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退職金廃止

その退職金支払えますか?制度の見直し方法と「実際に退職金を廃止したケース」をご紹介【実例】

2021.10.05

みなさんは、自社の退職金について、今後どのくらいの資金が必要か見通しを立てたことはありますか?

実は、退職金原資の積立不足は、多くの企業が抱えている問題です。社会経済情勢の変化と、それに伴う経営状況の変化から、退職金制度の改定や廃止に踏み切る中小企業も多くなっているのです。

本記事では、退職金制度の廃止に着手するにあたって、その方法やポイントを解説します。社労士の筆者が経験した退職金制度を廃止した事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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退職金制度を廃止することは可能か?

まず、退職金制度を採用している会社が、それを廃止することは可能なのかをお話ししましょう。結論からいうと退職金制度の廃止は可能です。

しかし、退職金は、“賃金の後払い”的な性格や“退職後の生活保障”的な性格を持っています。そのため、退職金制度を廃止することは、従業員にとって労働条件の不利益変更になります。不利益変更を実施するためには、いくつかの条件があるので注意が必要です。

まず、退職金を含む労働条件は、会社と従業員の双方の“合意”によって決めることが原則です。そのためには、“変更に合理性”があり、また、“就業規則を周知する”必要があります。さらに、退職金制度の廃止のような、重要な労働条件の不利益変更の場合になると、経営悪化などその変更が不可避とされる事情とともに、社員の個別同意が必要とされます。

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何から着手すれば?

実際に退職金廃止を検討する場合、何から着手すればよいのでしょうか? まず、今後の退職者数から支払う退職金額を正確に算出し、どの程度資金が不足するのか、そして不利益変更の“必要性”があるのかを把握しましょう。

そのうえで、“相当性”(提供可能な代替措置)や“適正な手続き”の難しさ(従業員を説得するためにかかる時間など)を検討し、そこから妥当な不利益変更の内容(いつ、どのような段階を踏んで退職金を廃止するか等)を導き出します。

「必要性」とは

不利益変更を行う際は、会社の状態を確認することで、“必要性”を把握します。

売上高の2/3を占める大口取引先の倒産に伴う退職金規定の不利益変更が問題となった事案では、“倒産回避のための措置”として変更後の制度の有効性が認められた裁判例あります(中谷倉庫事件)。このように、不利益変更は、それをしなければならない相応な事情があるということが前提になります。

「相当性」とは

“相当性”とは、主に、減額後の退職金制度が社会通念上相当なものか、退職金を減額した際の代替措置等を講じたかどうか、ということで、一般的・客観的にみて許される範囲かどうかを言います。

定年延長の導入は、社員の地位を継続させることで不利益を緩和するという点でも、“相当性”の要素にも入ることが多いです。他には、再雇用制度や再就職先支援、不安解消における相談窓口設置などがあります。

「適正な手続き」とは

“適正な手続き”とは、主に社員への説明責任を果たしたかということです。具体的には、説明の場や機会を設けたか、資料も提示してわかりやすく経緯を説明したかが重視されます。

まずは、社員への説明からスタートです。そこから、納得が得られた場合は同意を得るわけですが、スムーズに進むわけではないので、交渉を重ねる必要があります。社員の意見を心から聞き、できることとできないことをしっかり説明しながらも会社の誠意をみせることが同意につながるでしょう。

なお、不利益変更の場合は個別の同意が75%(3分の4)は必要です。同意を得られた際は、後のトラブルを避けるためにも、エビデンスとして個別の同意書を作成することを忘れないようにしましょう。

現場は壮絶な状況になることが多く、同時並行になるケースも多いですが、理想的な順序は下記のような形となります。

社員への説明(会社状況や経緯について)→度重なる交渉→個別の同意

どの専門家に意見を聞けば?

社内制度変更について、法的に問題がないか、争われるリスクはないか、争われてしまった際に勝てるかどうかを判断するために、専門家の意見を取り入れたいケースも多いでしょう。相談する対象としては、弁護士、社労士、税理士などがありますが、いずれの専門家でもこの視点で検証してもうらことが可能だと思います。日頃から付き合いがある専門家がいる場合は、まずはその方に相談してみてはいかがでしょうか?

相談のタイミングとしては、退職金廃止の不利益変更以外の経営状況改善の努力(役員報酬カットや経費削減)をした後、「ここまでやってきたが、もうあとは退職金制度しかない……」と具体的に退職金制度の変更を検討し始める際がよいでしょう。

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実際に廃止にするにあたってのポイント

退職金規程の不利益変更に関する裁判例の傾向をみると、従業員が被る不利益の程度(退職金の減額幅、率等)とともに、不利益の代償措置や経過措置等が講じられているか否かといった点が重視されています。また、従業員への説明を真摯に行い、同意を得る努力をすることも必要となります。

不利益を緩和する代替措置や経過措置

代替措置とは、従前の退職金の定めと減額した退職金の差額を補償するものです。代替措置として、退職金以外の諸待遇の改善措置がとられた場合には不利益変更が認められやすくなります。具体的には、先ほど少し触れた、定年延長の導入をはじめ、再雇用制度や再就職先支援、不安解消における相談窓口設置などがあります。

