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問題社員を解雇できないか?不当解雇になるケースと実現する要件とは

問題社員を解雇できないか?不当解雇になるケースと実現する要件とは

2021.06.02

会社では、当然ながらさまざまな従業員が雇用されています。そして、その従業員の働きによりひとつの企業が成り立っています。

しかし、その中には経営者の頭を悩ませる“問題社員”が存在することがあります。

会社は人と人との繋がりで成り立っており、複数の人が存在すれば考え方や性格の相違によるもめごとが生じるのは当然です。それは、規模の小さい中小企業も例外ではありません。また、コロナ禍の昨今では、ストレスを抱えながら仕事をする者も多く、意見の相違も生じやすい状況といえるでしょう。

ただし、考え方や性格の違いという言葉では片付けられないような問題行為を起こす社員については、使用者側としては何らかの対策を取る必要があります。放置をすることで、職場環境や生産性、ひいては経営の悪化に繋がる恐れがあるためです。

経営者としては、このような問題社員は早急に解雇をしたい、退職して欲しいと考えるのが本音でしょう。ところが、日本の法律では簡単には解雇処分を下せないのが現状です。対応を誤ると、不当解雇と訴えられ、弁護士を通して慰謝料の請求をされる恐れがあります。

今回は、このような問題社員への対応する際のポイントや、不当解雇とみなされる基準、企業による解雇が認められているケース等について、順を追って解説をしていきましょう。

問題社員とは

“問題社員”と一言で表しても、その種類はさまざまな内容があります。まずは、自社の社員がどのようなタイプなのかを正しく把握しましょう。

1.社内ルールに従わない

就業規則で定められたルール、特に服務規律や倫理規定に従わないケースで、遅刻や無断欠勤を繰り返す、情報漏えいの恐れがある備品を持ち帰る、仕事中に職務を逸脱した私用の行為を繰り返す等の行為が挙げられます。

2.協調性がない

業務命令に従わない、他の社員とのもめごとが絶えない、暴言や陰口、それに伴うSNS投稿を行う等の行為が挙げられます。

3.職務遂行能力に問題がある

与えられた仕事を度を超えてこなすことができず、改善の見込みがない場合が挙げられます。

問題社員の扱いはどうすればいいのか

では、前項目で挙げたような問題社員に対して、具体的にはどのように対応すれば良いのでしょうか?

結論としては、間違っても「就業規則に違反したのだから即解雇!」等の対応を取ってはいけません。このような即時解雇の対応は、よほどの問題行為が認められない限り、不当解雇として扱われます。

会社側としては、問題社員に対して問題行為を改めるよう、真摯に対応をする必要があります。対応の順序としては、以下の懲戒処分の程度を参考にして下さい。

①戒告(かいこく):口頭で問題行為をやめるよう注意をする
②譴責(けんせき):始末書の提出や・誓約書の締結
③減給:社員が起こした内容に応じた形で給料の一部を控除する
④出勤停止:自宅で待機をさせる
⑤降格:役職などを下げる

これらの懲戒処分を実施しても問題行為が改まらなかった状況で、企業側は初めて解雇処分を検討する段階に入ったといえます。

重要なポイントは、上記のような段階ごとの懲戒処分に関する対応法を、あらかじめ就業規則等で定めておくことです。前もって問題社員に対する対応法をルール化しておくことで、労使間の無用なトラブルを避けつつ対処できます。

不当解雇になるケースとは

不当解雇とは、法律や就業規則で定められた規則を守らずに、事業主の裁量で強引に労働者を解雇することです。例えば、以下の例が挙げられます。

①労働者の国籍、信条、社会的身分、性別、政治的思考等を理由に行う解雇
②労災期間や産前産後休業期間、その後30日間の間に行う解雇
③解雇予告の実施ならびに解雇予告手当を支払わずに行う解雇

労働契約法では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合の解雇は、権利濫用扱いとして認められないと定められています。

解雇は、全項目で挙げた懲戒処分の中でも、労働者に対して行う最も重い処分であるといえます。つまり、簡単に解雇処分を下すことはできず、段階を踏んだうえで慎重に進める必要があります。

企業が解雇を行使できる要件とは

ここでは、企業側に認められている解雇の内容について説明をします。一言で解雇とはいっても、その種類はさまざまです。主に以下のように分類されています。

①普通解雇:懲戒処分を実施しても問題行為が改まらなかった場合に下される解雇処分
②諭旨解雇(ゆしかいこ):懲戒解雇に相当する内容において、労使間の話し合いにより情状酌量の措置として下される解雇
③懲戒解雇:会社が社員に対して一方的に実施する解雇
④整理解雇:業績不振のために実施する人員削減のための解雇(リストラ)

実際に解雇を行う場合は、まずは上記のいずれの案件に該当するかを検討し、解雇の理由が合理的なものかどうかを判断します。そのうえで、就業規則に定められた方法に沿って実施をする必要があります。

また、解雇予告や解雇予告手当の支払いについても留意しなければなりません。解雇予告とは、対象となる労働者に対して30日前までに解雇をする旨を予告することです。30日前までに予告をしなかった場合は、30日分から不足する日数分の平均賃金を“解雇予告手当”として支払う必要があります。

解雇予告自体を行わなかった場合は、解雇する際に30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない点も覚えておきましょう。

まとめ

問題社員を簡単に解雇することはできないことが、お分かりいただけましたでしょうか?

解雇を考える前に、まずは問題を起こす社員の行為を正し、職場環境を整えることが先決になります。問題社員自体が何らかの問題を抱えている可能性もあるので、相談に乗る方法も有効です。そして、実際に解雇を行う場合は、社内ルールに沿って慎重に進める必要があることを覚えておきましょう。

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【参考】
E-GOV法令検索 労働契約法

* Mills / PIXTA(ピクスタ)