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売上目標を押しあてるだけではNG!社員のモチベーションが上がらないジレンマを解決

2024.03.04

企業が持続的に成長していくためには「現状維持」とはいっていられず、目標設定や事業計画の立案は非常に重要になってきます。

しかし、会社の目標を掲げたものの、それぞれの社員のモチベーションをなかなか引き上げることができていないというお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、経営戦略コンサルタントの視点で、社員のモチベーションアップに悩む多くの会社での目標設定の落とし穴について解説していきます。

会社の売上目標とモチベーションの関係性とは

最も多くの会社が設定するのが「売上目標」になるでしょう。中小零細から上場企業まで業種関係なく、売上目標は必須です。毎年社長が壇上に上がり「今期は〇〇億達成!」と声高に熱弁しているのを、筆者自身何度も見たことがあります。

しかし、経営コンサルタントからすると「売上目標でモチベーションが上がるのは社長だけ」と考えられます。多くの社員は売上目標にクローズアップされればされるほど、モチベーションが上がるどころか「もっと仕事が忙しくなる」「新規営業に行かなければならない」など、ネガティブな感情が膨らみます。実は、売上目標と社員のモチベーションは反比例とっても過言ではありません。

実際に、とある会社の中堅社員が「会社の売上が増えても自分の給料が上がる訳じゃないですし」とぼやいたことを聞いたこともあります。

売上目標とは、新入社員でもわかるシンプルな目標であることは事実です。売上を語らずして利益も語れません。ただ、この売上目標のシンプルかつわかりやすい点に甘え、売上目標自体を意識しすぎる、または過大評価しすぎることは、社員それぞれにとって悪影響を及ぼす危険性があるのです。

社員個人のモチベーション対策の失敗例

数字のみに焦点を当てる

前述したとおり、売上のような数字ばかりに焦点を当てた目標は失敗例として多くみられます。また、目標が達成されず毎年同じような売上目標を掲げる会社も多くみられます。この場合、毎年未達でまた今年も同じ目標となり「本当は高すぎる目標なんじゃないか」「社長がいっているだけ」という負け癖のようなものが社内の風土になることもあります。

実際のところ、売上が増えても原価や諸経費が高騰しており(物価高)、利益に連動していない会社が多くみられます。新規顧客の開拓で価格を下げれば、さらに利益率は下がります。すると、社員目線では「売上が増えて、忙しくなった」「こんなに忙しいからきっと賞与は去年より多くもらえるだろう」と期待するのは当然です。

しかし、ふたを開ければ利益は残っていないので分配原資はなく、これがまた社員のモチベーションを下げることにつながります。

数字による定量的な目標は、定性的な目標よりもわかりやすく全社員で共有できるものです。もし数字目標を掲げるのであれば、売上・粗利益・営業利益を数字で目標立てするとよいです。そして、何よりも社員一人当たりの生産性という視点を持ちながら、多角的に数字を追いかけるべきなのです。

しかし、これには一定の財務知識が必要です。社内で数字をすべて公開する「ガラス張り経営」という方法もありますが、財務知識に差がある組織内では数字だけが一人歩きする危険性もあることを忘れてはなりません。

インセンティブの付与

一昔前に流行ったのが成果報酬(インセンティブ)です。営業職ですと、人と数字が連動しやすいことから簡単に取り入れる傾向があります。ただ、実際の導入には慎重になるべきです。

たとえば、子供と学校のテストで「80点以上取ったら、お菓子を買ってあげる」と約束したとしましょう。本人が80点を取ってきたらお菓子を買ってもらって喜びますが、その後90点を取ってきたら、「じゃあ、今度はゲームを買って」といい始めるかもしれません。インセンティブでモチベーションがあがるのは「それを手にしたとき」がピークです。

次には「もっとよいものが欲しい」と思ってしまいますし、成果が上がったにもかかわらず支払われる報酬が同じでは、逆にモチベーションが下がってしまいます。それは、インセンティブは継続的に実施し、なおかつどんどん報酬をあげていかないとモチベーションを維持できなくなる可能性があるからです。

ある会社で営業社員にインセンティブ制度を導入してしばらくしてから、製造部や営業事務の女性陣から反発があったということがありました。反発した社員から意見を聞いてみると「営業社員だけずるい」という理由でした。

子供じみているように思われるかもしれないですが、売上の向上は果たして営業社員だけの成果によるものでしょうか。営業事務のサポートがあり、受注した仕事を納期に合わせて納品できる、よい商品を作る、生産部の貢献も大いにあるでしょう。

完全営業会社が世の中にどれくらいあるでしょうか。実は非常に少なく、それは組織というチームではなく、一匹オオカミの個人事業主の寄せ集めに過ぎないのかもしれません。

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社員のモチベーションをあげるための対策方法

売上目標が社員のモチベーションに直結しないのであれば、どうすればよいのでしょうか。

「コミュニケーションによる対策方法」が有効策として考えられます。それは、目標や評価はただのツールであるともいえるからです。目標があったらそれをツールにして、どのように社員や部下たちとコミュニケーションをとるか。これが最も大切です。

「コミュニケーション向上がモチベーションの向上につながる」というときれいごとのように聞こえますが、この点については昔から沢山の実験検証が行われている事実なのです。

目標があるからモチベーションが上がるのではない

皆さんは「ホーソン実験」を知っているでしょうか。

ホーソン実験とは、シカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場において実施された一連の実験と調査のことです。この実験の結果では「労働者の作業能率は、客観的な職場環境よりも職場における人間関係や目標意識に左右されるのではないか」という仮説が導き出されました。そしてこの結果は人間関係論へ発展していきました。

当時は、ノルマやマニュアルなど数字などで管理することで生産性をあげていこうという「科学的管理法」が経営管理論の主流でした。ホーソン実験の結果は当時の経営論には大きな衝撃となり、それ以降人間関係論へ経営管理の考え方は移行していきました。

このように、人の行動原理には人間関係や、同じ目標でもその目標に対しての意識(なぜ目標が必要なのか)が非常に重要になっているのです。厳しくも尊敬できる上司から伝えられる目標と、まったく尊敬できない上司から伝えられる目標を想像してみてください。同じ目標でもどんな違いを感じるでしょうか。

目標があるからモチベーションが上がるのではありません。モチベーションがある(信頼関係がある)から目標が活きてくるのです。多くの会社はこの順番を取り違えているのではないでしょうか。

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さいごに

成功している企業は目標よりもコミュニケーション重視

目標は売上だけに偏らずに多角的に設定することが理想的です。また、目標とともに「この目標に対して具体的な行動としてどのようなアクションを行うか」という行動目標も決める必要があります。そして、まずは行動ができているかという視点で社員、部下とコミュニケーションをとる機会を増やしてください。

社員規模にもよりますが、毎週、毎月10分程度の面談を実施し、社員それぞれの「行動」ついてコミュニケーションをとることも有効です。行動ができているのに目標につながっていない場合は「なぜだろう」と社員と一緒に考えていきましょう。そのなかで、会社としての想いや目指すべき姿が徐々に共有されていきます。

最初に立てた目標のよし悪しだけではなく、それらを推進する方法や一緒に考えていく経営陣、管理職の姿勢も重要になることを忘れないようにしましょう。

*kapinon.stuio, metamorworks, ZephyrMedia, yamasan0708, maroke / shutterstock

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