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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 在宅ワークとオフィス勤務の最適なバランスの見つけ方
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これまで、在宅ワークは一部の限られた職種の働き方というイメージがありました。しかし、コロナ禍によって首都圏を中心に通勤時における感染予防の観点から在宅ワーク率は一気に増加し、みなさんにとって身近な働き方の一つになったのではないでしょうか。

一方、新型コロナウイルスが5類感染症に移行した現在、出社と在宅ワークのハイブリッド型を採用する企業や、出社率を高める企業も徐々に増えてきているように感じます。

こうした背景から、今回は中小企業が成功する在宅ワークとオフィス勤務の最適なバランスの見つけ方を解説します。

コロナ禍を経た在宅ワークとオフィス勤務のバランス状況

国土交通省が実施した「テレワーク人口実態調査」によると、令和3年就業者数に対するテレワーカーは全体で27.0%になり、コロナが落ち着いた令和4年においても26.1%となっています。全国のエリア別にみていくと首都圏は39.6%となっていて、近畿圏が25.9%、中京圏が22.0%、地方都市圏が18.1%となっています。新型コロナウイルスというきっかけがあったのは事実ですが、実際には在宅ワークを含むテレワークが「スタンダードな働き方」として定着しつつあるといえるでしょう。

コロナ禍の感染防止施策は「いかに人に接触しないか」という観点で行われることが多かったため、人口密度の高い首都圏において在宅ワークの導入が増加しているのもうなずける結果となっています。令和3年をピークにして令和4年は若干比率が下がったものの、今後はさまざまな業種や職種で導入されていくことが予想できるでしょう。

【参考】令和4年度テレワーク人口実態調査 / 国土交通省

在宅ワークのメリット・デメリット

働きやすさ向上と間接コストの削減

働き方改革における時間外労働の削減や、業務効率を目指す企業にとって在宅ワークは非常に心強い仕組みです。また、働き方改革の一つのテーマである「多様な働き方」についても、在宅ワークを取り入れることにより子育て中の方や遠方に居住している方を採用することも可能になります。

特に、首都圏の企業は慢性的な人材不足で常に募集をかけている状況です。在宅ワークを導入することで、求める人材を全国から集めることや、今まで一人で行っていた業務を複数人で行う業務分担(ワークシェアリング)が可能になります。

また、通勤費におけるコスト削減も期待できますし、人材確保を充実させることで採用コストも削減できます。つまり、間接コストの削減が期待できるのも在宅ワークのメリットといえるでしょう。

在宅ワーク導入で見えてきた課題

一方で、導入してみるとさまざまな課題も浮き彫りになります。特に多くの企業で懸念されているのは、「勤怠管理」と「業務進捗」をリモートでどのように把握していくか、という点です。従来、タイムカードなどの勤怠管理と日報などを併用しながら常に同じ場所や見える場所で、社員たちの業務状況を上司がある程度感じ取ることはできていました。

なにやら、PCの前で難しい顔をしている若手社員がいれば、「何か、困っている?」と声をかけてあげることもできました。これが在宅ワークになった途端に一切見えない状況になってしまいます。積極的にコミュニケーションを取れる社員はよいのですが、発信が苦手な若手社員や分からないことや悩みをため込んでしまうタイプの社員へのアプローチは難しいという声が聞かれます。

オンラインのミーティングなどをしても、実際は実務レベルの報告や連絡事項で終わってしまい、組織として「人材育成がしにくくなった」「部下とのコミュニケーションが圧倒的に減った」という声も多いのです。従来の勤怠管理や業務進捗の共有をクラウド化して、効率よくリアルタイムで状況を把握できるようなシステムを導入することも一つの改善手段でしょう。

さらに、オンラインミーティングも複数人のミーティングだけではなく、定期的な1on1の実施を社内の風土にしていくなど、システムや仕組み自体の変革も同時に行う必要があるようです。

オフィス勤務のメリット・デメリット

その点、オフィス勤務については常に見える場所で社員たちの仕事の状況を感じ取ることができます。勤務時間内だけでなく、お昼休憩の時間にちょっとしたコミュニケーションも可能です。顔色を見るだけで「最近〇〇さんは、ちょっと疲れているな」と感じ取り、業務内容を見直したり、直属の上司に話を聞いてみたりすることも可能です。やはり、会って話すことのメリットも一定数あるという声が多く、「コロナが落ち着いたらやっぱり出社させてオフィス勤務をメインにしていきたい」という経営方針を打ち出している企業も実際にあります。

しかし、デメリットとしてはやはり「時間と場所」に囚われてしまう点です。せっかく優秀な社員の人でも出産、引っ越しなどで仕事から離れざるを得ない、ということは企業にとっての大きな損失になります。また、新たに求人を行い、イチから研修を行うとなるとかなり重労働になってしまいます。

企業にとって「働き方を変えながらでも長く働いてもらうこと」は金銭的にも時間的にも大きなメリットがあるのです。

【こちらもおすすめ】やっぱりオフィスで働きたい…!社員が出社したくなるオフィス環境とは?