また、経過措置については、退職金支給額を段階的に減額していくことなどを検討するとよいでしょう。期間に明確な基準はありませんが、事情が許す限り、長期間継続する姿勢は必要だと考えます。

従業員に同意を得るための努力

対象となる従業員からは、退職後の生活費への影響を懸念する声があがるでしょう。冒頭で少し触れたように、退職金廃止のような不利益変更には、原則、従業員の個別同意が必要になります。従業員の不安を軽減し、納得してもらう努力が大切です。

では、具体的にどのように進めればよいのでしょうか? まず、変更の内容はもちろん、変更が必要な理由についても詳しく説明します。従業員の意見を丁寧にヒアリングすることも重要です。代替措置を用意し、提案・協議する形で交渉を進め、従業員が納得したうえで同意できる状況を築くようにしましょう。

しかし、それでも同意を得られない場合もあります。となると、不利益変更ができないのか、というと、一概にはそう言えません。個別に説明し多数の同意を得ている場合は、そのこと自体が、変更の合理性があると判断される材料にもなりえます。必ずしも全員が同意を得られなかったとしても、不利益変更について可能な限り多くの従業員の同意を得るように、進めていくことが重要です。

実際に退職金を廃止した事例

ここで、筆者が経験した退職金を廃止した事例をご紹介しましょう。出会いは2003年頃、就業規則の見直し案件として相談を受けました。当時は、“2007年問題”と呼ばれ、団塊の世代が60歳になる2007年に定年退職者の大量発生することで、退職金積立不足が懸念されていました。

ご相談時の状況

その会社様の業種は運送業、当時2法人にて社員数は100名程度でした。当時の専務様が事業承継されるにあたり、労務面でさまざまな確認を行っている中でのご依頼だったと記憶しています。

手書きの就業規則に退職金制度の記載はありましたが、長年の功労に対する恩恵を重視し、退職理由によって金額が変わることもなければ、減額条項も上限設定もありませんでした。また、社員の退職金に充てる資金については、過去には生命保険等の社外制度もご利用だったようでしたが、筆者が相談を受けた際には社内準備金のみという状況でした。

まずは、ここ数年以内に定年退職される方を対象に現行規定にて退職金の見込み金額を算出してもらいました。すると、総額99,579,600円との結果がでて、社内準備金だけでは到底支払っていけないことが判明。当時、売上高の45%以上を占める取引先が事業閉鎖したこともあり、営業キャッシュフローが大幅に悪化。会社の決算は2期連続赤字と、財務状況が非常に悪化していた時期とも重なりました。

退職金廃止のために行ったこと

改定にあたり、筆者は新制度の策定、旧退職金制度は廃止、代替措置を提案。結果として、全員の同意を得て新制度に移行され、旧退職金制度は廃止となりました。スムーズに移行することができたのは、下記のような会社の対応がありました。

・代替措置と経過措置の導入
代替措置として、定年延長を導入しました。そして、移行の数年後の話になりますが、これまで長く勤めて定年退職した高齢者を受け入れるための新規法人も設立されました。また、経過措置としては、猶予期間(1年)を設けました。

・段階的な移行
既得権を保護しつつ新制度へ移行。具体的には、①新制度は新制度施行以降に入社した社員から適用、②施行後1年以内に退職する者は旧制度を適用、③それら以外は施行3年後までの勤続期間分を旧制度で計算した金額(上限あり)を支給。このように、できるだけ各立場の社員が納得できるような対応を取り入れ、旧制度を廃止してきました。

なお、制度を廃止(変更)するまでの過去の勤続期間に対する部分については既得権になるため、基本的には旧制度に基づいた内容を保証することが必要です。この部分を減額する場合は、対象の社員全員に個別で同意を取るしかなく、現実的には相当難しいです。ただし、本事例のように、ひとり一人に対して丁寧に対応し、同意を得ることができる場合もあります。

・社員への真摯な対応
対象の社員に対して、説明会、個別面談、食事会の機会をもち、説明を行いました。1年以上もの間、幾度となく社員の方のご家族さまも交えて話し合いの機会を設けました。社員の方を考えた上記の措置をもちろんですが、納得してもらうため、社員ひとり一人に時間をかけて丁寧に対応してきたということも、社員全員の同意を得られたことの要因かと考えます。

この事例での方法や流れが、唯一の正解だというわけではありません。ただ、社員のことを考えたこの会社様の姿勢は、退職金廃止をスムーズに進めるために重要といえるでしょう。

まとめ

退職金制度を廃止(変更)する場合には、突然行うのではなく、まずは従業員と協議の場を設けることが重要です。また、段階的な減額や代替措置をとる等、社員への配慮を忘れてはなりません。

退職金制度の変更や廃止はそう簡単にできるものではありません。変更の際には現状の把握とともに、ある程度しっかりした将来的な見通しを立てることが必要です。将来問題が生じないよう、専門家の助言を得ながら取り組むようにしましょう。

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* FreedomZ / PIXTA(ピクスタ)

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