登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 総務・法務 > 業務をアウトソーシングするメリット・デメリットとは?より効果的に実現するためのポイント
スマートオフィスのコンセプト。管理戦略。ビジネス通信ネットワーク。

業務をアウトソーシングするメリット・デメリットとは?より効果的に実現するためのポイント

2025.01.30

みなさんの会社では、アウトソーシングを利用しているでしょうか?アウトソーシングとは、社内業務の一部を外部企業に委託し、効率化やコスト削減を図る手法です。近年、アウトソーシングを活用する企業が増加しており、その適用範囲も広がっています。本記事では、アウトソーシングのメリット・デメリットや、導入の際に考慮すべきポイントを詳しく解説していきます。

導入企業が増えているアウトソーシング

現在、アウトソーシングを導入する企業が増えています。コールセンターなど、業務全体をアウトソーシングするBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を含め、アウトソーシングを導入する企業は半数以上となっています。
【参考】BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に関する実態調査 BPOの導入率は約2割にとどまるが、導入企業の経営層・管理職の8割以上が 「経営効率が向上した」「今後もBPO利用継続・拡大したい」と回答/パーソルビジネスプロセスデザイン

また、アウトソーシングの対象となる業務範囲も拡大しています。少し前ですが、アデコ社の調査(2020年)によると、「IT・運用保守・web」、「データ入力・マニュアル作成・翻訳」、「事務・総務・人事等のバックオフィス」などがアウトソーシング導入業務の上位に挙げられていました。間接業務を中心に広がっていることがうかがえます。
【参考】【アンケート結果】アウトソーシングの導入状況・メリット・デメリットなど/アデコ株式会社

加えて、筆者がご支援させていただく企業のなかでは、営業や製造といった直接業務でもアウトソーシングの導入が増えています。たとえば、地方に拠点を置く企業が東京や大阪で販路を拡大する際に、営業機能をアウトソーシングするケースがみられます。

【こちらもオススメ】アウトソーシングでコア業務に集中!委託できる業務・ できない業務を具体例を交えて解説

業務をアウトソーシングするメリット

それでは、業務をアウトソーシングする際のメリット・デメリットは何でしょうか。業務評価でよく用いられるQCD(Quality・Cost・Delivery)の切り口から、「品質」、「コスト」、「納期」の3つの視点で考えてみます。まずはメリットについてです。

品質:外部の専門スキル活用

アウトソーシングの会社は専門性・スキルがある人材を抱え、多くの業務経験をもっています。そのため、自社人材よりも高い品質の成果を出すことができます。たとえば、食品専門スーパーを多店舗展開する企業では、小売業のシステム開発経験が豊富なIT企業にシステム開発を依頼したところ、小売業で必要なKPIを把握できるシステムを導入することができました。こうした成果は、多くのシステム開発経験があったからこそ実現できたのです。

コスト:変動費化

システム開発のように、一定期間だけ発生する業務のために人材を抱えてしまうと、人件費が固定費化され、期間終了後もコストが発生することになります。この点、アウトソーシングであれば、業務発生時のみで済むでしょう。システム開発などの一定期間だけ発生する業務だけでなく、営業や総務、人事といった日常的な業務についても、業務量が時期により変動する場合には、必要な時期だけのコストに抑えることができます。

納期:早期の成果実現

外部の専門性スキルを活用することにより、試行錯誤などによるロスを発生することなく、成果を出しやすくなります。たとえば、人事評価制度の策定をコンサルティング会社などにアウトソーシングすることがありますが、コンサルティング会社では他社で蓄積してきたテンプレートや進め方のノウハウなどを活用できるため、自社でゼロから取り組むよりも早期に人事評価制度を策定することができます。

業務をアウトソーシングするデメリット

上記のようなメリットがあるアウトソーシングですが、デメリットとして何があるのでしょうか。メリットと同じように品質、コスト、スピードその他の3つの視点で考えてみます。

品質:ノウハウの喪失・期待との齟齬

外部リソースを活用できる一方で、スキルやノウハウ管理などを依存してしまうリスクがあります。実施事項を正確に伝えなければ、求めている業務を適切に実施してもらえず、結果的に期待した成果が得られない可能性があります。また、長期間にわたりアウトソーシング会社に業務を委ねていると、その業務の中身が分からなくなる恐れもあります。

