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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 自然退職は促せる?中小企業がとるべき休職者やハラスメント社員の対応【Q&Aで解説】
就業規則

自然退職は促せる?中小企業がとるべき休職者やハラスメント社員の対応【Q&Aで解説】

2022.07.11

自社で雇用している従業員の全員が優秀で勤勉であるとは限らないものです。中にはいわゆる“問題社員”とされる従業員もいますし、各種ハラスメント行為を働く従業員もいます。また、長期休暇明けなどに急なメンタル不調に襲われる従業員もいます。そういった従業員の問題に対処する必要があっても、対処できる就業規則が整備されていないという中小企業は少なくありません。

そこで『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。ポマセントラス労務行政書士事務所 代表・大野正美先生にご登壇いただき、問題社員やメンタル不調の社員が出たときに会社として対応すべきこと、整備しておきたい就業規則を解説していただきました。

ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本記事では最終回として、ウェビナーに寄せられた質問とそれに対する回答を紹介して行きます。

第1回:問題社員と就業規則
第2回:ハラスメント社員と就業規則
第3回:メンタルヘルス不調者と就業規則
第4回:中小企業から寄せられた質問と回答

【資料動画のダウンロードはこちらから】
※第1~4回のどの記事からでも全編の動画の閲覧URL・資料DLが可能

【登壇者】

大野 正美(おおの・まさみ)
特定社会保険労務士・行政書士
ポマセントラス労務行政書士事務所 代表
(株)ポマセントラス経営総合コンサルティング 代表取締役

東証一部(現プライム)上場の食品会社にて法務部長、総務・法務・人事統括執行役員を経て、独立開業。その間、東京都社会保険労務士会副会長、全国社会保険労務士会連合会理事を歴任。現在、明治大学士業会理事、社会保険労務士駿台会副会長兼事務局長。会社での実務経験を活かし、各企業の労務・法務の相談、体制支援などを行っている。

書籍『社員とのトラブルを防ぐ 人事労務の基本 』(労働新聞社 共著)
「人を大切にする人事労務管理」(全国社会保険労務士会連合会)、「労務管理の視点からのコンプライアンス体制」(明治大学リバティアカデミー)、「入社前・就職前に役立つ社会のルール」(明治大学経営学部公開講座)、「キャリア支援講座」(明治大学理工学部・農学部総合講座)などセミナー講師歴多数。

質疑応答

Q:就業規則周知のタイミングや手段は?

1人1人の全てを網羅すると煩雑になり、規則に“ゆとり”がなくなります。以下2点についてご教示お願いいたします。
・内規の運用方法の事例
・ルールを守らせる手段

A:就業規則の周知は非常に重要です。4月の入社時期のタイミングで就業規則の説明をするのがいいのではないでしょうか。今年(2022年)は「ハラスメント防止法」が施行されたタイミングなので、研修を実施し、ハラスメントについての規定に加えて、服務規程や就業規則の全体像を説明してみてください。

Q:無断欠勤か休職なのかが曖昧。どうすれば?

企業で保健師をしています。問題は多々あるのですが、一例として無断欠勤なのか休職なのかの定義が曖昧で、就業規則が使えません。どのようにルール化して業務を進めていけばよいかアドバイスいただけますと幸いです。

A:このウェビナーで説明したように、休職についての規定をしっかりと設けて、それに則って休職命令を発動することが重要でしょう。散発的な無断欠勤については、注意することで対応するしかないと思われます。

Q:問題社員が社長へ直訴。どうすれば?

問題社員への対応方法について、弊社は20名程度の会社のため社長と従業員の距離が近く、問題社員が社長へ1対1で直訴をし、その対応に困っています。

A:普段のコミュニケーションが重要だと思います。その社員に丁寧に注意して指導する方法が一番だと思います。こういう状況を放置しておくと、やはり企業秩序が乱れていくことになりますので、言いにくいことでも勇気を持って注意・指導する必要があるでしょう。また社長から直接指導してもらうということもあり得ると思います。

Q:問題社員対応で気をつけるべきポイントは?