【失敗例】在宅ワークとオフィス勤務のバランス

在宅ワークとオフィス勤務のどちらかに極端に偏った方針を打ち出す企業には失敗例が多く見受けられます。

まずは、採用時に「うちは完全フルリモートです!」と声高に採用活動をする会社の例です。入社してすぐに在宅ワークを進めてしまうと「面接時に本人がいっていたスキルとの乖離がある」「入社してすぐに在宅勤務なので、相談できる上司がいない」などの課題がでてきます。

このような課題が表面化してくれればよいのですが、水面下でこの状態が中長期間続いてしまうと、社員の育成や組織としての成長が阻害されてしまう可能性も出てきてしまいます。

適切なバランスが定着率向上につながる

一方で「やっぱりオフィス勤務がよい!」と断定しすぎてしまうと、前述したように雇用できる人材は限られてしまいます。社員それぞれには、さまざまなプライベートな局面があります。完全にオフィス勤務のみにしてしまうと、社員のモチベーションを低下させ、優秀な人材が離れてしまうリスクが常に付きまとってきます。

よく若い女性社員が結婚すると「彼女もまあ数年のうちに出産を迎えるだろうから、なかなか責任ある仕事は任せられないなあ」という幹部の声はまだまだ今の時代でも聞かれる声です。しかし、在宅ワークが可能であれば、出産後の復帰はスムーズに進むでしょう。

失敗例を見ていくと、せっかく在宅ワークとオフィス勤務という2つの働き方があるにもかかわらず、その2つのバランスがうまく取れないことや、社員たちのキャリアに合わせて柔軟な対応ができていないことが要因だとわかります。つまり、2つの働き方のいずれを選択しても大きな壁として逆にデメリットとなることが多いのです。

自社にあったバランスの見つけ方

在宅ワークとオフィス勤務それぞれのメリット・デメリットや失敗例を解説してきました。最後に、自社に最適なバランスを見つけるために意識したい点を紹介します。

社員一人ひとりにマッチしたバランスを見つける

結論から述べると、バランスは職種と勤続年数、経験値の3軸で見つけることが重要です。

在宅ワークとオフィス勤務はそれぞれメリット・デメリットがあります。職種についても適性があるのは事実です。同じ組織の中でまずは、「この仕事は在宅を推奨する」という職務ごとのすみ分けを企業として行うことが非常に重要です。

たとえば、営業を例にすると、外で営業活動を終えた後の残務整理は在宅ワークを推奨するであったり、月に1回はオフラインの定例会議を開催するというように「この仕事は在宅OK、しかしこのタイミングでは出社をしてもらおう」ということは具体的にあらかじめ決めておくとよいでしょう。

また、勤続年数や経験値についても、入社1年以上たったら在宅ワークを推奨したり、管理職者は必ず週に3日は出社してオフィス勤務の社員たちと対面での1on1を行うなど、それぞれの経験値や役職によるすみ分けもおすすめです。

職種や部署の横のすみ分けと勤務年数や役職による縦のすみ分け、これらを見える化することによって在宅でも出勤でも自分自身が企業で働くイメージを具体的に持つことができ、モチベーションの向上やキャリアプランの構築につながっていきます。

中小企業で在宅ワークを導入する際の注意点

常に人材不足の中小企業においては、「人もいないのに在宅ワークなんて」と思っている企業も多いのではないでしょうか。このような企業が在宅ワークになかなか着手できていない理由は、一人ひとりの業務量が多く、業務分担ができていないということが原因の一つです。

一人の社員が行う業務を抜本的に棚卸しして細分化することで、部分的に在宅ワークを取り入れることが可能になってきます。また、人に頼る部分(マンパワー)が多すぎて、すべてがアナログ状態で進んでいることも多いです。

紙の伝票やFAXのやり取りなど、出社していないと業務自体が成立しないという仕組みを改善するために、システム導入などを検討して、まずはクラウド化していくことをおすすめします。

現在、電子帳簿の運用も進んでいるため、ペーパーレスを推進せざるを得ません。これ自体は企業の大小に限らず行っていくべきことなので、マイナスに取らえず、その先の在宅ワーク導入、多様な働き方の推進のためにも検討してはいかがでしょうか。

優秀な人材の確保や育成にもつなげるための最初の一手と捉え、積極的に推進していきましょう。

*CrizzyStudio, Nan Tun Nay, wavebreakmedia, chaponta, Kmpzzz, metamorworks / shutterstock

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