ある金融機関では、重要な得意先別損益管理システムの管理をアウトソーシングしていたため、担当者が変わるうちに、自社内に得意先別損益がどのように作成されているか分かる人がいなくなるということがありました。こうなると、アウトソーシング先への依存度が高まるとともに、誤ったものが作られるリスクも高くなります。

コスト:中長期的な費用増加

アウトソーシングはコストが変動費化するメリットはあるものの、時間単位でみると自社の人件費よりも割高となります。これは、アウトソーシング先で業務を担当する人員の人件費に加え、アウトソーシング先自体の諸経費や利益をのせてコストが請求されるためです。中長期的には自社に戻すべき業務もアウトソーシング先に委ね続けると、自社で行うよりも費用が高くなります。

納期:コミュニケーション不足によるトラブル発生

自社とアウトソーシング先とのコミュニケーションが不十分なためにトラブルが発生した場合、成果がでないのはもちろんのこと、遅れが発生することがあります。たとえば、システム開発をアウトソーシングした時に、自社が実現したい業務要件をシステム会社に十分に伝えていなかったために、期待していたようなシステムが開発されず、場合によっては改修などで多大な時間を要することがしばしば見受けられます。

【こちらもオススメ】アウトソーシングで人材確保!成功するための注意点とそのメリット・デメリットとは【事例も解説】

効果的にアウトソーシングを導入するためには

メリット、デメリットを踏まえ、効果的にアウトソーシングを導入するための進め方と注意点についてご紹介します。まず進め方です。アウトソーシング導入は、一般的に次のように進めていきます。

①アウトソーシング対象業務と目的の明確化

自社業務の洗い出しを行い、アウトソーシングの導入により、前述の品質・コスト・納期からメリットが得られる業務を明確化していきます。併せて、アウトソーシングにより実現したい目的も明確化します。

②アウトソーシング先の選定

対象業務に実績がある会社を調査し、アウトソーシングの提案依頼を行います。出てきた提案に対して、アウトソーシングの目的に合うものか検討し、アウトソーシング先を選定します。

③契約締結

選定した会社とアウトソーシング契約を締結します。そのなかで、業務範囲や責任分担、成果物の定義、納期、コストなどを明確にします。

④アウトソーシング開始・モニタリングと改善

アウトソーシング開始後、定期的に進捗確認や、QCD(品質・コスト・納期)などの評価を確認し、必要に応じてアウトソーシング先に改善を求めます。

アウトソーシング導入時の注意点

次に、上記の進め方のなかで、前述のアウトソーシングのデメリットを回避するための注意点について考えてみます(丸数字は上記進め方を参照)。

品質担保の対策│数値目標の明確化

①において、自社として維持したい品質をできるだけ数値目標として明確にした上で、②においてアウトソーシング先がその数値目標をクリアする方法論や実績をもっているかを確認します。たとえば、システム開発であれば、処理件数や処理スピードなどが数値目標として考えられます。また、④においても当初設定した数値目標が実現できているかを確認し、実現できていない時にはアウトソーシング先に対策を求めましょう。

ノウハウの喪失│一部業務の社内維持・業務内容等の都度確認

完全にノウハウが失われると競争力に影響が出る場合は、①や③において一部の業務は社内で維持することも検討しましょう。筆者がご支援しているメーカーさんでも、ノウハウの重要度に応じて社内に維持する業務を決めています。また、④において業務内容や発生している問題を都度確認することも、自社のコントロールを失わないために重要です。

中長期的な費用増加│一部業務の社内移管

④にて定期的に発生している費用を確認し、社内移管により費用が抑制できそうであれば、社内移管も検討しましょう。そのためには、③において状況に応じて社内移管しやすいような契約内容にしておくことも必要です。

コミュニケーション不足│定例ミーティング実施・問題発生時のルール化

④にて自社とアウトソーシング先で定期的なミーティングを開催するとともに、何か問題が発生した時には、アウトソーシング先から速やかに共有されるようにルールを決めておくべきです。 

まとめ

ご紹介してきたように、アウトソーシングにはメリットとともにデメリットもあります。しかし、適切な対策を実施すれば、デメリットを回避することは可能です。

人手不足感が更に強まるなかで、本業に集中するためにもアウトソーシングは不可欠となりつつあります。ぜひ本記事も参考にしていただきながらアウトソーシングをご検討頂ければと思います。

*metamorworks / shutterstock