A:問題社員の定義は幅広いものです。しかし全般的に言えるのは注意・指導が大事であるということです。注意・指導をきちんと丁寧に行ない、さらにそれを記録しておくことが重要です。たとえば“注意指導書”を発行して注意・指導を行なって、改善が見られたら“改善報告書”を出すといった、問題社員に関する行動を記録しておくとよいでしょう。

Q:ハラスメントの線引き。グレーゾーンの場合、当事者への対応は?

A:ハラスメントにも、犯罪行為にあたるものから、犯罪行為まで行かなくても損害賠償に該当する、不法行為にあたるものまであります。不法行為まで行かなくても、職場秩序を乱すような不適切な行為に当たるものもあります。さらに、不適切な行為とまではいかないマナー違反のようなハラスメントもあります。“グレーゾーン”のハラスメント行為とは、不適切な行為、マナー違反にあたることが多いでしょう。こういった微妙なハラスメント行為についても、やはり就業規則に規定として盛り込むことが重要ですし、研修によって知らしめることは欠かせません。ハラスメントのガイドラインについては、厚生労働省などからマニュアルや資料が配布されていまので、ぜひ参考にしてください。

【参考】「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」 / 厚生労働省

Q:連絡がつかない社員。どのような就業規則が適切?

無断欠勤から連絡が取れなくなる(着信拒否・メール無視など)従業員がいます。退職意思の確認が取れず、退職処理ができないまま在籍(幽霊社員)となります。どのような就業規則であれば解雇ではなく自然退職にできるでしょうか。

A:これについては、休業命令を出すこともできると思いますし、十分解雇事由にもなると思われます。この状況ですと自然退職も該当するでしょう。本人と連絡が取れないのであれば、保証人がいる場合には該当する保証人に連絡するなど、現段階でこういう行動したということを明確に記録して残しておいて粛々と対処すればいいと思います。

Q:休職者が飲み歩いている。どう対応すべき?

メンタルヘルス不調で診断書を提出して休職している社員が、街中で飲み歩いている姿を多くの社員が目にしています。本人は飲みには行けるが会社には行けないといいます。このまま休職(休業手当あり)が続くと他の社員から苦情が上がります。どうしたらよいでしょうか。

A:休業の根拠となる診断書にはおそらく「療養するように」と書かれていると思うので、このメンタルヘルス不調者にとっては、就業規則外の夜にちょっとお酒を飲むぐらいはストレス解消になると考えているのではないでしょうか。しかし、“休業手当あり”で休職しているわけですから、ある程度考えてほしいということは注意する必要があると思います。就業規則の中の休職規定に則って、会社が休職命令を出している意味を考えていただくべきでしょう。

Q:試用期間中に問題行為。“試用期間の延長”以外の対応は?

A:試用期間の延長はあります。しかし、そこから再度延長を考えるより、延長した上で該当者に注意していくことが必要なのです。一度だけではなく、何度も丁寧に注意をし、それに関する資料を残しておきましょう。注意を行なっても改善が見られないような場合に、次のステップを考えてもいいのではないでしょうか。

Q:問題社員はお金で解決!このやり方は大丈夫?

問題社員のほとんどが、自覚がない!のが問題ですね。大きな会社であれば人事も可能ですが。中小企業では、周りの社員が疲弊して優秀な社員が辞めてしまう……。中小企業の弊社では、問題社員はお金で解決する(大金をキャッシュで用意して、退職に合意させる!)を促進しております。大野先生のご意見は、どうでしょうか?

A:これはいいと思います。もちろん無理強いはいけませんが、事由によるでしょう。退職勧奨というのは、退職金に上乗せをしてその人に辞めていただくための対応です。お金で解決する、というのは実務としてあり得る対応ではないでしょうか。

Q:自然退職の定義を改めて教えてください。

自然退職の定義がわかっておらず、可能であれば以下ご教示頂けますと幸いです。
・会社都合か自己都合か
・会社都合の場合、会社側にペナルティがあるのか

A:確かに混同しやすいところです。諭旨解雇というのは、ハローワークの区分には存在しません。諭旨解雇は自己都合、退職勧奨は会社都合、会社から辞めることを促すものです。本人が退職届を出すにしても、会社から干渉しているわけですから、懲戒事由のある社員に対して情状酌量で諭旨解雇にするということもあります。会社都合の場合のペナルティとしては、助成金の不受給事由になることがあるので気をつけるべきでしょう。

Q:長期休職者に自然退職を進めるには?

