aを検討する際は、専門家の手も借りながら、会社がよりよい形で存続できるような方法を探していきましょう。

* freeangle / PIXTA(ピクスタ)