売上7割減から採用支援でV字回復!株式会社アールナイン代表取締役・長井亮氏にインタビュー
時代の最先端をひた走る経営者にインタビューし、その成功の秘訣を探る本連載「成功を掴んだターニングポイント」。
今回は、株式会社アールナイン 代表取締役 長井亮氏にお話を伺いました。
株式会社アールナインは「人が介在することで、『活き生き』と働ける世界を」というミッションのもと、採用に関するアウトソーシングやコンサルティング事業を展開。キャリアコンサルタントなど人材領域のプロが約1,500名在籍しており、これまで660社以上の支援、年間30,000件を超える面接・面談の代行実績があります。さまざまな企業規模や業界の採用代行だけでなく、人材育成や離職率の改善など、企業が抱える人材に関するあらゆる悩みに対応しています。
今回は、株式会社アールナインの現在までのターニングポイントから今後の展望について、経営の本質に直結する“問い”を投げかけてみました。
株式会社アールナイン
代表取締役
長井亮
株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。非常勤講師を務めるなど、年間約100回の講演、セミナー、研修を行う。またキャリアに対する啓蒙活動およびキャリア・スペシャリストの普及を行う、一般社団法人国際キャリア・コンサルティング協会の代表理事に就任。人材プロフェッショナルの育成にも取り組んでいる。
憧れの虎ノ門ヒルズを3棟制覇
――今年3月に虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに本社移転しましたが、決断した背景について教えてください。
長井:実は、虎ノ門ヒルズの計画を耳にしたのは、私がサラリーマン時代の新人のときです。森ビルさんの“街を変える”との強い信念をうかがい、非常に感銘を受けたことがきっかけで、必ずここにオフィスを構えるのだと決心しました。
2009年に富山県で創業し東京に移転してからは、いつもこのビルを見上げられる場所に家やオフィスを借りていました。虎ノ門ヒルズはオフィス向けの棟が3つできると聞いていたので、全部制覇すると決め、森タワーが完成したときに一番に入居し、次にビジネスタワーができたときに合わせて移転をし、今回ステーションタワーの完成と共に迷わず移転を決めました。
――“憧れ”を実現されたのですね。気持ちがブレたりすることありませんでしたか?
長井:私は、“自分が決めたことは絶対にやり遂げる”という気持ちが強く、ブレるということはありません。このビルまで真っすぐに歩ける場所に住み、いつもこのビルを意識して暮らしていました。
業界を守るための苦渋の決断、社員一丸となり突破
――最も印象に残っているターニングポイントを教えてください。
長井:弊社はかつて、売上の7割をある上場企業さまが占めていました。そんな中、その企業さまが重大な契約違反を犯しました。取引を続けるという選択肢もあったのですが、私たちは業界を守る立場でもあり、どうしても許すことはできませんでした。結果、こちらから取引をお断りしました。取引がなくなることはかなりの痛手となるため、もちろん社員も大反対でした。
――7割もの売上の消失は、簡単な努力で解決できる問題ではないと思うのですが、その後の歩みを教えてください。
長井:業界内で高い実績を上げていたことが口コミで広がっていたので、ありがたいことにお断りした企業さまの同業の方からお声をかけていただけました。短期的な売上で見るとかなり苦しかったのですが、半年も経つ頃には以前の売上を上回る結果が出ていました。
当時は、突然の出来事で対策や施策を打つ時間もなく、業界を守りたいという一心で決断をしたのですが、直後は「もっと考えてからお断りすれば良かった」と何度も後悔しました。しかし社員が必死で業務に取り組んでくれたことで、この危機を乗り越えられました。
社員やクライアントとコミュニケーションを促進するバーカウンター設置
――オフィス移転をする際、特に留意したことがあれば教えてください。
長井:私からは、“オフィスは対話が生まれる場所”というコンセプトと、バーカウンターを設けた自由空間をつくって欲しいとだけ伝え、その後は社員が自発的に決めてくれました。
長井:バーカウンターをつくったのは社員同士の交流を目的としたほか、「弊社にお客さまをお呼びして、一緒に食事をする機会をつくりたい」という狙いもありました。コロナ禍を経て、お客さまとリアルに会う機会が激減したことも背景にあります。
また、弊社は女性社員が多く、お客さまと個別に食事をするということはハードルが高くリスクもあります。そこで、自社オフィスにお客さまをお呼びしやすい空間を設け、お客さまとの関係構築の一助となればと考えました。現在、対面でのセミナーや人事交流会の開催も企画しています。
長井:移転後は、出社率が2割程度増えました。また、ビル内にはカフェも多く、みんな好きな場所で仕事をしています。上司と1対1で定期的に話す「1on1ミーティング」の際のカフェ代の負担や、初めての社員同士のランチ代を会社が一部補助する「ランチインタビュー制度」といった福利厚生も導入していますよ。
――“社員を大切にしたい”という気持ちがオフィスデザインにも表れていますね。今後、アップデートの予定はありますか?
長井:座席はフリースペースとしているのですが、どうしても固定化してしまうので、今後はコミュニケーションの活性化に向けた制度を整えていきます。また、みんな好きな席に座るので、私の周りに誰も来ないことが今後の課題です。
――私も長井さまの覇気を感じております。
長井:(笑)
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成し遂げてきた採用代行サービスのイノベーション
――採用を支援している企業さまとの相互理解は、どのようにして高めていますか?
長井:必ずワークショップを開催し、“何を評価するのか”という点について細かくアンケートをとり可視化し、そこから合意を得ていきます。これを行うと、抽象的な表現やイメージが明確になるだけでなく、なによりもお客さまが自分で決めるので納得いただきやすいです。
2011年から採用代行を始めたのですが、当時はどこも実施しておらず、「面接を代行します」というと「そんなことが本当にできるのか」と驚かれました。面接なら面接だけ、説明会なら説明会だけ、というふうに業務を切り分けて分担し、部分的に特化させる仕組みを設けています。
目指すはキャリアコンサルタント20,000人
――今後の展望、挑戦していくこと、目指す方向性を教えてください。
長井:厚生労働省は2024年度末までに、キャリアコンサルタントの数を10万人にする計画を打ち出しています。しかし、キャリアコンサルタントの現状としては仕事がなく、個人の面談だけでは生活ができません。
そこで弊社はリスキリングによって採用という領域でも活躍できるように育成を行い、採用に特化したキャリアコンサルタントの方とパートナー契約を結んでいます。2025年6月末に、その数を現在の1,500人から20,000人にすることが目標です。弊社だけで、国が目標とする“10万人”の2割の雇用創出を考えています。
また、定着や活躍といった採用後の支援まで領域を広げていき、パートナーの皆さまが「活き生き」と活躍できる社会にしたいです。
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株式会社アールナインではMVV浸透の施策として、入社後は4人1組となり、自身の生い立ちから現在までの表を作成し語り合い、個人でのパーパスも決めるそう。1人の持ち時間は30分だが、時間が足りない社員の方が多いという。“人の意思決定を支援する企業”だからこそ、社内でもお互いをよく知り、社員同士の理解を高めるための取り組みが仕組化されていました。
【まずはここから】フリーアドレスのはじめ方