メンタルヘルス不調により長期間休職している従業員がおり、自然退職に進むにはどのような段取りを取ればよいでしょうか。

A:やはり休職規定を作ることが最も大事なことだと思います。休職規定があってこそ、普通解雇が可能になります。休職規定に則って、休職期間の満了で自然退職になるということになるでしょう。1か月などの期間を設けて、解雇予告をしていけば、自然退職に進めるのではないでしょうか。もちろん、会社の手続きとしてその従業員に対する意志表示を書面で行うことも大事でしょう。

Q:解雇通知で最悪の決断をしてしまった場合は?

メンタル不調の社員と面談や解雇通知をしたことで、本人が最悪の決断をしてしまった時、会社を守る方法はどのようなものが挙げられますか?

A:丁寧な対応と、メンタル社員と主治医との話し合い、診断書をもらっているので、本人の同意を得る必要がありますが、同意を得て主治医と面談もして状況を十分確認する。産業医がいれば産業医との面談ができるのですが。

Q:産業医のいない場合はどうすれば?

主治医は職場復帰可能と診断書に記載されても、会社としては不安がある。50人未満で産業医のいない場合、地域産業保健センター又は会社指定の医師による判断を参考に、会社が自然退職を決めても解雇扱いにはなりませんか?

A:復帰の判断は、最終的には使用者側。「自然退職」と「普通解雇」は似ているようで違う。就業規則に「休職」規定があれば、休職命令(命令といいますか対応はよく話して休むようにと)⇒期間満了で「自然退職」がいい。「休職」規定がなくても「休職」扱いすることは可能。一定の期間(例えば1か月)を経過して、よく話して「自然退職」がいい。それでも、という場合は、「退職勧奨による合意退職」さらには、やわらかい対応の順で「自然退職」⇒「退職勧奨(合意退職)」⇒「普通解雇」よくよく話し合う(⇒よくよく説得する)

Q:高齢社員の教育は必要?

定年後の部長職クラスの従業員を能力不足のため、一般社員にする場合も何度か指導の機会は必要なのでしょうか。若年社員に教育をした方が将来的に良いとの考えから、意欲が低い高齢社員にまで教育が必要なのかと疑問です。

A:現在、多くの会社で悩んでいる問題です。定年後ですので「1年契約期間の再雇用」でしょうか?評価を適用して、濃淡をつける取り組みをしている会社もあります。(でも、難しい

Q:自己都合退職者が、会社都合にしてほしい。大丈夫?

自己都合で退職する者が、会社都合(普通解雇)にしてほしいとの要望があり。問題はないでしょうか。

A:失業給付が手厚く受給できると言う理由かもしれませんが、法的には、自己都合は自己都合です。普通解雇だと本人の転職時に不利な場合があり、また、助成金受給などで会社には不利になる場合がある。

Q:経営者に就業規則の周知する良い方法は?

就業規則の周知がほとんどできていない中小企業に対し、どのようにすれば、経営者が就業規則の周知を積極的にするのかの対応策をお教えください。

A:今は、就業規則の必要性を認識して、10人未満の会社も、積極的に、就業規則を作成している傾向があります。裁判は少し遠いかもしれませんが、問題社員の対応は出てくる可能性は高いです。作成しても周知をしないと、効力が問われるので、どこかにつるしておくだけでも、大切です。

ここでの質疑応答の中でも多く語られたように、問題社員やメンタルヘルス不調者へ企業として誠実に対応するためには、やはり就業規則のなかできっちりと規定を定めておくことが重要ということがわかります。このウェビナーをきっかけとして、就業規定の確認、見直しを進めるのはいかがでしょうか。

*artswai、EKAKI、塩大福、プラナ / PIXTA(ピクスタ)

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