自社で雇用している従業員の全員が優秀で勤勉であるとは限らないものです。中にはいわゆる“問題社員”とされる従業員もいますし、各種ハラスメント行為を働く従業員もいます。また、長期休暇明けなどに急なメンタル不調に襲われる従業員もいます。そういった従業員の問題に対処する必要があっても、対処できる就業規則が整備されていないという中小企業は少なくありません。
そこで『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。ポマセントラス労務行政書士事務所 代表・大野正美先生にご登壇いただき、問題社員やメンタル不調の社員が出たときに会社として対応すべきこと、整備しておきたい就業規則を解説していただきました。
ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本記事では第3回として、「メンタルヘルス不調者と就業規則」について解説します。
第1回:問題社員と就業規則
第2回:ハラスメント社員と就業規則
第3回:メンタルヘルス不調者と就業規則
第4回:中小企業から寄せられた質問と回答
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※第1~4回のどの記事からでも全編の動画の閲覧URL・資料DLが可能
【登壇者】
大野 正美(おおの・まさみ)
特定社会保険労務士・行政書士
ポマセントラス労務行政書士事務所 代表
(株)ポマセントラス経営総合コンサルティング 代表取締役東証一部(現プライム)上場の食品会社にて法務部長、総務・法務・人事統括執行役員を経て、独立開業。その間、東京都社会保険労務士会副会長、全国社会保険労務士会連合会理事を歴任。現在、明治大学士業会理事、社会保険労務士駿台会副会長兼事務局長。会社での実務経験を活かし、各企業の労務・法務の相談、体制支援などを行っている。
書籍『社員とのトラブルを防ぐ 人事労務の基本 』(労働新聞社 共著)
「人を大切にする人事労務管理」(全国社会保険労務士会連合会)、「労務管理の視点からのコンプライアンス体制」(明治大学リバティアカデミー)、「入社前・就職前に役立つ社会のルール」(明治大学経営学部公開講座)、「キャリア支援講座」(明治大学理工学部・農学部総合講座)などセミナー講師歴多数。
メンタルヘルス不調者とその対応
ゴールデンウィークやお盆休みのような長期休暇明けには、会社に行くことを考えると気分が重くなるもの。最近ではテレワークの機会も増え、何日かぶりに出社するということになれば、やはり心は重くなるものです。そういったことも考慮にいれながらメンタル不調者への対応について考えていきます。
メンタルヘルス不調者は、私傷病としてのメンタルヘルス不調もあれば、会社でのパワハラやイジメでメンタル不調に陥るケースもあります。特に会社が原因となったメンタルヘルス不調者についての対応は慎重になるべきです。
就業規則の整備と周知を十分に実行したのち、メンタルヘルス不調について事由が発生したとしましょう。まずは現状把握が重要です。私傷病による場合でも、パワハラや長時間労働などで不調になったと訴えている場合でも、初期対応は同じです。
不調者には診断書を出してもらい、診断書に従った対応をします。応じない場合は受診命令を出します。命令というと厳しく聞こえますが、これも就業規則に盛り込んでおくべき事項です。
“休職”は使用者が判断するものです。診断書や産業医の意見などから判断し、就業規則の定めによって休職命令を出します。休職中には定期的に病状の報告をしてもらい、場合によっては傷病手当金の案内をする必要もあるでしょう。
“復帰の判断”についても使用者が判断します。休職によって治癒することが原則です。休職期間満了前に回復の見込みがある場合はテスト出社を検討し、その後復職することが考えられます。しかし休職中に治癒することなく休職期間満了となると自然退職扱いになります。
休職期間満了までに復職できない自然退職の場合、“退職”扱いにするか、“解雇”扱いにするかで対応は異なります。解雇扱いの場合には事前に解雇予告が必要です。休職者が復職を希望する場合には、自然退職がトラブルとなることもあります。主治医や産業医の意見と本人の意向を聞き、休職期間延長の措置をとらなければならない場合もあることを考慮しておきましょう。
メンタルヘルス不調者と就業規則
先に触れたように、メンタルヘルス不調者への対応では、就業規則に休職についての規定があることが重要です。
特に上の図の下線部の通り、期間を定めることが重要になります。図の期間についてはあくまでも例なので、自社にあった設定を行なってください。休職期間は勤続年数に応じて長く設定するとともに、休職期間の通算方法についても定めておくことが必要でしょう。
“復職”“テスト出社”“退職”などについても下記より無料ダウンロードいただける資料で配付していますので、参考にして規定を盛り込んでください。また、メンタルヘルスに関する情報も配付していますので、こちらも参考にしてください。
休職に至ってしまったメンタル不調者への対応は、慎重にならざるを得ないでしょう。しかし、就業規則にしっかりと各種規定が盛り込んであれば、それに沿った的確な対応が可能です。次回はこのウェビナーに寄せられた質問と、それに対する回答をまとめて紹介します。
*mits / PIXTA(ピクスタ)
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