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もう来なくていいから

もう来なくていい!と言ってしまった…経営者の「感情的な解雇発言」リスクと対応策

2021.10.25

「従業員をクビにするなんて簡単だよ。弁護士なんて、必要ないね」と言った経営者がいました。何年も前に、経営者の方と従業員を解雇する話になった際のことです。「一体どうやって、簡単に解雇できるんですか?」と聞いたところ、「そんなの簡単だよ。明日からもう来なくていいからと伝えれば、来なくなっておしまいだよ」とのことでした。

特に嘘をついているようでもありませんでしたから、少し前まではそういう実例もあったのかもしれません。今でも、業種によっては、そのような扱いが行われていることもあります。しかしながら、このような形での“解雇”の場合、相手方が法的に争ってきたら、会社にとって非常に大きなダメージになります。

今回は、感情的な発言での従業員を解雇することにすることについて、これまで筆者の弁護士としての経験をふまえて、検討してみます。

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「もう来なくていいから」は解雇になるのか

そもそも「もう来なくていいから」という言葉は、法的に解雇にあたるのかが問題になります。ただ、これは言葉だけみても、明確なことは言えません。言葉を発した状況などから判断されることもあるでしょうし、何よりもその後の従業員と会社の行動から、言葉の意味が確定することになるからです。

世の中には、精神的に打たれ強い従業員もいます。そういう人が、「もう来なくていいから」と言われたにもかかわらず、会社に来続けたとしたら、そもそも解雇が行われたという事実自体が認定されないでしょう。

こういう従業員も現実にいますよね。そういった人に慣れている経営者は、かなり気楽に「もう来なくていいから」などと言ってしまいそうになります。しかし、後ほど説明するように、パワハラと認定される可能性があるので注意しましょう。

一方で、発言を受けて従業員が本当に会社に来なくなる場合は、事実上解雇として考えられます。このような事態になって初めて問題が顕在化することが多いのです。

従業員が出社しなくなった際のリスク

「もう来なくていいから」といった発言を受けて、従業員が出社しなくなった場合、“不当解雇”として争われる恐れが高くなります。

解雇する意図があった場合となかった場合で、どのようなリスクがあるのかを見ていきましょう。

解雇するつもりで言った場合

経営者として、本気で解雇するつもりで言った場合もあるでしょう。ただ、労働者の権利は法律で手厚く保護されているので、よほどのことがないと従業員の解雇は認められていません。

企業側がこのような発言を事実上の解雇として扱う場合、従業員側から解雇の不当性を理由に“解雇無効”を主張される可能性があります。まして、「もう来なくていいから」という発言によって従業員が出社しなくなり、事実上解雇となっているときには、解雇のための告知期間をみたすことや、理由を文書で説明することなどの手続きも履行していないケースがほとんどでしょう。

そうだとすると、労働審判や労働裁判となった場合、会社側が勝つのは、非常に困難といえるのです。

解雇する意図がなかった場合

一方、経営者としては本気で言ったわけではなかったような場合には、そのまま放っておくのはよくありません。解雇する意図がなかったとしても、その発言によって従業員が出社しなくなった場合、事実上の解雇となってしまうためです。

そこで、解雇する意図がなかった場合には、従業員側に連絡して、発言についてはお詫びするとともに、経営者としては解雇するつもりはなく、会社に復帰するように伝えることが必要となります。

伝え方については、後で証拠が残るように、メールなどの文書の形でも行うことが望ましいといえます。会社が真摯に謝罪し、戻ってくるように伝えたとしたら、会社が“不当解雇”したということで、従業員側から法的責任を追及される可能性は低くなるからです。

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パワハラとされる可能性

また、経営者側に解雇の意図があったかどうかにかかわらず、「もう来なくていいから」というような経営者の発言は、“パワハラ”と認定される可能性もあることも念頭においておかなくてはなりません。

このような発言は、多くの場合、従業員側により録音されていると考えた方がよいでしょう。当事務所で扱った労働事件でも、非常に多くの案件で、経営者側の不適切な発言が録音されていました。

パワハラ単独として訴訟にまで発展する可能性は、必ずしも高くはありませんが、不当解雇とセットにして、訴訟等や労働審判で責任追及が行われることはよくあります。日頃からこのようなリスクがあることを頭の片隅においておき、行き過ぎた言動をとらないように注意をしておくべきでしょう。

【こちらの記事も】【パワハラ事例集】そのやり方、パワハラかも!? パワハラの定義・具体例・対策

会社のダメージを最小限にするポイント

以上で見てきたように、従業員を最終的に解雇するのは非常にハードルが高いです。正式な解雇通告の場合ですら容易ではないので、本件のように「もう来なくていいから」といった発言による場合はなおさらです。

ただ、経営者側が従業員にここまでの発言をするというのは、従業員側にも言われるだけの理由がある場合もあります。筆者が経験した案件で、経営者が思い余って事実上の解雇を伝えたような事案では、従業員の勤務態度など相当問題のある事例でした。しかし、従業員側に問題があったとしても、今の日本の労働法では、簡単に従業員を解雇することはできません。

このような事案では、労働審判での協議や、裁判になったとしても和解で解決されることが多いです。解決に至るまでの話し合いの中では、「もう来なくていいから」と経営者が言わざるを得なかった事情や、そのもとにある従業員側の問題点などを丁寧に説明することがポイントになります。こうすることによって裁判に勝つことは難しいにせよ、会社のダメージを抑えて、“うまく負ける”ことは可能になってきます。

【こちらの記事も】問題社員を解雇できないか?不当解雇になるケースと実現する要件とは

最後に

現代では、従業員側の権利意識が非常に高くなってきています。“労働者の権利”についても、ネットを検索すればすぐに情報が手に入ります。また、多くの従業員が、関係の悪くなった経営者の失言を逃さずに、録音をしているという事実もあり、パワハラとして争われるリスクもあります。

そんな中で、軽い気持ちで「もう来なくていいから」などと発言すると、とんでもない不利益が会社に生じる可能性があるので、十分に注意しないといけません。本稿を参考にして、従業員対応は細心の注意をもって行うとともに、何かあった場合は、弁護士など専門家に相談するようにしてください。

* mits、takeuchi masato、リリー / PIXTA(ピクスタ)