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TOP > 記事一覧 > 経営・財務 > 毎日が転換期!? スパイスファクトリー株式会社取締役CSO流郷 綾乃氏にインタビュー
流郷綾乃氏

毎日が転換期!? スパイスファクトリー株式会社取締役CSO流郷 綾乃氏にインタビュー

2023.11.13

時代の最先端をひた走る経営者に、経営の本質に関わる“5つの問い”を投げかけ、成功の秘訣を紐解くのが本連載「成功を掴んだターニングポイント」。今回は、スパイスファクトリー株式会社取締役CSOの流郷 綾乃氏にお話を伺いました。

スパイスファクトリー株式会社は、創業者の高木 広之介氏によって2016年に設立され、クライアント企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を全方位で支援する360°Digital Integratorです。

今回は、2021年より取締役CSO(最高サステナビリティ責任者)に就任した流郷(りゅうごう)氏に、企業を成長させるうえで重要なこととは何か。経営の本質に直結する“5つの問い”を投げかけてみました。

<プロフィール>
スパイスファクトリー株式会社
取締役CSO
流郷 綾乃

1990年生まれ。中小企業の広報を経て、フリーランスの広報として独立。スタートアップなどに対して広報・戦略コンサルティングを提供。2017年11月、生物資源ベンチャー・株式会社ムスカの広報戦略を支援し、2018年7月に代表取締役CEOに就任。数々のビジネスコンテストにて最優秀者やSDGs賞を受賞し、経産省J-Startup企業に採択。同社の認知度の向上および、資金調達に貢献し、2020年11月に退任。2021年7月DXスタートアップのスパイスファクトリー株式会社、取締役CSO就任、株式会社SPACE WALKER 経営企画 サステナブル推進を担当。

Q1. 自社の歩みで印象に残っている“転換期”について教えてください

色々ありすぎて「いつが転換期だったのか」がわからないぐらい感覚が麻痺しています(笑)。毎日が転換期といえるほどの速さで、会社が変わっているからです。

強いて挙げるとすると“拠点が拡大したタイミング”は、転換期だったといえるでしょう。福岡と京都、フィリピンにも拠点をつくりましたが、特に福岡の拠点には縁があったように思えます。福岡に拠点を置いたきっかけは“執行役員の女性が私事で福岡に引っ越すことになり、「会社を辞める」という話が出たとき”でした。

リモートワークでもよかったのですが、オフラインの環境を任せられる方でしたので、拠点をつくることになりました。福岡市は10年前に『スタートアップ都市』を宣言しており、スタートアップの企業支援体制が整っているという点も、拠点の新設を後押ししました。

実際に現在入っているインキュベーション施設は福岡市の施設です。入居の面接に通り、とんとん拍子に話が決まった点も大きいですね。施設内ではミートアップの開催など、会社同士の横のつながりもでき、福岡に縁があったんだなと思っています。

Q2. 自社のパーパス、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)についてお伺いします

弊社のパーパスである「1ピクセルずつ、世界をより良いものにする。」に強く共感しています。また私自身、これまでのキャリアで長く広報を担当してきたので、普段から世の中の流れやトレンドなどを把握するようにしています。その観点で思考をすると世界全体の潮流であるSDGsと“世界をより良いものにすること”は切っても切り離せないということが見えてきます。

ここで注意したいのは、以前の“環境に良いことをしよう”というエコ活動と、いま考えられている“長期的に事業を経営しよう”というサステナビリティは異なっていることです。“今の時代に何が求められているのか”というトレンドを常に追い求め、取り入れていくことが必要です。

また弊社の特徴は、コアバリューの浸透率が非常に高いということ。これは私自身も驚いたことなのですが、社内でコアバリューの浸透度合いを測ったところ、90%以上という結果でした。最近では、施策として各事業部の1on1のなかに、コアバリューが体現できているかどうかを振り返る面談の項目を設けました。これは経営層が提案したわけではなく、社員からの意見によって設けられたという背景があります。コアバリューの体現率をもっと高めていけるよう、CSOの立場として、もっとブラッシュアップしていきたいと考えています。

Q3. 採用や組織づくりで注力されている点

採用については、基準を高く設定しているため、変化に対して臆することなくチャレンジできる優秀な人材が集まっていると感じています。

組織づくりでは、働き方の柔軟性を高めるために福利厚生を充実させています。たとえば、コアタイムは11時から15時と短く、シエスタ制度(好きなタイミングで取ることができる昼休憩)も導入しています。現在、平均年齢が32.6歳と若い世代が集まる会社なので、これから結婚や子育てなどのライフステージの変化があることも見越して、プレママ・プレパパのための産前休暇に関する制度をつくりました。

