
組織成長の秘訣は“人がたまれる場所”?急成長ベンチャー企業primeNumber代表取締役CEO・田邊 雄樹氏にインタビュー
経営者に経営の本質に関わる“5つの問い”を投げかけ、成功の秘訣を紐解くのが本連載「成功を掴んだターニングポイント」。
今回は、株式会社primeNumberの代表取締役CEO・田邊雄樹氏にお話を伺いました。
株式会社primeNumberは、2015年に田邊氏が取締役執行役員CIO・山本健太氏とともに創業。データ分析基盤の総合支援サービス『troccoⓇ』の開発・運営、データテクノロジー領域のコンサルティングサービスなどを提供し、順調に事業を拡大してきました。創業から現在までの経営におけるターニングポイントや、2022年11月にオフィス移転を行った経緯について田邊氏にインタビューしました。
目次
<プロフィール>
株式会社primeNumber
田邊 雄樹
代表取締役CEO慶應義塾大学経済学部卒業後、日本総合研究所にて製造業向けシステムコンサルティング、それに伴うプロジェクトマネジメントに従事。その後、インターネット広告企業にてビジネス・プロダクト開発に携わる中で、広告プラットフォームの開発・事業運営を担う関連会社役員を経て、2015年に株式会社primeNumberを創業。
Q1.貴社の事業について教えてください

出典: 経営ノウハウの泉
「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える。」というビジョンのもと、データを分析・活用するための環境、「データ分析基盤」をつくり、使うための技術を提供するSaaS『troccoⓇ』を提供しています。また、この他にもデータ活用のサポートを行う各種ソリューションを提供しています。
この2つの事業は相互補完関係にありまして、ソリューション事業では『troccoⓇ』を通してデータを活用する環境を提供したり、実際にデータを活用するサポートをしたりといったサービスを提供しています。
Q2.創業から「組織づくり」における苦労はありましたか?

出典: 経営ノウハウの泉
2018年に大きな転換点がありました。複数の大手企業をクライアントとしてお迎えし、社の運営自体はうまくいっていたのですが、より組織を成長させていくためには「自分たちはどんな存在で、何を成し遂げていくべきなのか」という大義のようなもの、いわゆるビジョンが必要だと感じていました。
そこで、自分たちの目指す姿や存在意義、どうなりたいのか、どうありたいのか、というテーマで、月に1回数時間のブレストを半年間行いました。その時のメンバーは私を含め5名だったのですが、何度も出し合った言葉の塊は大きな付箋の束となりまして、それをそっくりそのまま知り合いのコピーライターに預けたんです。
そこで捻出されてできたのが、「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える。」というビジョンであり、私たちが大切にしたい『8 Elements』というバリューでした。とくに後者は、組織の基盤となる価値観そのものとなりました。自分たちの方向性をきちんと決めるまでは、目指すべき目標も定まらず難しい時間を過ごしていたのですが、それが決まってからは、企業としての軸が定まったかな、と感じました。事業のことだけでなく採用面でも、ビジョンや『8 Elements』に共感いただけそうな方かどうか、大事な視点とさせてもらっています。
そして、ビジョンが決まったのと同じくらいのタイミングで、βリリースしていた『troccoⓇ』のクライアントが数社決まりました。さらには、ベンチャーキャピタルから連絡をいただいて、結果、資金調達をすることもでき、その時期に起こったさまざまなことが折り重なって、事業も組織も一気に拡大しはじめました。
Q3.オフィス移転のきっかけとその後の変化は?

出典: 経営ノウハウの泉
2019年の春先で5名だった私たちは、おかげさまで年々成長を実現することができ、現在は約70名となりました。その過程で、2022年11月に現在の広いオフィスに移転しました。
コロナ以前からはじまっていたリモートワーク制は、現在も変わらず週2日取り入れられていますが、入社から間もないメンバーが多いこともありまして、オフィスはコミュニケーションを取りやすい構造となるよう心がけました。弊社が大切にしている価値観の『8 Elements』の一つにも「対話を力に」という要素がありますが、直接の対話は、プロダクト開発や顧客サポート業務など、すべての価値創出活動や業務品質の向上につながると考えています。

出典: 経営ノウハウの泉
新オフィスはワンフロアにして、メンバー間でコミュニケーションを取りやすくし、バーやリラックスできるスペースを広めにとりました。創業時から飲料水・お菓子・お酒はフリーなので、自然とメンバーが集まっているのをよく見かけます。エンジニアからも「対面でのコミュニケーションの大切さを改めて感じた」という声も挙がっているのは嬉しいですね。

出典: 経営ノウハウの泉
また、コロナ禍を経て、とくに社外との会議のオンライン化が目覚ましく進んだことから、個別のワークスペースを20個自社制作しました。こちらも好評なのですが、ブース内の温度がやや上がりやすいので、そこは改善点していきたいところです。
Q4.企業の成長につながるオフィス環境とはどんなものでしょうか。

出典: 経営ノウハウの泉
企業の成長につながるオフィス環境には、“人がたまる要素”が必要だと思っています。人が自然と集まってリラックスしながらたまれるような“コミュニケーションスペース”が、フロア面積に対して適切に設けられているかは、創業当初のオフィスから非常に意識してきましたし、今でもそれは変わりません。仕事の相談やミーティングだけではなくて、自由にふるまえる“余白”のような場所をつくっておく。これが組織づくりにおいて大事なのではと感じています。
テキストコミュニケーションだけで仕事をするのは、一見楽なように見えて非常に難しく、そこに参加する全ての人に非常に高いコミュニケーションスキルが求められると思っています。ニュアンスやコンテキストを完璧に解釈し切ることは、よほどビジネスコミュニケーションに長けた人でないと難しく、成長途上の組織にそれを求めるのはあまりに酷だなと考えています。そのため、対面でのコミュニケーションがとれる環境を提供し、それを企業成長の一助とすべきではないでしょうか。
Q5.今後の展望について教えてください

出典: 経営ノウハウの泉
データ活用とはいっても、エンジニアやアナリストのみならず、より業務サイドの方にも使ってもらえるような事業を拡張していきたいと考えています。営業や管理部門など、非エンジニア職種の方々にもデータをわかりやすく活用してもらう仕組みをつくり、顧客の成長を支援していきたいと思っています。また、昨年からスタートした海外展開にも注力していきます。
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株式会社primeNumberの田邊雄樹氏に“企業成長における重要な要素”をお聞きしました。オンラインでも仕事ができるデータテクノロジーの領域においても「組織づくりには“対面でのコミュニケーション”が重要」というお話を伺い、非常に興味深かったです。自社のコミュニケーションについて課題を感じているみなさま、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
Interview&Photo/Takanobu Sasaki