また、変化に対応するためには自己研鑽が必要です。弊社では、自己研鑽を補助する仕組みとして、書籍購入制度やAIチャットサービスの利用補助もスタートさせました。ここにもサスティナブルな要素を取り込んでおり、読み終えた書籍は社内の本棚に寄付するという試みもあります。日本では一般的ではない、ドネーション(寄付)の精神を浸透させるという目的も兼ねています。

Q4. オフィス移転の背景と目的・移転後の社内の変化を教えてください

オフィス移転の背景として、“サスティナブルなオフィスと働き方を目指した”ということが挙げられます。極端な話として、地球の環境についてだけ考えると、人間全員が稼働しなければよいということになりますが、誰もが生きるために動くことは必要です。何か行動を起こしたり、物をつくりだしたりするためには、人とのコミュニケーションが大切だと考えています。コロナ禍での自粛期間を経験して、私たちもそれを強く再確認しました。

弊社は“ファクトリー”という言葉が社名に入っているように、ものづくりをしているという意識が非常に高いです。この“ものをつくる”という過程に欠かせないものの一つがコミュニケーションだと考えます。人と人との関係性が構築できない限り、素晴らしいものは生まれないのです。ただの雑談の中でも、今までにないアイデアが生まれる可能性があります。コミュニケーションのなかで偶発的にアイデアが生まれる感覚を、新しい環境で感じてほしいですね。

そのため、人と人が接しやすいオフィス構造を意識しました。以前のオフィスは5階建てのビルを借りていましたが、手狭になり、各階・各部屋とセグメントされている状況で、会議も同じビル内にいるのに、オンラインで行うこともしばしばありました。

現在のオフィスは、ワンフロアで解放感があり、誰とでもすぐにコミュニケーションが図れる状態になりました。オフィス内には社外の方も利用できるコミュニティルームという部屋も設けています。そこでは社内外問わずに、顔を合わせながらディスカッションができます。

また、社内の会議室の稼働率もかなり高くなりました。7部屋ある会議室がフル稼働しています。同じフロアで歩ける距離にあると、実際に顔を合わせながら話せる会議室に集まるほうが、オンラインでの会議よりも話が広がり、アイデアが湧き出てくるのをみなが実感しているようです。

移転前から、バーチャルオフィスの導入や、週1日出社を定めておりました。お台場の新オフィスに移転してからも同様ですが、オフィスの居心地をよく感じている方もいらっしゃることで、移転前よりも出社率が上がったんです。この結果こそが、思い描いていたサスティナブルなオフィスへの“第一歩”になっていると考えます。

Q5. 成長していく企業の特徴はどのようなものだと考えていますか

自社の成長を客観的に見られるかどうかが、成長を続けられる企業の分かれ目だと考えます。成長を客観的に見るとは、その成長が短期的か、中長期的なものなのかを見極めることです。見極めたうえで「さらにジャンプすべき」か、「ここは一旦、しゃがむべき」を判断します。

弊社は私がCSOに就任する前から、売上150%アップを毎年続けるというとんでもない成長をしていました。そういった急成長をしている企業に必要なのは、現在の状態を正しく把握して打ち手を考えられる人材です。

私はCSOとして、弊社のサステナビリティを実現するという役割を担っており、CSR(企業の社会的責任)やPR(パブリックリレーションズ)に向けた取り組みに責任を持っています。

CEO(最高経営責任者)は企業全体を見る立場にあり、COO(最高執行責任者)は事業を回す役割を担っています。それはすべてそれぞれの役割に過ぎず、その役割を全うすることが大切です。そして役員だけでなく、事業部長がオフィスで顔を合わせ、個々の磨き上げられたスキルによって常にフラットな意見をぶつけて議論することができることも必要でしょう。迅速な判断をするために、何をいっても嫌われない“心理的安全性”を担保してくれるボードメンバーがいることが重要です。

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流郷氏へのインタビューは、いかがでしたか? 毎日のように変化する会社で臆することなくチャレンジできるよう、自己研鑽の補助やディスカッション、コミュニケーションを大切していることがうかがえます。参考にしてみてはいかがでしょうか。

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Interview&Photo/Shota Ogawa